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UFC115のチャック・リデルKO負けを見て溜めていた思いを吐き出します


脳を揺さぶる頭部や顔面への打撃はプロ格闘技には必須であり、誰しも一発も食らわずにキャリアを終えることなど皆無に等しいが、最近この打撃による顕著なダメージ現象が頻発している。と言うより、ファンとしての素人目線で見ても明らかにダメージが蓄積しているだろうという選手が目につく。そんな選手に限って最前線で闘ってきた人気ベテラン選手だったりする。鍛え上げられた生身の肉体が生み出す芸術的感動と隣り合わせで、闘う当事者たちを蝕む危険が同居する格闘技という特殊なジャンルの非情な現実を改めて知る。そして心が痛くなってきた。

UFCの看板ファイターで今なお高い人気のチャック・リデルがまた敗れた。一発のパンチでぐらつき、フィニッシュも一発のカウンターだった。ただし、「え?このパンチで倒れちゃうの?」という本音を抱いた人は少なくないのではないか。
40歳という高齢もあるが、ここ数年のチャックは明らかに倒れやすくなっている。


同じ日に出場したミルコ・クロコップもそうだ。フラッシュダウンで済んだが序盤でパンチを食らい尻餅を着いた。このパンチで?と思ってしまったのは私だけだろうか。


“倒れやすくなった現象”は日本国内では、やはりベテラン選手に多く見受けられる。


引退した武田幸三は晩年、ダウンを喫しない試合がないどころか、前述した選手たちと同様、一発が効いてしまうシーンが続いていた。観ている自分が思わず目を覆ってしまうほどの悲痛さが辛すぎた。


同じキック系の現役では、緒形や村浜の打たれ弱さが目立つ。引退はしたがHAYATOも倒れやすくなっていた。
ダウンはキック系格闘技では一番盛り上がるシーンだが、ダウンの数だけ当人にダメージが加わることになる。


総合では、業界一の立役者・桜庭が見るからに厳しい。グラウンドサブミッション主体の桜庭はパウンドを食らう場面がここ数年で急増した感が強い。HERO'S初戦のスミルノヴァス戦でしこたま食らったパウンド地獄、そして悪夢の秋山戦でも必要以上にグローブとマットに頭部をサンドイッチされた。
見るからに全盛期からほど遠いコンディションの桜庭だが、人気者の宿命か、今なおリングに上がり続ける桜庭を、本人以外に誰が止められようか。
しかし、全盛期を知っているからこそ、現在の桜庭を観るのが辛くて辛くて仕方ない。


UFCに主戦場を移したノゲイラやヴァンダレイ、K-1の生き字引・アーツも明らかなるダメージ者だ。


格闘家のダメージ問題は引き際を考えることに繋がる。


昨年末に引退した魔裟斗の場合。2008年のトーナメントファイナルでは佐藤、キシエンコにそれぞれダウンを喫した。世界最高峰レベルを相手に1日2試合という過酷の極致の代償は計り知れない。日常生活に及ばぬ前に・・・ピークでの引退という選択肢は、魔裟斗本人が明言したように、「一番強いときに、かっこよく辞める」ことである。


“強くてかっこいい”・・・これぞ憧れられる格闘家のベストなイメージ。大好きな選手が弱って敗れる姿なんて見たいはずがない。


観る側のファンの気持ちと闘う本人の意志がイコールになることはないだろうが、強さを追求するという点では同じ方向を向いているはずだ。


長年格闘技を見続けてきたが、厳しくも悲しい現実を目の当たりにする機会急増し、複雑な心境に陥ったコアなマニアの想いでした。
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1件のコメント


  1. by桜井 on 2011年6月8日 @17時10分

    たしかに、もうやめたほうがいいんじゃないかと。