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K-1 WORLD MAX 2010 -63kg Japan Tournament FINAL
2010/7/5@代々木第一体育館


5月の開幕戦が期待の高さと裏腹に不完全燃焼に終わった分、この決勝トーナメントが63kg新階級の今後を左右する“二度目の正直”となることは言うまでもなかった。K-1らしさをいかに新しい形で創ってみせるか。KOはもちろんのこと、加えてスピードとキレ、そしてスリリングさが軽量級に求められている要素か。単純に軽量になればその分KO率は低くなるのは仕方ない。しかしK-1の名の下に大会が開催される以上、ダイレクトにマスの世間を相手にすることにもなり、求められるハードルは自ずと高くなる。それを理解した者、そして世間に対して己の存在をアピールしたい者が強い意識を持って臨むリングがK-1なのである。果たして、K-1生誕の地で、前回より遥かに大きい会場で、63kgは大爆発してみせた。K-1の歴史においても奇跡的化学反応を生んだ“神”興行となった。

まず、トーナメントエントリー選手8人全員の意識が伝わってきた。勝つんだ、盛り上げるんだ・・・弛みなく緊張ある攻防が観る者を釘付けにしてくれた。


ダウン、KOが大量発生した。これはK-1の絶対要素。軽量級でなされたことは特筆に値する。
大和vs久保の決勝戦はダウンの応酬、優勝した大和は三戦連続KO勝利、久保は準決勝で鮮烈ハイキックを決めてみせた。
K-1スターの条件はKOアーティストであること。そのポテンシャルは十分に見えた。


戦前の予想を覆すアップセットもあった。かつて“K-1には魔物が棲んでいる”と言われたように、本命が姿を消してしまう事態が起こるから面白い。
上松は顔面を朱に染めながら松本の乱打を浴びて、散った。作られたスターはこの時代に歓迎されない。コアなファンの深層心理が具現化したような気がした。
キックボクシングマニアの想いは打ち砕かれた。石川は才賀紀左衛門に完敗。シビアな現実を教えてくれるのもK-1の役目である。


K-1の理想を体現し尽くした63kg級にかかってくる期待は大きい。初代王者が決まり、次はどうなっていくのか。ここで生まれたK-1新ブランドの可能性を絶やしてはならない。
年内のMAX国内大会はあと一回。まずはそこでワンマッチが組まれていくことになるだろうが、大晦日『Dynamite!!』でも枠の獲得を狙いたい。


出場選手のバリエーションも増えていくだろう。控えている日本人だけでなく、この階級の真の強者・ムエタイや諸外国選手を集め、ワールドクラスになっていくのが本当は健全な発展形だが、どうなっていくのだろうか。


これだけ先に関する可能性を語れること自体が63kg級の成功を表している。
そうそうあるものではない歴史的一夜に立ち会えたことを喜びながら、新たな格闘技の夢が創造されていく過程をしっかり追っていきたい。
素晴らしいトーナメントだった。
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K-1 WORLD MAX 2010 -63kg Japan Tournament FINAL
2010/7/5@代々木第一体育館
直前コラム



ひとりぶっ飛んだ形で口撃先行毒舌トークで際立っているのが唯一のユース出身ベスト8、才賀紀左衛門だ。あれやこれやと、よくこんなにフレーズが出てくるなーと、かえって感心してしまうほどの紀左衛門トークは関西弁が刺々しさを増長させている。正直、5月の開幕戦では紀左衛門は勝利したものの、観る者を満足させたとは言いがたい、かえって不快感すら覚えさせる内容だった。パフォーマンスはいいから真剣に試合に集中しろ!そんなバッシングはどこ吹く風、紀左衛門のビックマウスは石川直生という獲物を前にさらに大きくなってた。が、ひとつだけ、妙に納得できる紀左衛門の言葉があった。「K-1とキックボクシングは違う」・・・ここにK-1MAX-63kgの行方を占うヒントが集約されている。

K-1は立ち技打撃ルールで異種格闘技最強を決めるイベント。創始から月日が経つにつれて、そのコンセプトよりもK-1そのものが競技として成熟してきているが、原点に立ち返れば、K-1はK-1独自ルールの“一般大衆に分かりやすいテレビ格闘技”である。
空手でもキックボクシングでも他ジャンルでも、最大公約数のルールの中で勝敗を競う、改めて見れば実にフェアなイベントなのだ。


