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K-1 WORLD MAX 2009〜日本代表決定トーナメント〜
2009/2/23@代々木第一競技場



熱のこもった好勝負が続出した。煽りビデオでは昨年のMAX決勝、魔裟斗vs佐藤のプレイバックをこれでもかと流し、MAXにあるべき”魂”の闘いを喚起しているように見えた。これに触発されないほうがどうかしている、と選手本人が自覚しているかのようにオープニングのリザーブマッチから目が離せない攻防が続く。やはり異彩を放つ存在として戦前から注目された”ヲタク代表”長島☆自演乙☆雄一郎が見事にアピールしてみせた。コスプレの入場はもちろんのこと、肝心の試合でもHAYATOに完勝してしまったのだからたまらない。敗れたHAYATOの落ち込みように生易しい言葉をかけるのも躊躇してしまうほどだったが、ここは☆自演乙☆という新種のスター台頭をウェルカムすべきだ。もう一人、ディフェンディングチャンピオン・城戸を圧倒し金星をあげた新鋭・日菜太も今大会の収穫だった。下手すればマンネリ化しかねないメンツラインナップの中で、長島や日菜太のような若くて新しい選手が台頭することがK-1MAXに最も必要なことである。

結果から言えば、小比類巻が”復活”の三度目優勝。誰よりも小比類巻本人が嬉しいに決まっているが、この復活劇を手放しに喜べない自分がいる。
まずは小比類巻の闘いぶり。MAXではKOに直結しやすいパンチ攻撃に重きが置かれるが、決してパンチが得意ではなかった小比類巻は相当パンチ修練を重ねてきたことは試合から伺えた。準決勝の城戸戦、決勝の山本優弥戦とパンチでダウンを奪い勝利したことはMAX対応の成果として賞賛されるが、いかんせんあのクリンチの多さが勝利という最大の成果をかき消してしまう。MAX参戦時から小比類巻のクリンチは際立ったバッドイメージが残っていた。背を向けてしまうことさえある闘いぶりと比例するかのように小比類巻は勝てなくなり地位を落としていった。
日本を代表する者がこれでいいのか。申し訳ないが魔裟斗と佐藤と比較して、とても横並びで立ってもらいたくない。4月の世界大会開幕まであと2ヶ月。どうか小比類巻には日本王者の重責を持ってこの悪しきクリンチングから脱却してもらいたい。

さらに目に付いたのは小比類巻の過剰なショーマンシップ。よく捉えればプロフェッショナルとしてのサービスアクションではあるが、試合ぶり以上に観客へ向けたポーズが場違いさすら覚えさせた。
しばらく結果が出せなかった小比類巻なりに喜びを爆発させた表現であることはよく分かる。それであっても試合中を含めた”余計な”ガッツポーズは、やはり魔娑斗や佐藤と比較しても日本代表としての存在が軽くなるとしか思えない。
強い者に”かっこつけ”はいらない。堂々と世界に立ち向かう者なりの威厳を持って、小比類巻には心のスタイルチェンジをお願いしたい。

まるで小比類巻が嫌いかのように書いてきたが、本音は若い新星に台頭してほしかった。小比類巻というベテランの復活を許してしまったことは、まだまだその他トーナメントエントリー選手の力が及ばなかったことである。
絶対に次なるスター候補が出てこなければいけない。それがアニヲタキャラだっていい。現役大学生だっていい。現状では魔娑斗と佐藤のツートップを遥か彼方の先に見た第二集団状態であることは事実だ。同時にこれはMAXの未来を考えると由々しき問題である。
山本優弥のキャリア史上最高のガッツは見えたが、攻め手の単調さも露呈した。1日に二度敗戦してしまった城戸も決定的な攻撃を見せられなかった。

しかし光は見えた。長島の微妙にタイミングのズレた特異の間とエンドレスのパンチラッシュは力強さこそないものの確実にMAXの新たな風景だった。日菜太のミドルキック攻撃はパンチ主体になりつつあった現在のMAXで新鮮な異彩を放った。
長島☆自演乙☆は24歳、日菜太は22歳。年齢、キャリアから見てもMAXに欲しい未来の逸材となり得る。コスプレイヤーという新たな客層を会場に呼び、同業界で話題を振りまいた長島はMAXの新顧客開拓役も請け負うことになる。日菜太のようなムエタイ×キックボクシングスタイルはK-1という競技の基本技術を再確認させ、競技人口を広げるきっかけにもなろう。

とにかく新しいモノが必要なのだ。2009年もまだ始まったばかりとは言え、MAXの舞台は年内あと3回のみ。うかうかするとあっという間に過ぎてしまう時の流れに乗って、次代を背負うニュースターが急速に力をつけ結果を残していけることを心の底から願いたい。
小比類巻の優勝で日本のMAXが停滞したと思わせないよう、若き人材の猛追と追い越しがリング上の勝負をもってなされていくことがMAXの課題であり使命である。
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UFC94 ST-PIERRE vs PENN 2
2009/1/31@ラスベガス・MGMアリーナ



UFCの比類なき勢いはオクタゴンに集う選りすぐりのワールドクラスファイターが牽引しているのだと改めて感嘆させられた思いである。今回はUFCにとって二度目となる現役王者同士の究極対決を実現してみせた。
真の“パウンド・フォー・パウンド”決定戦。ウェルター級王者・GSPことジョルジュ“ラッシュ”サンピエールに挑む形になったライト級王者・BJペン。大接戦だった前回から時を経て、満を持して対峙した両者の間にできていた圧倒的な“差”には驚くしかなかった。現実を創ってみせたのはGSPの方だった。

ジョン・フィッチが強い、LYOTOが強い。メインを前にまざまざと見せつけられたMMA“本場”の進化。
さらに輪をかけた磐石さを披露してみせたのがGSP。なんだかとんでもない歴史が刻まれる瞬間に立ち会えている実感にさせられた。それほどまでにGSPはとてつもなく強かった。

あのBJペンが何もさせてもらえない。ライト級では毎度超人的強さで文句なしに世界最強の地位を確立していたBJペンが、ラウンドが進むにつれて見た目に明らかに傷ついていく。
一方のGSPはまるでペンのパワーを吸収しているかのようにペースをもぎ取っていった。

立っても寝てもGSP。ジャンプしながらのストレート“スーパーマンパンチ”をヒットさせ、グラウンドでは完全に支配した。
勝ち名乗りを受けるGSPが実にカッコいいことこの上なし。端正整ったマスクに均整とれたマッチョボディ。さらには礼儀正しい好青年ぶり。
『天が二物を与えた男』と本稿にタイトルしたが、三物をも与えた“ザ・マン・オブ・ザ・ファイター”、旧PRIDE的に言えば“男の中の男”。それがGSP。そこまでベタ誉めするに値する、いや、これが真っ当な評価表現。
完璧すぎてどうするの?とGSPの次以降を案じてしまうのは余計なお世話かもしれないが、それが本音の意見が多数では。まずは決まったチアゴ・アウベスとの防衛戦でさらなるGSPの進化を拝むとしよう。

GSPをはじめとした“格闘技の神”が集結しているUFCを観るたびに心踊らされる。“神の子”KIDもオクタゴンサイドにやってきた。石井慧が最強への直行路としてUFCを選択した気持ちはよく分かる。
“アルティメット”の冠を独り占めするUFCにGSPあり。ほんとに究極である。素晴らしいことだ。
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