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THE OUTSIDER SPECIAL
2009/3/15@両国国技館



何故リングに上がって闘うのか。そんな基本的な動機に遡り辿り着いた。私事で恐縮だが、学生時代にキックボクシングを習い始め、総合格闘技も少々かじった。ジムに通うきっかけは強くてかっこよくリングに映えるキックボクサーに憧れ、自分もあんな人間になりたいという衝動に駈られたからだった。そして幾度かアマチュアの試合にも出てみた。しかしここで決定的に格闘家としての資質が無いことを知る。対戦相手の顔を殴るという行為ができないのだ。技術ではなく気持ちの問題。恨みも憎しみもない他人の顔を何故殴らなければならないのか、と。

こんな私は置いておいて、何故顔を殴ることが認められている格闘技の試合に臨むのか。
大きく分けて三通りあると考える。

まずは“力試し”。スポーツとして取り組むにあたり、修得の度合いを測るために試合や競技会、発表会、進級・昇段審査などの“コンテスト”が開かれる。
柔道や空手などの武道には帯という基準がある。格闘技にはジャンルの違いはあるが、立ち技打撃系、組技寝技系、総合格闘技系と、どれも自ら参加費を払って出場するアマチュア大会から、入場券を販売して開催されるプロ大会へ続くステップがあり、その過程を進むに従ってスキルアップしたことになる。
これはスポーツ競技として至極当然の在り方であり、競技の成熟度と比例して競技人口が増加し、力試しに挑む人の数も増えていく。
格闘技界でこの傾向は顕著で、10年前と現在とでまジムの数も競技人口も比べものにならない。やるスポーツとしての格闘技が随分と身近になったものだ。

続いてのケースは“いじめられっこ”。最近ではボクシングの内藤大助がこの例を代表するが、いじめられている弱い自分からおさらばしたい、強くなって見返してやりたい、というような動機からボクシングや格闘技を始める例はよく耳にする。
直接的に人の体に打撃を加える、掴む、投げる、抑える、極めるなどのコンタクトは、強さに直結する行為である。そして自信にも繋がり心も強くする。
いじめからの脱却に格闘技の門を叩く気持ちは分かる。

最後に、本稿の本題となるケース、“不良”である。
あいにく私の身近でいわゆる不良と呼ばれる類の者が皆無だったので、私にとって不良とはマンガや小説、テレビドラマや映画の世界である。
ざっと思い浮かぶだけでも、「スクールウォーズ」「湘南爆走族」「池袋ウエストゲートパーク」「ROOKIES」「ごくせん」「ろくでなしBLUES」「パッチギ」「ドロップ」などなど。まだまだ他にもたくさんある。
で、今回の『THE OUTSIDER』では「クローズZEROⅡ」と結びついた。


現実に、不良、チーマー、暴走族は実在し、全国各地に無数のグループがある。道を走ったり、喧嘩をしたりしているそうだ。
そんな彼らのモチベーションは腕っぷしで一番になること。実に分かりやすい。ならば堂々とリングの上で裸一貫で競い合わせてしまおう、という企画を前田日明が仕掛けるのだから、それだけでブランドだ。
若き日の前田自身も通った道を前田本人が監修するのだから説得力もある。

選手としては無名でアマチュアを集めた『THE OUTSIDER』だが、一見さんでも、目の肥えたファンでも十分楽しめる大会だった。少なくとも私は十二分に楽しませてもらった。
アマチュアならではの勝負に対するガチな姿勢、そして作ることなく染み付いた生粋のキャラクター。
『THE OUTSIDER』には格闘技大会としてあるべき要素が自ずと備わっていた。

前述した映画やドラマやマンガの実写版を見ているようだった。
誰が考えたか選手ごとに面白いキャッチコピー。一体どんな奴が登場するのか興味がそそられまくる。
名前負けした者、名前以上のインパクトを見せた者、さまざまなメンツがひとつのリングに集結したが、誰しもが全身全霊のパフォーマンスを振り絞ろうと真剣そのものだった。
不良とは言えども、清く正しく美しい。そして面白い。それが『THE OUTSIDER』を端的に表現する言葉である。

不良という憧れ。不良というアイドル。『THE OUTSIDER』はそんな世界を成立させてしまう。
『THE OUTSIDER』から世間に羽ばたく人材が出てきそうだ。そんな予感がビシビシする。
『THE OUTSIDER』を見る際に色眼鏡は必要ない。百聞は一見にしかず、だ。
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戦極 第七陣
2009/3/20@代々木第二競技場
直前コラム