だからK-1とキックボクシングは似て非なるもの。キックで認められている首相撲もヒジ打ちもK-1では禁止。だがキックボクシングから見ればキックルールの一部が禁止されただけなのだから、純粋にキックとパンチのスキルで制してしまえばよい、と言いたいところだが、そう簡単にいかないのがK-1。これまで幾多のキックボクサーが鳴り物入りで参戦しては、苦杯を舐めた者多数。
キックボクサーとK-1の相性が必ずしもいいわけではない。つまりはK-1とキックボクシングの違いである。


K-1で勝つにはルールへの適性が求められる。極論すれば、キックボクサーはキックボクシングを捨て、K-1に徹する必要がある。K-1の闘い方を身に付けた者がK-1を制すると断言しよう。


魔裟斗と小比類巻の違いが分かりやすい例だ。佐藤嘉洋や山本優弥はK-1適応の進行形。長島☆自演乙や中島はK-1で結果が出始めている有望株だ。


63kg級ではどうか。必ずしもリングキャリアとは比例しない結果が出ているではないか。
全日本キックやKrushでは敗れてきた上松はK-1では水を得た魚状態でエース的扱いを受けている。キックボクサーから見たら面白くないだろうが、K-1に適応し結果を残しているからこそ、そして今後が期待できるからこその扱いなのだ。


また、K-1ルールとリンクするRISEで揉まれてきた裕樹は前回大会で上松と二人だけ、鮮烈なKOで勝利してみせた。
現状、63kgでポテンシャルを感じさせる結果を残したのは上松と裕樹である。


では紀左衛門と石川直生の場合はどうか。ここに思わぬ落とし穴がある気がしてならない。
リングキャリアでは石川が断然上だが、K-1キャリアとなると紀左衛門が上回るというパラドックス。
キックボクシングで誰もが認める実績を残した石川と、K-1に専念してきた紀左衛門。前回、石川はK-1初ファイトで勝ちはしたもののインパクトを残せなかった。紀左衛門はKOはできなかったものの相手を圧倒した。


勝たねばならない意地とプレッシャー、負けても仕方ないと慰められる若さ。精神的には紀左衛門が有利か。
勝負の行方はゴングが鳴ってからでないと分からないが、紀左衛門がK-1での勝ち方を教えてくれるなら、それはそれで痛快なリアルではないか。
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K-1 WORLD MAX 2010 〜-63kg Japan Tournament 1st Round〜
2010/5/2@JCBホール



近年稀にみるほどの大きな期待を抱いてJCBホールに赴いた。敢えて新しい戦力へ希望を託したかった。それはK-1が近年スタートさせた“甲子園”シリーズのユース勢。22人中5人もエントリーされていた事実が主催者側からの期待を証明している。結果から言えば、ユース同士の試合もあり、勝った者は3人。だが、期待通りのインパクトを残せたかと言えば、ノーだ。たしかに他にはキック界の顔役やキャリア・実績ある王者たちがひしめく中で、どうしてもユース勢が若さゆえに見劣りしてしまうことは否めない。しかし、若さを武器にしないでどうするんだ?と言いたい。若いから、キャリアが浅いから、実績が少ないからこそ、エネルギッシュな積極ファイトが求められるのではないか?

彼らなりには精いっぱい頑張っているのかもしれないが、残念ながら観る者の心には響いてこなかった。若くて世間を虜にしている活躍をしているアスリートをライバル視するくらいではないと、とてもじゃないがK-1ブランドはまだユースには託せない。


一方でユースアスリートの活躍は目覚ましいものがある。K-1ユースたちは彼らのように世間を相手にするようになってもらいたいのだ。
K-1MAX@JCBホール大会と同日、プロゴルフでは石川遼が“世界最少スコア”の記録でツアー優勝を果たした。19歳である。K-1ではユースだが、今や堂々と日本を代表するジャンルの顔になっている。
バンクーバー五輪で銀メダルを獲得したフィギュアスケートの浅田真央も19歳。その注目度合いは書くまでもない。
高校野球の甲子園で大熱戦を演じた後にプロ野球・楽天に入団したマー君こと田中将大は21歳。エースの一角を担う人気者になっている。
皆、広告キャラクターにも引っ張りだこ。K-1のユースたちは彼らのようになりたくないのか?


