覚えていますか? 「人情相撲」という言葉。
大ざっぱにいえば、
相手が地位の維持が危ぶまれるような状況であることに気づいて
無意識のうちに力を緩めて自分が不利を被るということ。
意図的に相手を勝たせる「八百長」とは紙一重で、
一目で見てはわからないものだといいます。
「人情相撲は決して悪意あるものではない!
八百長といっしょくたんに処分するわけにはいかない」なんて声も
相撲をよく知る人の間ではあの八百長騒動の時にはあがっていました。

これをふまえて高校野球の話を。
いわゆる東日本大震災に被災した東北高校が
ギリギリの状況で今回の選抜に出場したことが大きな話題を集めました。
震災発生以降、練習の時間を犠牲にしてまでも
避難所に身を寄せる人々のために水の配給のボランティア活動をしていました。
そして、岐阜の大垣日大に0−7で破れて初戦敗退となりました。
甲子園からすでに地元に帰っており、落ち着きを取り戻したところで
大会前と同様にボランティア活動を再開させるつもりだとか。
大会前には相手の大垣日大の陣営に
「負けちまえ!」というメッセージが多く寄せられたと、新聞が報じていました。
「被災者を励ますためにも人情相撲を取れ」
とでもいおうとしているのでしょうか? 
仕事仲間にも「こういう時こそ八百長でしょ!」
と物騒なことをいう人間もいました。
こんなことを耳にしていましたから
大垣日大がプレッシャーに押しつぶされないか心配になってきました。
実際のところ、そんな心配は杞憂に終わったようです。
初回から5点奪い、東北打線をわずか4安打に抑えて完封勝利となりました。
痛快なくらいに大垣日大が東北を打ちのめしてくれたのでほっとしました。

ここから乱暴な物言いをしてしまうかもしれません。
「高校野球は教育の場」とプロ野球のOBはよく言います。
困った人を助けるためにわざと負けることも
優しさを知るための教育だという人がいるかもしれませんが、
少々首を傾げてしまいます。
むしろ、互いに全力でぶつかり合うことこそ最高のリスペクトの表現方法であり、
教育的なことではないでしょうか?
正真正銘のガチンコ勝負がみられた今年のセンバツ1回戦最後のカードは
高校野球史に残る名勝負になるかもしれません
(どの試合もガチンコかもしれませんが)。

それでは、また次回です。
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You’ll Never Walk Alone
サッカー業界というか、世界のサッカーシーンが
この言葉の下で一つになろうとしているようです。

聞き飽きたことかもしれませんが、念のためこの曲のことを。
そもそもこの曲は1945年に発表された
ミュージカルの為に書き下ろされた曲だそうですが、
一躍有名となったのはイングランドプレミアリーグの
古豪・リヴァプールのサポーターが応援歌に使うようになったからとか。
そこから世界各国のサッカーチームのサポーターが
応援歌に使うようになり、
世界中の多くのサッカーファンが
歌えるかよく知っている曲になったわけです。
日本でも、FC東京のサポーターが
試合前に必ず歌う応援歌としておなじみになっています。

そのFC東京からイタリアへと羽ばたいた長友選手が
世界のサッカーシーンをこの言葉に包み込むきっかけを
作ったのかもしれません。
16日のチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦で
長友選手が所属するインテルがバイエルンミュンヘンを破った後、
長友選手は東日本大震災の被災者を励ますメッセージを書き込んだ
日の丸を持ちながらまたピッチに姿を見せました。
その日の丸に唯一記された英語のフレーズが
FC東京時代になれ親しんだものであろう
「You’ll Never Walk Alone」。
そうするとどうでしょう? 
バイエルンのホームスタジアムに集まった観衆は
自然と「You’ll Never 
Walk Alone」を歌っていたんです!
聞きかじりなんで正確なところがわかりませんが、
バイエルンもこの歌を応援歌にしていて
独自のアレンジで作った音源があるそうなんですが
それではなくFC東京が使っているバージョンの音源を
歌っているさなかにBGM的に流していたとか。
なんてにくい演出なんでしょうね、びっくりしました。
それから、世界のサッカーシーンは
この言葉の下に日本を励まそうという気持ちになっていたようなんです。

そんな「YNWA」(リヴァプールではこういう略し方をすることがあるらしい)
という言葉を23日に意外な人が持ち出したんです。
日本高野連の奥島会長です。
この日のセンバツ開会式の挨拶でこの歌の成り立ちを説明しつつ、
選手たちに向けて「You’ll Never Walk Alone.
あなた方は一人ではありません」と呼びかけました。
奥島会長がこれを持ち出すとは思いもよらなかったですが、
このフレーズを聴いたときには思わず目頭が熱くなってしまいました。
高校野球というのはいろいろな意味で「YNWA」の精神が
色濃く現れるスポーツではないかと思います。
それをわかっている上で
奥島会長は挨拶に織り込んだのだろうと思います。
You’ll Never Walk Alone
励ます気持ち、感謝の気持ち、他にもいろいろな気持ちをこめて
精一杯のプレーを甲子園で選手たちには見せてほしいものです。
そうすれば、誰も文句言わないはずです。