DREAMとほぼ時を同じくして開幕する“もうひとつの”フェザー級グランプリが直前に迫ってきた。戦極によるグランプリは同じく16名。しかしDREAMと異なる趣が見た目に分かる。ファンの気持ちになれば、なんでわざわざ日本国内で同じ階級のグランプリが二つに分かれて行われるのかと疑問や不満もあろうが、業界内の目で見れば政治的事情による致し方ないことでもある。ならば両者の比較しながら楽しむことが得策である。そこでフェザー級グランプリ戦極編を掘り下げておきたい。

まずはマッチメイクの方向性。あまりにも清く明確に“日本vs世界”を打ち出してきた。この構図は分かりやすい。
主催国・日本の選抜選手が進境著しいアメリカをはじめとした海外勢を相手にどれだけのものを見せて結果を残してくれるのか。対世界の査定マッチは大歓迎だ。

一方でエントリー選手の顔ぶれを見ると、たしかにDREAMと比べると地味な印象は拭えない。しかし戦極の色には合いまくっている気がする。
渋くて強い、玄人好みの“渋強(しぶつよ)”な侍ファイターの養成工場として戦極がブランディングできていけばよいのではないか。

その“渋強”の中で、戦極が事実上のエース扱いしているのが日沖発だ。
今大会のポスターでは日沖が一人ドドーンと単独センター出演。DREAMで言えばKIDに匹敵する座を与えられた日沖に一点投資した戦極の賭けの行方を後押ししたい。
爆発未遂で終わったDREAMフェザー級を尻目に、理想のMMAスタイルを披露し、違いを見せることができるか。
戦極のブランドを背負った日沖の勇姿に期待しよう。
日沖以外にもメジャーシーンでは無名だが、これまで確実な実績を残してきた実力者、未来開花が期待されるホープが顔を並べた。
元修斗王者・門脇、吉田道場から小見川、ZSTから金原&山田、パンクラスから川原、ガッツマンから石渡。彼らはここで一発インパクトを残して己の名前を売っていけばよい。

外国勢も無名ではあるが、各名門ジム、チームから満遍なくチョイスされており、上質なファイトが保証されよう。

メジャー系大会には珍しく中規模の代々木第二競技場が会場とされたが、小柄なフェザー級の動きをモニターを通してではなく、正真正銘ライブで目撃するには最適な場所だ。

戦極なりの“違い”をいかに見せることができるか。
そこに注目してライブに臨みたい。
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DREAM.8 〜ウェルター級GP 2009 開幕戦〜
2009/4/5@名古屋・日本ガイシホール
桜井”マッハ”速人 vs 青木真也、決定!



今年二発目のDREAMで開幕するウェルター級GPの参戦選手がまだ日本人4名しか決まっていないにも関わらず、事実上の決勝戦となるビッグカードが発表された。桜井”マッハ”速人vs青木真也。きっかけは青木本人のアピールだったが、まさかマッハも一回戦からこの挑発を受け止めるとは思ってもみなかった。ここは、高田統括本部長がいたならもれなく、「マッハ、お前は男だ!」と絶賛することだろう。

明らかにリスキーなのはマッハの方。”DREAMの大黒柱”と自ら宣言し積極的に出場を重ねる伸び盛りでイケイケムードの青木と、ここ数年目立ったインパクトを残せていない(マッチメイクにも恵まれていなかったと言える)マッハとでは客観的な勢いの差は否めない。

しかし、ここは敢えてマッハを応援したい。
階級を上げ、自信満々の発言を繰り返す青木に露骨な対抗意識を露わにし、堂々と迎え討つ選択をしたマッハが、ここ数年温存していたパワーを爆発させたなら・・・あのフランク・トリッグ戦を超える興奮を期待したいものだ。

実際に修斗で一戦交えているマッハと青木。その試合では、開始直後に青木がマッハをグラウンドで翻弄しかけ、あわやの場面を作ってみせた。
判定はマッハについたが、私の目では青木についてもおかしくなかったというのが本音だ。