同じリングを使用したスポーツのボクシングではご存知亀田三兄弟は上から23歳、21歳、18歳。K-1MAXと同じTBSで試合中継がされている亀田兄弟のように、K-1ユース勢は自分たちが完全主役の番組枠を勝ち取りたくないのか?
テレビ放送が約束されているK-1という世間的浸透度高いイベントに出場していることだけで、その他多くスポーツの同世代アスリートよりも露出環境が恵まれているのだから、会場の観客だけでなく十万〜百万単位の視聴者に己をアピールできるというのに・・・。


特に本稿のテーマを書くきっかけとなったのは才賀紀左衛門だ。人気キャラのファイヤー原田を相手に3ラウンド通してフルマークの完勝ではあったが、この9分間で彼が見せた仕草に拍手を送る者は皆無と言っていいだろう。
実際に原田はグシャグシャ系の選手につき非常にやりにくかったかもしれないが、紀左衛門はこれからキャリアと実績を積んでいかねばならない身分で中途半端な余裕アピールなどする資格はないし、見たくもなかった。そんなことをする暇があったら、もっと全力で相手を倒しにいくべきだし、結果的にKOできなくてもその姿勢が称賛に繋がり、自身の生涯に繋がるというものだ。
紀左衛門は自分自身をビッグマウスキャラに仕立て上げようとしているようだが、リング上では100%目の前の相手に対してまっすぐでないとアスリートとは認められない。


ほかのユース4名からは気持ちが伝わってこなかった。小さい頃から格闘技を始め、実は修行人生を積んできてはいるものの、どこか小さくまとまってしまってはいないか。
例えば、高校野球にあるガムシャラさ、高校サッカーにあるガッツ。打撃系格闘技はもっとそれらの要素を体現しやすいはずだが、どこか淡々と試合をこなす様が若くなくてノレなかったのだ。
“地上最強の高校生”として一時代を築いたキックボクサー・立嶋篤史は当時、ハンパないオーラと色気と感情を試合の度に爆発させていた。時代が立嶋に味方したからなのか? とんでもない、今のほうがよっぽど選手にとっては恵まれている。立嶋が特別だったというのは簡単だが、ならばみんな立嶋を目指さないのか。
魔娑斗に憧れたのなら、もっと魔娑斗を目指そうよ。元気ハツラツな若者らしい姿を見せようよ。魔娑斗のプロデビューは18歳。ユースの彼らよりもみずみずしく可能性を大いに感じさせてくれていた。


地上波テレビ中継でユース勢の試合は番組後半に、一部はダイジェストにされてしまっていたことが、今回の惹きのなさを表している。
7月の8人による決勝では、ユース勢はまだエントリーされないほうがよいし、おそらく選ばれないだろう。選ばれてもせいぜい1つのユース枠か。
若者らしい真摯な積極性と清々しい汗、勝って嬉しく負けて悔しい素直な感情表現・・・下手な虚勢を張らず、競技そのものにどっぷり浸かった姿が観たい。
そうであれば自ずと彼らユース世代の時代がやってくるはずだ。
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K-1 WORLD MAX 2010 〜-63kg Japan Tournament 1st Round〜
2010/5/2@JCBホール
直前コラム



大きくて新しい波、到来の予感・・・これまで格闘技の歴史を振り返れば、エポックメーキングな出来事はそのベールを脱ぐ前に尋常なき高揚感を与えてくれる。そしてその後は永遠に語り継がれる対象となる。数々の伝説を創ってきた正道会館からK-1が生まれ、K-1から今回、3つ目のビッグバンがもたらされようとしている。1つ目は1993年4月のK-1GRAND PRIX旗揚げ大会。2つ目は2002年2月のK-1 WORLD MAX開幕の日本代表トーナメント。共に、指折り数えて大会当日を待った。ワクワクドキドキ。この気持ちはとても大事だ。期待感を表す一番分かりやすい表現。そして2010年5月、K-1にとって新たな階級“-63kg”のスタート・・・ハンパないワクワクドキドキ。遂に本格開戦する軽量級カテゴリーがK-1流の味付けで光り輝く新ブランドに映っている。


ジャパニーズオリジナルな“63kg”という一見中途半端な設定も、その数字に自らを合わせて集まる選ばれし22人の顔ぶれを見たらワクワクドキドキ。K-1がメジャーな舞台として国内全てを束ねる以上はK-1流に従わねばならない。
“立技打撃系異種格闘技戦”というK-1の基本コンセプトが具現化された選手のバリエーションがワクワクドキドキ感を生みだしている。
キックボクシング、ムエタイ、空手、テコンドー、MMA、甲子園、高校生、喧嘩・・・キックボクシング団体でこれまで60kg級のトーナメントは何度も行われてきているが、これがK-1だからできる発想と力技。マニアも認め、一般層に働きかける、だから今回の軽量級が戦前から盛り上がっているのだ。


22人、11試合というボリュームの中、ほとんどのキック系トップ選手が顔を並べているが、敢えて注目したいのはMMA代表と甲子園代表だ。彼らがK-1ならではのトーナメントを色付けする存在となっている。


