そいつは入門してきた瞬間に、誰が見てもパッと見でわかるくらい



見事なまでの童貞だった



実際、童貞だった



性格も大人しくて気が小さく、見た目も至って普通



だからこんな子はドラゲーでなんて無理だからと、今後の彼の人生のためにもと思い



初日から毎日容赦なく、辞めさせる練習をガンガンやらせたけど辞めなかった



「スクワットやるぞ」



「はい・・・」



オレはこういうとき、それを何回やるとか一切言わない



回数を決めてもいない



すべてはオレが飽きるまで



こんな状況で一緒にやっていると、キリのいい500回や1,000回そこらで終われるもんだと思い込み



501回目(1,001回目)の時に、ほんの0.何秒だけど遅れる場合がある



ようは自分で「どうせ、そんなもんでしょ」と判断して気がゆるむ訳だ



そんなヤツは何人も見てきた



その度に罵倒した



それで辞めてくヤツなんて山ほどいた



ほんの一瞬でもタイミングがズレたり気がゆるんだだけで、命を落とすかもな商売だからこそ、そんなときは容赦なく罵倒した



それで辞めるのなら大いに結構



だけどそいつはその類いで遅れることも、オレに罵倒されることも一切なかった



あんなに童貞臭を漂わせたヤツなのにな



結局スクワットを最高●,000回やった



(リアルな数字を書くと誰も入門してこなくなるので自主規制、現在はこのような非効率的な練習はやっておりません)



次第にそこにいて当たり前的な、そいつは道場の風景の一部になっていた



そんな毎日を過ごしていると「こいつのためなら」と思うようになっている自分がいた



そしてオレは、まだデビュー前のそいつの童貞を捨てさせる段取りを考えていた










気がつくとオレのナニは、ビンビンのカチンコチンになっていた



童貞はお前ちゃうんかい！



やめさしてもらうわ



さぁ、間もなく神戸ワールド記念ホール大会です！



良い席はお早めに！