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Dynamite!! 〜勇気のチカラ2009〜
2009/12/31@さいたまスーパーアリーナ
超直前!戦極軍の勝利が明日に繋がる



今回のような形で格闘技メジャープロモーションが大晦日にガッチリ手を組んだのは初めてのことだ。そしてこれがあるべき姿だ。振り替えれば、三局が真裏で格闘技勝負した年もあった。TBS対フジテレビの対決も続いた。歌番組では互いが避け合いリレー形式に編成されていたのに、なぜ格闘技は真っ向勝負? テレビ局同士も公共電波で格闘していた。大晦日に長時間枠を設けるほど格闘技には数字が取れる魅力と可能性があったということだ。


しかし、そんなときは儚くも過ぎ去った。“大連立”を経ても完全な連合体とはならず、メジャーとされる規模のプロモーションは二派誕生した。
ただし残念ながら一般世間にとっては一部の有名選手を除いてはマイナーな世界でしかなくなっていた。TBSが魔裟斗と石井慧の二本立て告知で貫き通している事実が現状を表している。


魔裟斗と石井慧に対世間の格闘技宣伝を託しつつ、日本格闘技界が誇るファイターたちの存在と彼らによって創り出される格闘技そのものの実態を知ってもらい、未来への可能性を感じてもらい、ファンになってもらわなければならない。


そのために、小さな格闘技界で細分化しても仕方ない。これが格闘技の歴史でもあるのだが。


魔裟斗と石井慧は別格として、大会の柱となっているのは対抗戦だ。世間にはDREAMだ?戦極だ?SRCだ?と分からなくてもいい。日本格闘技界の真の最高峰マッチを惜しげもなく並べることができたのだから。


煽りビデオのイントロダクションがなくとも、リング上の両軍選抜ファイター同士の攻防で視聴者を惹き付けることができるか。チャンネルザッピングに勤しむ親指を思わず止めさせてしまうだけの試合を両軍トップファイターが披露することができるか。
こればかりは闘う選手たちの心の持ち方次第でもあるが、ジャンルを背負うトップならば言われなくても当然心を抱いていてくれるはずだ。


そこで、今年の大晦日を経て、来年以降の日本格闘技界の進むべき方向をこう願いたい。
両軍対抗はマストである。強さの軸を曖昧にする私利私欲的細分化は業界を後退させるだけだ。誰が一番強いのか、それがシンプルに観る者に理解されればよいだけのこと。
格闘技界の現状を追えば、DREAMか戦極/SRCか、それぞれのメジャープロモーションで取りまとめた選手同士が雌雄を決することが業界の頂点となることを互いに推進しブランド化していくこと、それが日本の格闘技自体の未来を健全に築いていくことを肝に銘じて取り組んでほしい。


一方で、今回から本格開戦する対抗戦の結果が今後を左右してしまう可能性もある。
どちらかが全勝してしまうようなことがあれば、そもそも対抗戦の概念は必要なくなってしまう。それが現実ならば、どちらかのプロモーションは存在の意義がなくなる。“対抗”する相手ではなかったということになるのだから。


しかし、プロ野球の日本シリーズでも一方が4タテの完勝してしまうこともある。
一つのメジャープロモーションで済めばいいに決まっているが、これまでの日本の格闘技の歴史を振り返ってみれば、それは無理な相談だ。
一つは無理でも二つはちょうどよい。競争原理が働く世の中で、まずは二つのメジャーが対抗を始めていってみればいいじゃないか。


必ずTBSの全国ネットワークで放送されてきたDREAMに対して、テレビ東京ローカルの枠で細々と続けてきた戦極。業界内ではどちらの方が力があるかは明白だ。
もしDREAMが完勝してしまえば、戦極は今後必要なくなる。対抗戦も必要なくなり、業界内格差が拡がり、DREAMは独自の道を進んでいけばよくなる。


まずは今回の対抗戦の結果が出てみないと分からないが、ならば敢えて弱い立場の方が下剋上してみせたほうがよっぽど面白くなる。
誤解を招くかもしれないが、弱いというのはプロモーションの規模として。ここで戦極戦極チームが劇勝してみせれば実力を証明できるし、なにより面白くはずである。全試合でなくていい。事実上の大将戦と副将戦、青木vs廣田、川尻vs横田で、廣田と横田が勝ってみせること。KOか一本なら最高だが、判定勝ちでもいい。
戦極チームが敵陣の母屋のDynamite!!を食ってしまうことで、次に続く必然が生まれる。戦極が掻き回して、「戦極は強いんです」なんていうマイクアピールで対抗戦に火をつけてしまえばいい。
戦極チームの闘いぶりが対抗戦の内容を豊かにし、日本格闘技界の本当の大連立を加速させることになるはずだ。


