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K-1 WORLD MAX 2010 〜-63kg Japan Tournament 1st Round〜
2010/5/2@JCBホール



近年稀にみるほどの大きな期待を抱いてJCBホールに赴いた。敢えて新しい戦力へ希望を託したかった。それはK-1が近年スタートさせた“甲子園”シリーズのユース勢。22人中5人もエントリーされていた事実が主催者側からの期待を証明している。結果から言えば、ユース同士の試合もあり、勝った者は3人。だが、期待通りのインパクトを残せたかと言えば、ノーだ。たしかに他にはキック界の顔役やキャリア・実績ある王者たちがひしめく中で、どうしてもユース勢が若さゆえに見劣りしてしまうことは否めない。しかし、若さを武器にしないでどうするんだ?と言いたい。若いから、キャリアが浅いから、実績が少ないからこそ、エネルギッシュな積極ファイトが求められるのではないか?

彼らなりには精いっぱい頑張っているのかもしれないが、残念ながら観る者の心には響いてこなかった。若くて世間を虜にしている活躍をしているアスリートをライバル視するくらいではないと、とてもじゃないがK-1ブランドはまだユースには託せない。


一方でユースアスリートの活躍は目覚ましいものがある。K-1ユースたちは彼らのように世間を相手にするようになってもらいたいのだ。
K-1MAX@JCBホール大会と同日、プロゴルフでは石川遼が“世界最少スコア”の記録でツアー優勝を果たした。19歳である。K-1ではユースだが、今や堂々と日本を代表するジャンルの顔になっている。
バンクーバー五輪で銀メダルを獲得したフィギュアスケートの浅田真央も19歳。その注目度合いは書くまでもない。
高校野球の甲子園で大熱戦を演じた後にプロ野球・楽天に入団したマー君こと田中将大は21歳。エースの一角を担う人気者になっている。
皆、広告キャラクターにも引っ張りだこ。K-1のユースたちは彼らのようになりたくないのか?


同じリングを使用したスポーツのボクシングではご存知亀田三兄弟は上から23歳、21歳、18歳。K-1MAXと同じTBSで試合中継がされている亀田兄弟のように、K-1ユース勢は自分たちが完全主役の番組枠を勝ち取りたくないのか?
テレビ放送が約束されているK-1という世間的浸透度高いイベントに出場していることだけで、その他多くスポーツの同世代アスリートよりも露出環境が恵まれているのだから、会場の観客だけでなく十万〜百万単位の視聴者に己をアピールできるというのに・・・。


特に本稿のテーマを書くきっかけとなったのは才賀紀左衛門だ。人気キャラのファイヤー原田を相手に3ラウンド通してフルマークの完勝ではあったが、この9分間で彼が見せた仕草に拍手を送る者は皆無と言っていいだろう。
実際に原田はグシャグシャ系の選手につき非常にやりにくかったかもしれないが、紀左衛門はこれからキャリアと実績を積んでいかねばならない身分で中途半端な余裕アピールなどする資格はないし、見たくもなかった。そんなことをする暇があったら、もっと全力で相手を倒しにいくべきだし、結果的にKOできなくてもその姿勢が称賛に繋がり、自身の生涯に繋がるというものだ。
紀左衛門は自分自身をビッグマウスキャラに仕立て上げようとしているようだが、リング上では100%目の前の相手に対してまっすぐでないとアスリートとは認められない。


ほかのユース4名からは気持ちが伝わってこなかった。小さい頃から格闘技を始め、実は修行人生を積んできてはいるものの、どこか小さくまとまってしまってはいないか。
例えば、高校野球にあるガムシャラさ、高校サッカーにあるガッツ。打撃系格闘技はもっとそれらの要素を体現しやすいはずだが、どこか淡々と試合をこなす様が若くなくてノレなかったのだ。
“地上最強の高校生”として一時代を築いたキックボクサー・立嶋篤史は当時、ハンパないオーラと色気と感情を試合の度に爆発させていた。時代が立嶋に味方したからなのか? とんでもない、今のほうがよっぽど選手にとっては恵まれている。立嶋が特別だったというのは簡単だが、ならばみんな立嶋を目指さないのか。
魔娑斗に憧れたのなら、もっと魔娑斗を目指そうよ。元気ハツラツな若者らしい姿を見せようよ。魔娑斗のプロデビューは18歳。ユースの彼らよりもみずみずしく可能性を大いに感じさせてくれていた。


地上波テレビ中継でユース勢の試合は番組後半に、一部はダイジェストにされてしまっていたことが、今回の惹きのなさを表している。
7月の8人による決勝では、ユース勢はまだエントリーされないほうがよいし、おそらく選ばれないだろう。選ばれてもせいぜい1つのユース枠か。
若者らしい真摯な積極性と清々しい汗、勝って嬉しく負けて悔しい素直な感情表現・・・下手な虚勢を張らず、競技そのものにどっぷり浸かった姿が観たい。
そうであれば自ずと彼らユース世代の時代がやってくるはずだ。
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