あれから青木は多くの強豪相手に実績を積み、結果を残し、地位を築いてきた。
マッハは後輩の五味にKOされ、修斗でもタップアウトを喫するなど、痛い星が目立つ。
でも、だからこそ、マッハの意地、マッハの底力が見たい。
プロデビューから10年以上に渡りマッハの全試合を見続け、興奮し、勇気をもらってきた。はっきり言えば、思い入れ優先。格闘技界の”ボス猿”として力で君臨してもらいたいのだ。
若いものに負けてたまるか・・・クールを装わず、感情丸出しのマッハが見たい。
立っても寝ても、打撃でねじ伏せてみせてくれ。

実にヒリヒリする闘いを組んでみせたDREAMの本気度に脱帽。
4月5日は名古屋遠征するしかないなと決めました。
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全日本キックボクシング連盟
Krush.2
2009/3/14@後楽園ホール



当日券発売一切なしの事前完全ソールドアウト。不況、不況と連日暗い話題がメディアを駆け巡っているが、ポジティブマインドになりたければ後楽園ホールに来い、だ。全日本キックによる後楽園満員伝説は更新され続けている。キックボクシングというジャンルを今なお切り開くパイオニアとして、現在考えうる黄金カードを惜しみなく並べてみせた。そりゃ売り切れるに決まっている。

K-1ルールを完全採用したキック界ドリームマッチ。
しかもK-1でスタートしたばかりの60kg級カードをメインに据え、実はK-1以上の豪華さ。
60kgのライト級をいち早く充実させ企画化してきた先駆者だからこそできることでもある。

K-1の大舞台で“豪腕”ぶりをまだ披露できていなかった大月晴明がホームリングで久々に爆発してみせた。
目下エースとして売り出し中の石川直生とのメインをお目当てにチケットを買ったファンがほとんどだろう。
全日本キックが誇る黄金カードのひとつは全日本キックでやることに意義があるとばかりに、超満員の客席が息を飲んで行方を見守った。

パンチの大月とヒザの石川。距離を取り合った両者のスタンスから、大月はノーモーション砲、石川はジャンピングニーを執拗に狙う。
大きく試合が動いたのは最終3ラウンド。大月の拳が石川をなぎ倒すこと二度。大月が歓喜を全身で表したのも久しぶりだった。
敗れた石川だが、“やられっぷり”を讃えたい。心に残る勝負の要素はこういうことでもある。

前回第一回大会のヒーロー・山本元気は、全日本キック史上の大激闘男・梶原龍児とヒリヒリの真っ向対決。
近距離で踏み込み合ってのパンチが何度交錯したことか。どよめきと歓声の連発。
梶原を馬力で上回った山本元気はまさに“Mr.Krush”。誰よりも男らしさ際立つ山本元気がK-1のリングでどのように映るのか見てみたくなった。

キック界の60kg級トーナメントを制しK-1トライアウトでもぶっちぎりのインパクトを残してきた山本真弘は、己のテクニックを試すかのように横綱ゲームを披露してみせた。
来場した谷川プロデューサーにも強い印象を残し、ごく近い将来でのK-1大会デビューも確実だろう。

ここでK-1だ。昨年から組まれ始めた60kg級はまだMAXを食うほどのリアクションを得ていないのが実状だが、すでに同級のスター候補と目されている人物はいる。
それは全日本キックにも上がっていた上松大輔。まだキャリアと実績はこの日メインクラスに出場したトップ選手には及ばないが、テレビ受けするルックスと非凡なセンスに期待が込められている。
またもう一人、現在は高校生の甲子園枠で経験を積んでいる段階だが、HIROYAもこの階級のスター候補になろう。

しかし、ここで黙っちゃいないのが全日本キック、なはずだ。
K-1が新たにブランド化していきたい階級のトップ人材を世に出し続け、実際に後楽園をソールドアウトにしてみせる。
ぶっちゃけK-1がやらなくても全日本キックが主導していけるばず。なのだがそう簡単にはいかないこともある。

二年前の60kgトーナメントは大いに盛り上がった反面、決勝の舞台・代々木第二競技場は満員に遠く及ばない客入りだった。
どうせやるなら1人でも多くの人に観てもらったほうがいいに決まっている。でも現存のキックファンだけで大会場をフルハウスにできないなら、やはり一般層の誘致が必要となる。

そこでK-1というわけだ。とりわけ地上波テレビ中継枠は現時点で考えうる最大のプロモーション先だ。
キックボクシングの最高充実クラス・60kg級をアピールするにはK-1のムーブメントに乗ることが最善策なのだ。