日本格闘技界のあるべき姿が今年の大晦日を皮切りにスタートすることを願ってやまない。
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幸いにして、魔裟斗のプロデビューから全試合をリアルタイムで観ることができた。今やK-1の顔となり、日本で最もバリューある格闘技選手となった魔裟斗が歩んできた道において、幾多もの節目がある。ひとつひとつ確実に段階を踏み、着実にステージを登っていったからこそ、現在の揺るぎない地位を勝ち取ることができたのだ。もはや魔裟斗は格闘技の世界だけでは括れない、憧れの成功者である。アスリートである以上誰にでも訪れる“引退”の方法を早くから思い描いた魔裟斗が選択した“とき”が決まり、今まさに目前に迫っている。魔裟斗の集大成を前に、魔裟斗のことを語っておきたい。上述した“節目”が思い出とイコールであり、私なりの魔裟斗ベストマッチリストでもある。以下、前編はK-1MAX以前のキック時代を追っていきたい。


■デビュー二戦目でセミファイナル抜擢:小比類巻戦

当時、全日本キック大会を欠かさず皆勤していた中で、あまりにも異色の采配だったことを今でも鮮明に覚えている。
メインクラスの試合が直前キャンセルになってしまい、代わりに大抜擢されたのがデビュー二戦目同士の若者対決。
魔裟斗のキャリアの中で唯一のKO負けはこのとき小比類巻に喫したもの。しかし粗削りながらも真っ向勝負の二人の試合は大いに盛り上がった。『格闘技通信』では2ページのレポート。
異例な二人がキックの顔になっていった。


■シュートボクシング武道館大会で団体対抗戦出陣

MAキックの嶋村を見事にKOしてみせた。各団体が勢揃いした当時のオールスター企画で、まだキャリア浅い魔裟斗が堂々のインパクトを残してみせた。


■『コロシアム2000』@東京ドーム

船木vsヒクソンをメインとしたテレビ東京中継大会で魔裟斗は当時のビッグネーム、メルチョー・メノーと対戦。ダウンを積み重ねてしっかりKO。広いドームに伝わるファイトを見せた。


■10万人の前でムエタイ戦

12月5日、タイ国王誕生日にバンコクの王宮広場で開催される入場無料のムエタイ世界対抗戦に魔裟斗が出るということで、はるばる見に行った。
ムエタイならではのミドルキックでポイントを奪われ惜敗も、完全タイ式に染まる魔裟斗の貴重な海外マッチを目撃したことを自慢したい。


■キック業界のエポックメーキング:自主権興行

『Wolf Revolution』のタイトルで、ミュージックライブとジョイントした新企画をスタート。当時の強豪外国人、モハメド・オワリをKOしてみせた。フリーになって以来より積極的なファイトスタイルになっていった。
さらにNKホールでのスペシャル編ではミッシェルガン・エレファント、ハイロウズ、ギターウルフと“共演”し、魔裟斗がラインナップの4分の1でキック戦。魔裟斗の攻撃に合わせて沸き起こったロックな掛け声のボリュームが忘れられない。
この『ウルレボ』で宇野薫とのミックスルールのエキシビションも実現。これはわくわくした。会場はベルファーレだった。


■K-1 J-MAXで鮮烈勝利

日本テレビの『K-1 JAPAN』枠で一度だけ開催された中量級大会は戦前の期待が当時に大興奮で大爆発した歴史的1ページである。ほんとに後楽園ホールでいいの?という贅沢さ。
セミファイナルで魔裟斗はこれまた当時の強豪、ムラッド・サリと対戦。魔裟斗KOヒストリーの中でもトップランクに来る劇的シーンを生み出した。何度観てもKOの瞬間に声を上げてしまう。


・・・と、挙げてきたが、ほんとに魔裟斗には名勝負が多い。まだMAX時代は触れていないのにこれだけの数。スターの条件は試合で魅せること。魔裟斗は文句なしだ。


では続きもお楽しみに!
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今自転車で新宿西口辺りを走っていたら、新宿中央公園で長蛇の列と人混みとテレビカメラの取材陣が。


何かと思って近づくと、赤いマフラーが。


あ、アントニオ猪木だ!


年末恒例の炊き出しサービスでした。


肉入りのラーメンに缶詰めを振る舞い、猪木さんはみんなのラーメンに直接胡椒を振りかけながら声をかけている。


猪木さんの隣には子猪木、そしてアントキの猪木もいます。
UWFスネークピットジャパンのジム生もいて、代表の宮戸さんも!
やはり宮戸さんが味付け担当だったのでしょうか?


