格闘技コラムメディア『STAND』のコラムがSPORAでも読める! STAND代表・シンジニシムラが日米を中心とした世界の格闘技シーンをタイムリーに斬っていきます!
PANCRASE 2008 SHINING TOUR
2008/10/26@ディファ有明



自ら制定する王座を巡り、返上や引退や欠場といったリング外の要因により、タイトルの権威を揺らがされる羽目に陥ってしまったパンクラスだが、そんな苦境に屈することなく、精一杯のベストを追い求めている。

旗揚げから15周年。その記念興行として、前回は近藤が返上したライトヘビー級王座を川村がもぎ取った。
第二弾の今回は前田が返上したフェザー級のベルトがメインで争われた。

ランキングに連なる名前が少ないが、キング・オブ・パンクラシストは15年の軌跡の証。9階級のキングが出揃うまでの道筋の途中、できるかぎりの仕掛けを作る。

現在暫定王者とランカー2人と寂しいウェルター級を活性化すべく、“次期挑戦者決定トーナメント”が4選手エントリーで始まった。

その中のひとり、野沢洋之。
最も“漢”を見せてくれたのはこの男だった。

パンクラスのホープ・本田との組み合いに屈せず、離れぎわにミドルキックという総合ではレアな攻撃が効果。
テイクダウンも数度奪いグラウンドづはパウンドで優勢に。
スタンドパンチの打ち合いを誘い真っ向からやり合う危なっかしさがスリリング。
野沢のファイトは観る者をゾクゾクさせる何かを持っている。まだまだこんな選手が存在していることを覚えてもらいたい。

フルマークで勝利した野沢は次回12月7日のディファ大会で念願のの王座挑戦に王手をかける一番に進む。
「パンクラス」のブランドは特別な思い入れの対象なのである。
野沢洋之・・・パンクラスの歴史に名を刻んでくれ。
[Web全体に公開]
| この記事のURL
DEEP 38 IMPACT
2008/10/23@後楽園ホール



終わってみれば、メインに登場した柴田勝頼が最もインパクトを残していた。

地上波での露出がずば抜けいるからなのか。DEEPの会場に来る人は一見さんよりも格闘技を深く知るマニア層の会話で「柴田観ておきたいねえ」という声があちこちで聞こえた。

格闘技キャリアはまだグリーンボーイの域。しかし地上波テレビで全国に伝えられた“狂犬”キャラや知名度あるある船木の後ろ楯もあり、柴田はDEEPに招かれた特別枠に見えた。

入場であのダッシュをしてくれるのか、という期待感は蔓延していた。わずか10メートルに満たない花道ダッシュにドッと沸いた。

リングに立った柴田はかなりデカく見えた。船木直伝のハイブリッド肉体改造を遂げた柴田は、“らしい”雰囲気をプンプン匂わせている。
本来勝負論で語られるべきリアルファイトの世界で、プロレスラーという存在が勝敗を超越した特殊な価値を作ってきたが、柴田は久々にプロレスラー魂を押し通す気概を持った者である。

とにかく声がいい。
プロレスラー特有の喉を絞って低いのだが高いような発声。芸人で例えれば、ケンドー・コバヤシ。ケンコバも生粋のプロレスファンとして習得したのだろう。
現在の師匠・船木もこの声の使い手。柴田のなりきり具合はそのままプロ意識として買える。

滑川にテイクダウンを奪われ、マウントも奪われ、やはり総合格闘技スキルはまだまだだが、柴田は劣勢をプロレスラーの気で盛り返してみせた。
柴田に飛んだこの日唯一の自然発生コール。これもプロレスの味。

ドローの結果も、普段よりダウンサイズした後楽園ホールで誰よりも大きな存在感を示した柴田の価値を至近距離で知った。
まだキャラ先行段階だが、この先ベーシックな総合テクニックを身に付けていけば・・・と願いたいが、プロレスラーらしさを貫くための独自のこだわりがあるならば、柴田の進む道筋までは外野に指図はできないか。
[Web全体に公開]
| この記事のURL
DEEPらしさ炸裂のメインイベントである。

2001年に旗揚げしたDEEPが独自の存在感を発揮しまくった原動力は、団体の垣根を取っ払った夢の日本人対決実現だった。
中立の舞台という位置付けで、本来ありえない“U”系対決が続出したからたまらなかった。

リングスvsパンクラスvsUインターvs修斗。

やがてDEEPがPRIDEと融合し、PRIDE後の今はいつしか日本総合格闘技界の中枢を担う役割を果たすまでしなった。

DEEPならではにプロレスラー路線もあり。
ルチャリブレの覆面軍団招聘時のキテレツさも忘れられないDEEP独自の一面だ。

HERO'S〜DREAMで星は震わぬもキャラクター際立つ存在感で一際大きな歓声を集めている柴田がDEEPに来たことで、実力に適正し柴田の魅力を広げられるマッチメイクが保証されるだろう。