そんな状況を踏まえた上での地に足着いた今後のK-160kg級展開案を勝手ながら提言したい。

まずは無理することなく、会場は聖地・後楽園ホールで。
超満員の熱気と観やすさ。軽量級選手でも十分に映える会場で、何よりキックの聖地で実施することが企画の信頼性を増す。
MAXも始めは後楽園だった。そこで生まれた熱戦がテレビを通じて伝えられ話題となった。

だからもし今大会がK-1だったら、自ずとテレビマッチになり、大月や山本元気&真弘のファイトが衝撃となって世に伝わっていったかもしれない。

次に進むは代々木第二競技場。MAXもここで伝説となる第一回トーナメントを開催し、深夜帯にも関わらず好視聴率を記録してみせた。しかも出場選手は日本人だけだった。
K-160kg級にも同様のことができる。

上松、大月、山本元気&真弘、石川、ほかボクシングあがりの渡辺一久や他団体から新日本の石井、そしてHIROYAで例えば8人。いざトーナメント成立。
全日本キックだけでやりきれないことをK-1という大きな傘があれば実現するのなら、業界にとっては大いに望ましいことだ。

事実上全日本キックが担う60kg級の行方も、『Krush』でK-1とタッグを組めているのならばどんどん推進してほしい。
どうせなら、まだ名称が決まっていないK-1の60kg級が『Krush』になってしまえばいいのではないか。
それがキックファンも納得する結論なのではないか。
どうでしょう?いいでしょう!?
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会場に行く前のワクワク感。何が起こるか、どんな結果になるかわからない期待感。それだけ事前に心を込めて臨戦体勢になれる対象の格闘技大会が少なくなってきたと思うのは私だけだろうか。

私なりの歴史を紐解いてみる。
高田vsヒクソン、桜庭vsホイス、ルミナvs宇野、マッハvsトリッグ、エンセンvsフランク・シャムロック、前田vsカレリン、船木vsルッテン、ノゲイラvsサップ、ノゲイラvsミルコ、立嶋vs前田、吉鷹vs大江、90年代のK-1GP、村浜vsホイラー、鈴木秀明vsアタチャイ、小川vsヒョードル、北尾vsオタービオ、などなど。
ざっと思い付くだけ挙げたが、ほとんどが5年以上前である。
最近では、三崎vs秋山、魔裟斗vs佐藤、青木vs宇野が挙がる。

格闘技がメジャー化し、毎月のように地上波テレビ放送されるビッグイベントが定期化された反面、決してマンネリではないが、ルーティンになってしまっている感も否めない。

格闘技黎明期はたしかにどのイベントもお初同然だったし、数もそんなにあるわけではないから、どれも新鮮に映った。

修斗によるVTJ、ブラジルから輸入されたUVF、日本初の金網イベントU-JAPAN、高田ヒクソンのPRIDE、船木ヒクソンのコロシアム2000、小川ガファリのLEGEND、新日本プロレスのアルティメットクラッシュ、猪木軍対K-1軍全面対抗戦のイノキボンバイエ、名古屋でスタートしたDEEP、などなど。取り急ぎここに挙げた大会は実際にかなりの高揚感が開催日が近づくにつれて上がりまくっていた。

これは格闘技イベントにとって相当に重要である。
リングに期待を集めることが成功に直結する。レギュラーで興行を打っているプロモーターには骨の折れる作業だが、これは義務であり生命線なのだ。
だから現存するプロモーターの努力には頭が下がる思いだ。時勢に合わせたマッチメイクやテーマを次から次へと生み出す格闘技界はアイデアの宝庫だ。

そこで昨今の中で極めて際立ち、話題が話題を呼んでいるのが、前田日明主催の『THE OUTSIDER』である。
全国から不良を集めて、リングの上で総合格闘技で競わせる。
中には不良とは縁がない弁護士やサラリーマンもいるのが不思議だが、対不良の更正要員という位置付けなのだろうか。

週刊誌「AERA」で2ページに及ぶ記事にもなったこの大会が、一体どんなものなのか、非常に興味がそそられる。

リングで乱闘、入口に金属探知機、過去4回のディファ大会は全て完売、映画『クローズZEROⅡ』とコラボ、などなど、現場未体験者にとっては幻想が膨らむ一方だ。

そこで『THE OUTSIDER』とは何ぞやか、触れる機会がやってきた。
会場は一気に拡大して、なんと両国国技館である。

久々に、何が起こるか分からない期待満点。
この時代に格闘技界から生まれたサムシングニューをこの目で確認してきます。
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