猪木さんの筆書きも飾ってあり、漢字一文字で


「謝」


これまでは年末格闘技イベントの宣伝も兼ねたこともありましたが、もしかしてDynamite!!中継に電撃参戦!なんてあるか?


稀代のスーパースターの懐の深さを感じました。


猪木さんの「謝」は“感謝”の心でしょう。


私も見習わなくては!


ダァァァーーーッッッ!!!
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Dynamite!! 2009
2009/12/31@さいたまスーパーアリーナ
ライト級トップ対決実現!



対抗戦と銘打つ上での絶対的必然カードの実現を喜びたい。両軍の王者対決に挑戦者対決。そもそもそれぞれで決まっていた二つのチャンピオンシップを真っ二つにして組み合わせた形だが、これで直接的にDREAMと戦極あらためSRCと、どちらの王座が強いのか、すなわち価値があるのがが決まってしまう。こんなシビアさこそ格闘技になくてはならない要素である。
ここで気になったのは川尻の立ち振舞いだった。


青木真也と廣田瑞人、川尻達也と横田一則。ちょっと前なら考えもつかなかったマッチメイクである。対抗戦が決まってから私がリストアップした希望カードでもあり、今回は見事にビンゴ!
DREAMは世間的露出で戦極を明らかに上回ってきたが、対抗戦企画はどちらかと言えばコアな格闘技ファンに刺さるもの。大晦日のテレビ中継において両軍両者のネームバリュー格差はないと考えたほうがいい。


魔裟斗引退、石井デビュー戦という二大決戦を、日本のMMAメジャーの看板がどう越えてみせるのか。つまりどれだけ国民に日本のMMAの今を刻むことができるのか。
日本格闘技界の最高峰たる“MMA日本シリーズ”が大晦日に行われる。この施策の重みを選手自らが理解し積極的な姿勢で取り組んでいかねばならない。


チャンピオン対決の本気。青木と廣田を並び立たせる王座という要素が絶対的価値となる“真の王者決定戦”は日本MMAの代名詞マッチとなる。
まだ実力未知数の廣田を測るには、青木はあまりにも高い壁なのか、それとも拮抗しているのか、廣田の査定として観たい。


そして、川尻である。
DREAM王座戦が消えて不快感丸出し。対戦相手の横田は眼中にないといった態度で、登壇時のポーズもだるい素振りを見て、集合写真もキャンセル。
これが今回の川尻流の感情表現であり、横田との格の違いを見せたいのだろうが、ちょっと待った。
まだ川尻が格差を示すにはもう一段階必要だ。日本人間での実力ランクは実際のところどうなのか。実はまだ川尻自身の実力査定がなされていない中、今回の対抗戦は絶好の川尻評価の機会となる。


川尻は実はMMAで日本人との対戦が極端に少ない。
PRIDEでの五味戦以来三年あまり川尻は何故か外国人を迎え撃つ役になっていた。ブスカペ、アルバレス、カルバンとそうそうたる相手と接戦を演じてきたが、一方で明らかなイージーマッチメイクがあてがわれていたことは否めない。
冷静に見て、青木と川尻の道のり比較すると、明らかに青木のほうが多くの困難を乗り越えてきている。青木は同階級の日本人を越え、強豪外国人も越え、誰もが納得するプロセスを経て王座に辿り着いた。


で、川尻は? K-1ルールで武田、魔裟斗と日本人連戦してはいるものの、本道と外れた試合を強いられたことは気の毒ではある。
会場人気の圧倒的高さから自ずとDREAMの看板としてのポジションについている川尻だが、人気だけでなく圧倒的な強さが欲しい。
PRIDEから継続してきたファンの温かさが川尻人気を後押ししているが、青木並みにシビアな道を歩まねば、青木とのチャンピオンシップに到らせてはならない。


なので今回は絶好の“川尻査定:日本人座標軸編”である。
DEEPの王者になり、戦極でも北岡にしかまだ敗れておらず、廣田には勝利している横田を相手に川尻がどれだけ圧倒して激勝してみせるのか。
川尻が記者会見で見せた態度を正当化するには何がなんでも完勝してみせなければならない。
しかし実際のところはどうなのか・・・


あくまでも予感にすぎないが、決して川尻の思い通りにならない気がする。
得体の知れない不思議な強さと戦極ファイター特有の粘りを兼ね備える横田を攻めあぐねる川尻の姿が思い浮かぶ。
テイクダウンは決め、インサイドかハーフの状態でパウンドに行きたくても膠着気味の展開に・・・されど横田のスタンド打撃がヒットする場面もしばしば・・・なんていうシーンが浮かぶ。
“川尻流”の型にはまったファイトから、青木が頻出してくれる意外性を望みたいところだが・・・


川尻特有の“色気”は好きだ。しかし、人気とキャラクターを越えた、まずは日本人間での強さランキングを知りたいのだ。
だから繰り返し言うが、今回の対抗戦は絶好の機会。
川尻vs横田が私のイチオシマッチである。


DREAMで謳われた“ジャパニーズMMA”。
Dynamite!!の舞台でその真髄カードが実現する中で、川尻が本当に強いことを証明してみせればいいのだ。
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Dynamite!!
2009/12/31@さいたまスーパーアリーナ
対抗戦5試合+2試合決定!



