10日のJ1第22節で鹿島アントラーズの上田綺世(あやせ)選手がプロ初ゴールをやってのけました。しかも、上田選手は卒業を待たずに法政大学のサッカー部を退部しアントラーズに加入した身だったので、極めてまれな出来事だったとサッカーメディアはとらえているようです。

上田選手はアントラーズのジュニアユース、茨城県の鹿島学園高校を経て法政大学に入学。大学2年で全国制覇を果たしました。大学入学後には東京オリンピックを目指す世代の日本代表の常連になり、今年6月のコパアメリカではプロ入り前の身でありながらA代表に選ばれるまでになりました(この時のA代表が東京オリンピックを目指す年代の代表を下敷きにしたという特殊な事情もありましたが)。実は卒業後の再来年にアントラーズに入団することが内定していたそうですが、オリンピックを間近にしたこの時期だからより高いレベルで戦う機会を作るべきと考えたか、この夏に入団を前倒ししたというわけです。アントラーズはスカウトがうまいのか、年末年始の高校選手権で目玉になった選手を何人も獲得してイッパシの日本代表に育て上げているという印象があります。中でも青森山田高校2年だった柴崎岳選手を入団内定を取り付けたときにはびっくりしました。こういう内定の話は高校3年の高校選手権が始まる直前に聞こえてくるものですが、まだ卒業まで1年もあるというときに内定なんてなかなかありません。大学生でもここまでやるかと思います。

Jリーグでは過去にも大学のサッカー部を退部してプロ入りした人がいます。特に有名なのは明治大学のサッカー部を退部してFC東京に加入した長友佑都選手です。ただ、長友選手や上田選手のように退路を断ってプロ入りする人はまだ多くありません。男子のJリーグ、女子のなでしこリーグが運用している特別指定選手制度で高校生や大学生を一定期間「お試し」をしてから卒業後に契約するというのが一般的です。こういう制度を上手に使っているチームも大体は一定の強さを維持させることができます。

プロ野球はどうかといえば、ドラフト制度が生まれる前、昭和30年代までの自由競争時代は大学の野球部を退部するどころか大学を中退して有望な若手選手がプロ入りすることが珍しくなかったそうです。例えば、阪神で活躍した吉田義男さんとか巨人と大洋でプレーした馬場正平(ジャイアント馬場)さんとか。各球団が卒業まで待てないと契約を持ち掛けて大争奪戦が起こるなんてこともあったとか。しかし、ドラフトが始まってからはこういう争奪戦はほとんどなくなったようです。プロアマ間の契約トラブルを鎮めるためにドラフト制度を導入したということもあるでしょうが。こういう過去があるから上田選手のような選手が出にくいのかもしれないし、「お試し制度」も導入しにくいのかもしれません。でも、いい意味でプロアマの垣根が低くなっている現状を考えたら、中途退部での前倒し加入が無理だとしても育成選手と同じ扱いで1か月限定という形で「お試し制度」を導入してもいいのでは。

では、また次回です。
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2件のコメント


  1. by成田無頼庵 on 2019年8月16日 @12時33分

    大学は判りませんが、高校中退でプロ野球入りというケースは多数あったようですね。馬場さんも高校中退でのプロ入りですが、他に有名なケースだと金田正一さん・土井正博さんといった方々がそうです。
    ドラフト制度開始後に新浦壽夫さんが高校中退で巨人入りしたのが最後ではないかと思いますが、フィクションでは「侍ジャイアンツ」原作版で番場蛮が高校中退で巨人入りしているので、ルートとしては'70年代始めまでは考えられたのかも知れません。

  2. byShow GK on 2019年8月16日 @12時44分

    コメントありがとうございます。
    確かに大学中退で思い浮かんだのが吉田さんくらいでしたが、高校中退の人だとカネヤン、土井さんの他に東映にいた尾崎幸雄さんもそうでしたよね。自由競争時代は卒業見込みでなければだめというルールもなかったからこそのものだったかと思います。
    翻って見ると、Jリーグはユースチームからの内部昇格でない限りは自由競争で、ドラフト制度を導入しているのは韓国のKリーグとアメリカのメジャーリーグサッカーくらい。といってもKリーグのドラフトも有名無実化していると聞いたことがあります。サッカー界では国際ルールに則った自由競争が世界の常識かもしれません。