では、また次回です。
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ここ数日テレビや新聞を見ていると、
つくづく思うことがあるんです。
「当たり前」と思うものがあることって「幸せ」なのかなって。
いわゆる東日本大震災がいろいろな分野いや、
日本の社会に大きな影響を及ぼしていく様子を
テレビや新聞で見ていると、
空気のように当たり前にあるものと思っていたものが
本当はかけがえのないものだったのかなって思うんです。
被災者の皆さんに対して無礼な物言いだといわれるかもしれませんが、
あって当然というよりも
あることでさえ幸せに思わないといけないんでしょうね。
不謹慎なことを言うかもしれませんが、
こういう災害をきっかけにこの気持ちを思い出した気がします。

これ以上の言葉は蛇足になるような気がしますので、
今回はこんなところで。
それでは、また次回です。
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「昭和は遠くになりにけり」うまくいったものです。
ここ数日で立て続けに昭和の野球史を彩った方が二人なくなりました。
まずは、2リーグ分立直後の巨人第2期黄金時代を支え、
中日監督として巨人の第3期黄金時代ともいうべき
V9に終止符を打ったウォーリー与那嶺さん。
私はリアルタイムで与那嶺という名前にふれたことはありませんが、
ある歌で与那嶺という名前に触れることになります。
「僕もあなたも願ってる 
祈る気持ちで待っている
それは一言 優勝だ!
与那嶺監督の胴上げだ!」
板東英二さんが歌っていた「燃えよ! ドラゴンズ」の一節です。
アニメ・タイムボカンシリーズなどのテーマソングを多く手がけた
山本正之さんがメジャーデビューのきっかけを掴んだ曲だといいます。
最近はアニソン界のアニキこと水木一郎さんが
「それは一言日本一 オレ流監督の胴上げだ!」と歌っていますよね。
暑苦しいくらいに燃える気持ちでV9を続ける巨人に、
首位打者などのタイトルを味方同士にも関わらず
毎年のように争った川上哲治監督に立ち向かうウォーリーさんへの当時の想いが
ひしひしと伝わってきたような気がします。
そして、今の今まで与那嶺さんの思いが語り継がれる言葉もあります。
「野球はガッツだよ」。
熱い気持ちが端的に現れています。
セーフティーバントにホームスチール、かなり激しいスライディング・・・。
「野球道」の引き出しでは見つけられないような
アグレッシブなプレーというものが持ち味だった
与那嶺さんの人柄そのものといえるかもしれません。
そのフレーズから、名古屋のとあるラジオ局では
ナイター中継のタイトルにガッツを入れているそうです。

もう一人は尾藤公(ただし)さん。
和歌山県の箕島高校で春夏合わせて4回甲子園で優勝した名将です。
尾藤さんが特に活躍していた頃から考えると、
70歳代後半か80歳代位になっているかなと想ったら
68歳でお亡くなりになったそうです。
つまり、30代から40代くらいでキャリアの頂点を
ある意味極めたといっても妥当かもしれません。
それだからなんでしょうか? 
彼の代名詞で「尾藤スマイル」という言葉をここ数日よく見かけるんです。
エラーをしたとしても柔らかな表情でベンチへ迎え入れるというんです。
選手に近い年齢層でわかりあえることがたくさんあるからこそ
できることだったのかなって想います。
尾藤さんもウォーリーさん同様
リアルタイムに彼の名前に触れたことがありません。
強いていえば、民放のBSデジタルなどで放送される
高校野球中継で解説されているところをみていた程度です。
その中継での尾藤さんの印象というのは
批判的なコメントはほとんど聞かれることなく、
柔らかい口調ではなしている方という感じです。
そんな尾藤さんの声がもう聞けないんですよね。

昭和の野球史に大きな足跡を残したお二人のご冥福をお祈りします。

それでは、また次回です。
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立場っていうものは人ぞれぞれあるもので、
紋切り型ではいかないようです。
東京マラソンで3位に入り、世界陸上の代表に内定した川内優輝選手。
彼は埼玉県の公立高校の職員として昼間から夜に働き、
朝にしっかり練習するという毎日を送った
「市民ランナー」といわれています。
しかし、彼は大学時代に箱根駅伝の学連選抜の一員として2度出場したり、
他のロードレースでもある程度の実績を積み上げている
エリートランナーでもあります。
先週のブログで取り上げた城下麗奈選手。
彼女は青山学院大学を卒業後、グラビアの仕事などをしながら、
どこの実業団にも入らずに母校で練習を続ける
「フリーランスの選手」とされています。
しかし、彼女はアジア大会の日本代表になった
「エリートアスリート」でもあります。
もう少し細かくいうと、一説によれば城下選手は
明確なスポンサーを得られずプロになりきれないでいる
「フリーター」のようなものだともいわれています。

記事やらテレビやらラジオやらを見聞きして
こんな風に整理をしているところに、こんなニュースが。
川内選手が今後、埼玉県庁走友会に入って
「埼玉県庁」のロゴが入ったユニフ
ォームを着ることになりそうだというんです。
埼玉県庁走友会が日本陸連にクラブチーム登録することで
可能になるということで、市民ランナーに立場が近いにしても、
現在の城下選手のような純粋なフリーでは
なくなったということになるのかなって思います。

見た目を派手にして自らプレッシャーをかけながら城下選手と
結果を出せずに惨敗を喫しても
自分が導き出した答えを信じて練習する川内選手、
立場は違えど、向上心というものは簡単に変わるものではないはず。
ここまで貫いてきた信念を通して、
多数派をまた打ち破ってほしいですね。

では、また次回です。
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