元新日本プロレス、現・船木の弟子が相対するは、元・前田日明のリングス純粋培養選手・滑川。
DEEPらしい絶妙なカードではないか。

試合展開云々よりも、まずは組み合わせの妙。

柴田絡みでは今後、入江なんか面白そうだなあ。
せめてDREAMでミノワマン戦には辿り着いてもらいたいが。
純粋に実力勝負で行くなら桜井隆多や福田力、中西裕一などとDEEPミドル級タイトル争いをできるくらいにはなってほしいものだ。
[Web全体に公開]
| この記事のURL
本日、正午前のニュースで、その声に思わず振り返った。

「PRIDEなどで活躍した格闘家・エンセン井上・・・」

池袋のラブホテル街にあるコインパーキングに停めた車の後部座席にドアを開けて座っていたところ、職務質問をうけて、車内から大麻が見つかり、現行犯逮捕されたという。

エンセンはアメリカ国籍で、本名は井上エンセン正二、とも報道された。
修斗に初出場した際のリングネームも同じ本名だったことを思い出した。

グレイシー柔術がバーリトゥード界を席巻する中、その柔術を身に付けた未知の日系ヘビー級戦士として、エンセンはあまりにもセンセーショナルだった(郷野も顔負け?)。

格闘技を引用する際に“PRIDE”という単語が使われたことに驚いたが、私が見たニュースはTBSだったから使いやすかったのかもしれないし、PRIDEという名前が格闘技を言い表すのに対世間に伝わりやすかったのかもしれない。
実際にエンセンはTBS系の大会には出場していないが。

そういえばPRIDEでエンセンがホドリゴ・ノゲイラと闘った際も、同時期に暴力沙汰が発覚し、地上波でこの一戦は放送されなかった。

エンセンはすでに現役引退しているが、この報道が格闘技界にとってマイナスイメージになってしまうことが悲しい。

大麻捜査にはお決まりのように、この先芋づる式に別の格闘家も・・・
なんてことがにならないことを祈るのみだ。
[Web全体に公開]
| この記事のURL
UFC89
2008/10/18@イギリス・バーミンガム



結果速報をシャットアウトしてテレビの前に座る。日曜日の24時。しばしのイントロダクションの間随所に使用されていたPRIDEの映像にちょっぴり感慨。UFCがPRIDEの映像権を掌握しているからこそできる業であり、今後日本のテレビ放送でPRIDE映像を垣間見る機会はWOWOWでしかないということ。やはりUFCにMMAの最高峰が詰まっているなあと感服していると、中継のオープニングマッチが我々日本人にとってのメインイベントではないか。我らが郷野の登場。UFC中継再開に際してWOWOWの掴みはグッドだった。

イギリスで開催されたUFC89では地元選手の起用が多かったが、それは当然の施策。
郷野の相手、ダン・ハーディーはホームの声援を浴びて優位な心境にあっただろう。
アウェイの郷野は臆することなく久々に“アゲアゲ”なパフォーマンスでかなりの時間をかけて入場。日本ならもれなくステージと花道があるゆえに分かりやすい演出も、UFCでは舞台装飾なく通路上。そんな悪状況に対する工夫はセキュリティスタッフを巻き込んでの踊り。郷野により日本の固定観念が変わるのなら素晴らしいことではないか。

詰め寄るハーディーに対しバックステップとカウンターパンチで応戦する郷野。ひとつひとつの攻撃が無駄なく居合い斬りの如く緊張の中を一閃する。上背のあるハーディーのほうが時折大きく映り、明確な優劣はつかぬも、印象点をとった感じも受けた。

こめかみのあたりから出血した郷野だが致命的ダメージは受けておらず、ハーディーのバックスピンキックに同じ技で返す神経戦も忘れていない。

判定ポイントの明暗を分けてしまったかもしれないのは郷野の反則ヒザ蹴り。片ヒザをついているとグラウンド状態とみなされ、そこへの打撃攻撃は反則とされる。この細かいルールを郷野が理解していたか否か、いずれにせよ明確なルールのもとMMAというスポーツの競い合いとしてUFCが成り立っていることを再確認させてくれる厳格なジャッジングだった。

最終ラウンドでグラウンド状態に持ち込んだ郷野だが極めには至らず。ただしこのグラウンド時間がもっと長く、しかも郷野がコントロールできていたなら勝敗の行方は変わっていただろう。

判定はスプリットでハーディー。試合直後、郷野は自身のブログで悔しさを露にしたが、どちらに票が転んでもおかしくない接戦だった。
そしてオクタゴンの中での攻防はスポーティーな爽快さを覚えさせてくれた。

もはやUFCが総合格闘技の世界最高峰・メジャーリーグであることは揺るぎない現実である。
次々と新たな人材がUFCのオクタゴンに入り、新たな衝撃を見せ、己の名を売る。
PRIDEの晩年に急浮上したソクジュがUFCでは大苦戦。この日もまさかのTKO敗戦。しかし、まさかと思っているのはPRIDEを通じ選手に思い入れを抱いている我々日本人だけかもしれない。

真の“世界”に挑む日本人ファイターよ、もっともっと出てこい。
こんな不況のご時世だからこそ、気持ちで勝負できる日本の姿勢が見たい。
UFC大会に毎回誰か必ず日本人が出場できるくらいになることを望む。
UFCが日本に帰ってきたのだから!
[Web全体に公開]
| この記事のURL

14件中 1~5件目を表示


1 2 3 >>