格闘技コラムメディア『STAND』のコラムがSPORAでも読める! STAND代表・シンジニシムラが日米を中心とした世界の格闘技シーンをタイムリーに斬っていきます!
UFC116:LESNAR vs CARWIN
2010/7/3@ネバダ州ラスベガス・MGMグランドガーデンアリーナ
●秋山成勲[3R 4’40” タップアウト ※三角絞め]クリス・レーベン○


日本のファン目線で見れば、ヴァンダレイ戦の消滅でトーンダウンした感は否めなかったが、それは秋山本人も同様だっただろう。そしてすぐさま決まった代役はクリス・レーベン。日本での戦績がないレーベンは日本人からは無名として捉えられ、タイトルに絡むポジションにもおらず、しかも二週間前に試合をしたばかりという不利な条件も重なり、正直に言えば“安パイ”と思われていたかもしれない。秋山にもモチベーションや対策不足の問題はあっただろう。しかしオクタゴンの中ではシビアな現実が映し出される。秋山、タップアウトで敗れる。この瞬間、秋山がUFCで置かれたポジションも分かってしまった。


日本では馴染みがなくとも、レーベンはUFCブレークの火点け企画『THE ULTIMATE FIGHTER』シーズン1でキャラを発揮して一躍人気者になっている。私もTUFシーズン1はDVDで全部観たが、レーベンの存在感は際立っている。
大観衆の後押しもあり、連戦にも関わらずレーベンがホームでリラックスしているように見えた。
それにしてもあんな結末が待っていようとは。レーベンが秋山より“タフ”さで上回っていた。


1ラウンドはテイクダウンやグラウンドを含めトータルで秋山が取った印象だったが、2ラウンドに入ってから見るからにガス欠状態に。秋山もレーベンも同様の消耗度で、パンチを当て合うもダウンには至らない。
それにしても秋山のスタミナ不足は顕著だった。1年の実戦ブランクからか、直前の対戦相手変更によるゲームプランミスか、練習不足なのか、今まで見たことのない姿を露呈してしまった。キャリアを振り返ると3ラウンドに及ぶフルラウンド戦は前回のUFC初戦が初めて。短期決着戦が多かっただけに、スタミナ面での不安は否めない。


秋山とレーベンの決定的な差を感じさせられたのが第3ラウンドでのグラウンド戦。秋山が上にいながらも、レーベンは下からパンチとヒジを休まず放つ。こんなに下から手を出す選手はそうそう見たことがない。勝敗が大きな意味を持つ世界で一番厳しいUFCで生き残っていくためのアグレッシブなマインドがレーベンに染みついている。そう思わせるほどに勝利に対して貪欲な姿勢、負けてなるものかという必死さが伝わってきたシーンだった。


結果的にこの下からの打撃が優勢になった流れで、下から三角締めを極めてみせたレーベン。同じく下から腕を取りに行くシーンも見られたが、試合終了間近のタイミングでしっかりサブミッションを極められることこそ、UFCで長く闘い続けてきたファイターたる所以ではないか。レーベンはMMAファイターだった。


そして秋山である。ヴァンダレイ戦はまた別の機会に実現してもらいたいとことだが、このカードは日本向けであることは明らかだ。ではもし今回、ヴァンダレイ戦が実現したらどんな結果が待っていたのだろうか。
レーベンはヴァンダレイと対戦経験ないが、タイトル戦線を争うミドル級トップランクファイターではない。UFC無敗の王者アンデウソン・シウバが飛び抜ける形で、コンテンダーグループは次の挑戦の機会を目指してひしめき合っている状態。秋山は残念ながら今回の敗戦でまだタイトルを狙える位置にはいないことを証明してしまった。


6試合と言われている秋山とUFCの契約だが、ならばあと4戦はオクタゴンで闘うことが約束されている。
ヒョードルが敗れた今、もはや無敗の絶対王者など存在しない時代、秋山にもこれからの闘い次第=勝利の積み重ね次第で王座挑戦のチャンスはある。
現ミドル級王者のショーグンもUFCデビュー戦はタップアウト負けを喫していた。統一ヘビー級王者になったレスナーもそうだった。
彼ら王者のように秋山がUFCの頂点に立つには、あまりにも高く厚い関所が幾重にも控えているが、日本から、アジアから、MMAのてっぺんを獲る期待を託すことができる選手がなかなかいない現状、秋山は稀少な存在なのである。だからこそ、レーベン戦敗退は痛かった。


早く秋山がUFCになくてはならないポジションを勝ち取ることが先決だ。次がまた1年後にならないようヴァンダレイに拘ることなくコンスタントに闘ってもらいたい。好き嫌い関係なく、なんだかんだ言って秋山の試合を観たいのだ。そう思われているうちにUFCで勝利の実績を築くことが秋山の正しい道である。
[Web全体に公開]
この記事の前後の記事(新着順)
【閲覧中】【UFC】秋山タップアウト負けで再痛感した厚くて高いUFC の壁
2010年07月04日  [Web全体に公開]
・【UFC】MMAヘビー級“新絶対王者”が出るか
2010年07月04日  [Web全体に公開]

1件のコメント


  1. by桜井 on 2011年6月8日 @17時08分

    今回はぬるぬるしてなかったんですね。