特別寄稿 内田暁(ウチダアカツキ)
5月9日 福岡国際女子レポート
「伊達が、昨日の藤原戦に続き元トップ4の力を見せ付けるのか、それとも、中村が“現役の意地”のリベンジを果たすのか?」
様々なドラマ性が交錯し、多くの人々の関心を集めた中村藍子対クルム伊達公子の一戦(福岡国際3回戦)は、中村が6-2、6-2のスコア、試合時間1時間3分でストレート勝ち。「色々なことを考えさせられたし、学ぶことも多かった」という涙の敗戦から、一週間。日本選手三強の一角を成すツアープロは、「完勝」という形で一つの答えを出した。
「とにかく今日は、藍子ちゃんが素晴らしかった。私が何かをやるヒマも無い程に隙が無かった」
この試合後の伊達のコメントが、全てを物語っているだろう。今日の試合にかける中村の意気込みや気迫、決意は、試合の立ち上がりから十二分に見て取ることができた。
第一ゲーム、コイントスに勝った伊達は、前回の対戦時同様サーブを選ぶが、中村は高い集中力でサーブを深く返し、ラリーの主導権を握っていく。特にデュースに入ってからは、フォアのダウン・ザ・ライン、そしてバックのクロス2本という3本連続ウィナーで、伊達のゲームをいきなりブレークする。
そしてこの日、“強い中村”の根幹を成したのは、サーブだ。中村のファーストサーブ成功率は70%を超え、さらにセカンドサーブのバリエーションも豊富。サービスゲームを落としそうな気配すら全く無く、ファーストセットの第二ゲーム、第四ゲームを立て続けにラブゲームでキープした。
そしてこの安定感のあるサーブが、伊達に「ミスは許されない、厳しいところを攻めなくては勝てない」というプレッシャーをかけたのだろう。伊達に連戦の疲れ、そして緒戦で痛めた踵の状態が良くなかったという体調の問題もあったろうが、伊達はやや無理して厳しいところを狙い続け、結果として、多くのアンフォーストエラーを犯した。
また、集中力という点でも、今日の中村は凄まじかった。この日は朝から小雨が降ったため、試合は屋内の体育館で行われた。サーフェスの違いという問題もあるが、何より、すぐ隣のコートでも試合が平行して行われていた為、隣の試合を見ている観客の声援やジャッジの声が間断なく響き、自分の試合に集中するのは極めて難しい環境。にも関わらず中村は、ほぼミスなく1時間3分を攻めきったのだ。
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試合後に中村は、岐阜の伊達戦のショックがあまりに大きく、今回の福岡の出場を見送ろうかというところまで追い詰められていたことを明かした。しかし中村本人も「とても良い経験をしたし、悩んだけれど、今週ここに来て、本当に良かったと思う」と述懐するように、苦境を乗り越えての今回の勝利は、大きな意味を持つはずだ。
なお、来週の久留米の大会に出るかどうかは、現在、全仏OPとランキングの兼ね合いを考え思案中だという。
もし中村が「出場」という決断を下せば、伊達と三度目の対戦が実現するかもしれない。
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