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Dynamite!! 〜勇気のチカラ 2008〜
2008/12/31 @さいたまスーパーアリーナ



年間最大ボリュームの、番組タイトル通り“格闘技史上最大の祭典”を全編通してライブ体感し、格闘技界にとって数々のことがハッキリした。テレビでは伝わりきらない、ライブだからこそ分かることがあり、しかしそれらは格闘技界の今後を創っていく上で重要なファクターとなる。2008年大晦日、何がハッキリしたのか。大会総評として書いていきたい。

まず、“大晦日の格闘技イベント”はもはや完全に定着したことがハッキリした。
振り返れば2001年に大阪ドームで開催されたプロレス大会(だった)『イノキボンバイエ』から始まった。翌年に同大会が“猪木軍vsK-1”として異種格闘技戦対抗戦となり、TBSで中継されて以来、テレビは7年目である。
最大時の2003年には格闘技バブルと言える地上波テレビ3局が真裏で格闘技中継合戦ということもあったが、テレビではTBSが社を上げて盛り上げ続け、格闘技=大晦日テレビ番組も定着しつつあるだろう。
今回の視聴率は12%台も、かつての紅白一人圧勝時代と比べたら十分健闘している。

そしてテレビ視聴率云々以前に、大晦日に格闘技イベントに足を運び、超満員に膨れ上がるほどのファンがしっかり存在することもハッキリした。
ライブこそ格闘技の命なり。かつてPRIDE時代に高田統括本部長が幾度となく熱弁した“選手、ファン、スタッフによる三位一体の熱”こそ格闘技ライブのかけがえのない価値として完全に根付いたこどがハッキリした。

世間でも大晦日は新年を迎える前の最後の日、コンサートや演劇やパーティーや遊園地など自ら体感して一年のハジケ納めをする傾向は強かった。そこに格闘技イベントはものの見事にハマった。同時に格闘技は音楽をはじめとした一般的に人気あるエンターテイメントと肩を並べたことにもなる。
格闘技はもっともっと自信を持っていい。

その格闘技ライブに熱を持って来るファンのほとんどは、特に今回さいたまでのDynamite!!に来たファンは、MMAファンであることがハッキリした。
もちろんK-1WGPにもK-1MAXにも会場を埋め尽くすファンがいるが明らかに質が違う。
MMAといってもかつてのHERO'Sファンとも違う。
もうこれは疑いようないくらいにハッキリしたのが、会場熱を生み出しているのはPRIDEから続いて来ているファンだということ。
前述した“三位一体の熱”を心の底から理解し原動力となる分子たちが格闘技の過去から現在、そして未来を支えていることを大事に捉えるべきだ。

歓声のボルテージが分かりやすい例だ。
一際高い声援を集めるのは決まって元PRIDE経験ファイターたちだ。
青木、川尻、桜庭、田村、マッハ、ミノワマン。
ムサシ、アリスター、ミルコ、ハント。
ハンセンの欠場アナウンスにはこれ以上ないほどの落胆が響き渡った。
しかし純粋に闘いぶり(&キャラクター?)が認められた選手にはPRIDEファイターと同等ボリュームの歓声が与えられる。
アルバレス、所、柴田。
今回の勝利と試合内容で今後、中村とマヌーフも仲間入りするだろう。
反面、“悪”には容赦なくブーイングを飛ばす。
K-1を台無しにする反則を犯したバダ・ハリや、試合ぶりが不甲斐ない武蔵。同様に秋山へのブーイングも決して冷やかしではない。
リング上のファイターに対して喜怒哀楽をぶつけることができる、それだけリング上をよく観ているファンがPRIDEから育っていることは、日本格闘技にとってかけがえのない財産である。

PRIDEあがりのファンは決して偏狭でも偏見でもない。純粋に格闘技を愛し、夢を追い求めている。
彼らのような“本物のファン”にサポートしてもらうこと、そして育てていくことがハッキリと格闘技界に必要なものである。
プロ野球もJリーグもそう。ならば格闘技にできないわけがない。テレビ環境ではゴールデンタイム中継や大晦日中継と二大プロスポーツよりかえって恵まれているのだから、うわべだけでなく根底をしっかりさせていくことで、選手、試合内容、イベントのムードなど全ての要素が前向きに改善されていくはずだ。

何よりハッキリしたのはリングに上がりリスクを背負いながらも闘いに挑む選手たちの強い意志。
大会サブタイトルの“勇気のチカラ”という言葉では甘すぎるほどにヒリヒリした己の全てを賭けたかのような“気”が伝わってきた。
選手が本気になるには、そのサポーターたるファンがいて、その場を創る主催者スタッフがいる。
PRIDE時代に言われていた至極当たり前の理想形を実践していけば、あるべき格闘技界の姿となる。

以上改めてハッキリしたことで2009年の格闘技界が進む道がハッキリした。
格闘技とは何ぞや。リアルの中リアルを体現していくことが格闘技の使命であり信用である。
リアルな強さに歓声が集中し、ストイックに闘い抜いた選手たちが勝ち名乗りを受けたという現実。
今年はもっともっとシビれる一年になる。
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