便所三郎は、柏さんがよく面倒を見た。それは、自分の子供の様に。便所三郎も、柏さんの愛情にこたえようと必死に成長した。しかし、柏さんも人の子だ。サッカーは観たいし、カレーも食べたい、ダビスタだってやりたいんです。柏さんが、少し目を放してダビスタをやっていたら、便所三郎が初めて喋った。「ネグレクト」柏さんは、やっていたダビスタを放り投げて、「もう一回喋ってくれ」といった。しかし、便所三郎は喋ってくれない。今度は、サッカー観戦をしている時に、「ネグレクト、ネグレクト、ネグレクト」今度は、しっかり聞こえた。しかし、柏さんは横文字に弱い。サッカー、カレー、ダビスタ。この三つ以外片仮名語の意味がほとんど解らない。柏さんは、便所三郎が歌でも歌っているのだと思い、「ネグレクト、ネーグレクート。」と歌ってみた。しかし、便所三郎は、ウンともスンとも言わない。業を煮やした柏さんは、キッチンに入りカレーの準備に入った。玉葱が、飴色になった頃、便所三郎が喋りそうになったその瞬間。柏さんは、カレー作りを中断して、便所三郎の口元に耳をあてがった。「馬鹿」大きな声で一言そう言って、便所三郎はふてねした。

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