「若いスターを潰す」と一人毒づいて独自の存在感をあらわすDJ.taiki。K-1には総合格闘家や古くはプロレスラーのエッセンスは欠かせない。実力的にもキャラクター的にもまだまだ未知数ののりしろを持つDJが新設トーナメントをかき乱してくれたほうがK-1らしくて面白い。


そして高校生選手と甲子園出場組のユース系が5人も出場する。これは長い目で見たK-1の未来戦略と言えるが、これまでは甲子園の枠組みの中でいたティーンズと卒業生が今回から本格的にプロ選手たちと対等な立場でエントリーしていることがフレッシュではないか。これで彼らのうち一人でも“大人食い”をしようものなら痛快この上ない。


K-1としては初めて使用するJCBホールでチケットはほぼ完売状態。テレビ中継は関東の深夜のみ。このプレミア感、飢餓感の煽り具合がK-1GP、K-1MAXの旗揚げ時とダブる。二度あることが三度あるなら、今回も間違いなくK-1にとってのビッグバンとなるはずだ。
熱戦とKOのサプライズ続出。これがK-1が持ち合わせた稀有なるパワーだった。超満員のJCBホールが尋常ない熱で充満している様子しか思い浮かばない。


日本人が絶対的主役なゆえ、今後もっと世間に浸透する可能性を秘めている“-63kg”はどこを目指していくべきか。
同じリングスポーツのボクシングでは軽量級王者が誕生し、世界戦ワンマッチで地上波テレビ中継が成立しているように、K-1も“ガイジン天国”から脱出し強い日本人選手を全面に押し出したいところ。本来なら世界レベルになればムエタイが強敵になってくるところだが、まだここでは触れておくのをやめておこう。
亀田兄弟や内藤大助、長谷川穂積、ほかボクシングの世界タイトルホルダーのように、魔娑斗や武蔵が引退した後のK-1から世間的知名度ある新しい選手を輩出しなければならない。今回の22人の中から何人がK-1を引っ張る存在になっていくのか。
作られたスターではなく、リング上のファイトで魅せて勝った者がのし上がる。さあ、K-1新時代の幕開けを目撃しよう。
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K-1 WORLD MAX 2010 -70kg Tournament
2010/3/27@さいたまスーパーアリーナ コミュニティアリーナ



K-1の2010年開幕大会がようやく発表された。特筆すべきは、過去2年に渡ってテストケースで実施してきたより軽量の新階級が正式にスタートすること。70kgに次いでトーナメント形式で本格開戦するのは”63kg”。この設定でK-1らしい人選とマッチメイクが期待できる。


MMAのDREAMフェザー級と体重を合わせることで、総合格闘家の参戦がしやすくなる。
”立ち技打撃ルールでの異種格闘技最強決定戦”というK-1本来のコンセプトが蘇ることで、MMAファンの興味を惹き付ける事ができよう。
常に議論になる階級問題もこうしてせめて主催者管轄内で統一していけば選手活用で相乗効果が生まれるはずだ。


だからK-1でもDREAMに合わせた新階級を作っていけばいい。76kg、84kg、93kgと刻んでいけば、それぞれの階級に適した人材の活躍の場が増えることになる。しかし今までそれがなされてこなかったということは商業的にまだ成立しないということか・・・。


話を63kg級に戻すと、早速階級統一効果が出た。思いにもよらなかった組み合わせの異種格闘技戦が実現する。
5月のトーナメント開幕に先立つワンマッチ、


渡辺一久 vs DJ.taiki


キャラも立つ実績者同士の異次元対決はK-1がなせる妙技。
MMAファンは断然DJに注目だ。キックボクシング出場経験もあり、昨年末には長期に渡る現地ムエタイ修行に飛んでいたDJがMMAで白星を重ねてきたパンチがK-1でも炸裂させれば痛快ではないか。
DJにとっては、現状日本ではMMAより世間的認知あるK-1で名前を売るチャンスとなる。


もともと60kg級としてテストを続けて軽量級だが、本来60kgが適正だった選手たちは3kgという実は重いハンデを乗り越える必要が生じるが、こればかりはK-1が決めたルール。K-1に出たければ肉体改造してでも名乗りを上げなければならない。


キックボクサーやキックマニアの中にはK-1新階級に迎合せず、己の道を守り抜く者も出てこよう。それはそれで価値観の相違だから仕方がない。
しかし私はこの新しいムーブメントに現役の最先端を行く日本のキックボクサーは全員参戦してほしいし、K-1本来の刺激要素“異種格闘技戦”が惜しげなく実現してもらいたいと願っている。


魔裟斗というスターが去った後のK-1が進むべく策は“ブランドコンセプトの総力戦”。
MMAがK-1をかき回して“あの頃”のK-1の興奮を今、味わいたい。
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