ようやく発表された大晦日『Dynamite!!』の追加カード。もちろん注目はDREAM対SRC(戦極)の対抗戦。私が先日リストアップした希望カードの一部が叶い、少しはマッチメイカーのセンスはあるのかも? なんてわけはなくとも、中でも沸騰必至なのは今年両陣営で開催比べしたフェザー級。互いに異次元にいた両軍の日本人トップ同士が初遭遇するというあり得なかった組み合わせの刺激が対抗戦の価値を極めている。


山本“KID”徳郁 vs 金原正徳

DREAMの象徴vs戦極王者は事実上の日本人頂上対決だ。金原にとっては千載一遇の大チャンス。DREAMでは他の日本人選手誰もが対戦を望みながら叶わなかったKID戦。金原はこれまでにも増した粘りの底なしファイトで真っ向勝負に挑めば、KID越えは決して夢ではなかろう。


ただしフィジカル論になればKIDはかつてHERO'Sでは自らの階級を遥かに越えた70級の日本人を制した実績がある。絶対的な一発を持つKIDの勝負どころの突き方はバリエーションが豊富ゆえに研究し尽くしきれない奥深い恐怖あり。


金原が恐れずどれだけ前に出れるかが頂上対決をスイングさせる要素になろう。


高谷裕之 vs 小見川道大

高谷と小見川の“準優勝者対決”、これは必然性あるいいカードだ。
打撃という武器を持った高谷がリードしている感があるが、金原同様に小見川の粘りは特筆もの。しかし高谷とて粘りでは負けていない。
消耗戦になるか、一発が試合を決めるか、マニア向けの屈指の好カードにまずは拍手を送りたい。


そしてフェザー級でもうひとつ。


所英男 vs マルロン・サンドロ

これは所の魅力が引き出せるカードではないか。
私が希望した日沖戦はならなかったが、実は外国人相手に好勝負を連発してきた所にとってはシビアな日本人対決よりも己のポテンシャルを発揮できる期待がある。
しかしとてつもなく手堅く穴がなく強いのがサンドロ。
所が動き、サンドロを動かせれば、観る者を沸かせるだけでなく事実上の「キング・オブ・パンクラス」奪取もありだ。
動いて動いて動きまくる。そんな所が観たくて観たくてたまらない。


さらにヘビー級でも対抗戦と言えるカードが決定。


藤田和之 vs アリスター・オーフレイム

最近強大にパンプアップしたアリスターの恐ろしさはテレビ画面からも嫌というほど伝わってくる。
パンチにヒザの必殺打撃、一攫タップ奪取のフロントチョークと必勝パターンを持つアリスターに対して、戦極ではどこか元気なく負けがこんでしまっている藤田。
実は藤田を掻き立てるのはPRIDEの世界観かもしれない。
あの頃のイケイケ藤田を、ヒョードルを脅かしたときの藤田を観たいものだが・・・シビアだろうなあ・・・。


ほか、日本人ベテラン対決の、


桜井マッハ速人 vs 郷野聡寛

は正直あまり積極的に観たいとは思わない“友人対決”。
しかしこの種の友人対決は最近容赦なく組まれている傾向でもあり、ここは“日本代表決定戦”として感情抜きで観るのがよいか。


柴田勝頼 vs 泉浩

はキャリア浅い者同士の大味マッチ。
“プロレスラー”対“五輪メダリスト”という分かりやすさは国民の日に必要ということだろう。


K-1ルール戦の、


西島洋介 vs レイ・セフォー

も分かりやすいK-1であり、まだ知名度は残っているであろう“洋介山”のバリューで視聴者を気にさせたいテレビ向きカードである。


格闘技ファンにとってはやっぱり対抗戦だが、どうしてもテレビ向き編成は捨てられないという判断なのだろう。
でも試合内容さえよければキャラクターに頼らなくてもいいのに・・・と毎度の葛藤が生まれてしまうのだが、早く主催のTBSが格闘技を純粋な格闘技として伝える勇気を持ってもらいたいと思うのだった。


“勇気のチカラ”とはTBS自らに向けられた言葉なのかも!?
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