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DREAM.14
2010/5/29@さいたまスーパーアリーナ
直前コラム



つくづくこの男は笑わない。ある時ふと、ニック・ディアズの笑った姿を見たことがないことに気付いた。気になって”Nick Diaz smile”のワードで検索したら、4枚だけ彼の笑顔を見つけた。 ダナ・ホワイトとのツーショットなんとなくあどけなさが見えるプライベートフォトが2枚、 そしてウィキペディアに貼られた1枚。アメリカでもニック・ディアズが笑う姿を見せるのは貴重だとネット上ではネタになっている。ここまで笑顔を見せないファイターはいない。アスリートたるファイターは強さの反面、物凄く爽やかな笑顔が魅力でもあるが、滅多に笑わないというだけでニック・ディアズは現代のファイターの中で最もファイター然としていると言ったら言い過ぎだろうか。


”最強外敵襲来”・・・まさにそんな表現がハマる、現STRIKEFORCE王者のディアズのDREAM参戦を迎え撃つのは、日本ウェルター級の権威的存在の桜井マッハ。最近の連敗もあり、マッハ不利、の下馬評が勝っているように見える。近年にないほどの決意と覚悟がマッハから伝わってくる。前日軽量では見事なグッドシェイプを披露してみせたマッハに託された大役は、ニック・ディアズを笑わせてみせることだ。


マッハをKOしぶっちぎりでDREAM王者になったザロムスキーに完勝してみせたディアズ。格闘技に三段論法は必ずしも当てはまらなくても、ディアズの強さが比較測定されるのは無理もない。
タッパがあり、リーチがあり、懐が深い。見た目は決してよくないが、何故か当たるパンチ。どうすればディアズを攻略できるのか、過去の試合を見れば見るほどファン目線では頭を悩ませてしまう。体格が劣るからこそマッハは真っ向から打撃で切り込んでいくしかないのでは・・・・・・ファンができることはとにかくマッハを応援することだ。


マッハvsディアズはDREAMの聖地・さいたまスーパーアリーナに初お目見えのヘキサゴンケージのメインイベント。久々に燃える”日米決戦”がこんな形のハッピーエンドを生んでほしい。


自信満々で乗り込んできたディアズをマッハが返り討ち。KOでもタップアウトでもカットでも何でもいい。ケージのトップに駆け上り、咆哮のガッツポーズでアドレナリンを爆発させるマッハの脇で、うなだれるディアズは苦笑い・・・・・・そう、マッハと歓喜を共有しながらも、ディアズの姿をちゃんと追っておこう。


ニック・ディアズの笑顔を拝むにはマッハが勝ってくれるしかない。だから、マッハを応援しよう。世界中のMMAファンが驚くニック・ディアズのレアなスマイルを日本から発信するために。


もしくは試合後のインタビューで、「ニック、あなたは何故笑わないのですか?」と唐突に聞いたら笑ってくれたりしそうな気もする。
マッハに勝ってもらいたいに決まっているが、ニック・ディアズは今最も気になるファイターである。
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DREAM.14
2010/5/29@さいたまスーパーアリーナ
マッハ、所、高谷に加えて桜庭、KIDも参戦決定!



桜井マッハの要望で、ということになっているDREAMのケージ導入第二弾大会だが、ここぞとばかりにDREAMのビッグネームたちの参戦が発表された。青木真也のストライクフォース敗戦を受けて、日本のMMAはリングのままか、ケージにすべきか、という論争が巻き起こり双方の意見がぶつかり合う中で、日本最大メジャープロモーションが踏み込んだ二歩目の金網(DREAM版は厳密に言えば金網素材ではないが)。マッハを盾にしながらもDREAMの本音は金網への移行と見た。それでいいし、それがいいに決まっている。

前回は大阪で実験的に行われたホワイトヘキサゴンケージが首都圏の聖地にやって来る。ヤァ!ヤァ!ヤァ!
マッハ、高谷、所に次いで、桜庭、KIDとDREAMのオールスターを惜し気もなく投入する今大会は金網の光景が新鮮に映りそうだ。
金網初体験のKIDと所が新しい舞台でどんな闘いぶりを見せてくれるのか、金網経験者もしかり。
ここで焦点となるのは、果たして本当に、リングとケージとで闘い方も戦略も変えなければいけないのかということ。ファンとして正直な本音は闘う場所がどちらであろうと、強い者が勝つ。リングだケージだルールだでつべこべ言わんと強さを見せてくれ!と言いたいところだが、実際はそんな甘いもんじゃないことも分かる。
でもはっきりしていることはケージで闘うことは避けられない、ということである。


ひとつのジャンルが根付くとき、そこにはオリジナリティが必要だ。そんなブランディングに長けているアメリカで、MMAは多角形の金網、としてほぼ確立された。アメリカ発世界の流れをUFCが牽引し、今後ますますMMA=多角形金網の認知は広がっていこう。
リングはボクシングかプロレス、MMAはそれらとは別物の新しいスポーツ。リングで行うMMAが世界から見てマイノリティになってしまうなら、ここは潔く世界標準に合わせて、世界レベルで評価されるステージに乗り込むべきである。


青木のストライクフォース敗戦の後遺症がないと言ったら嘘になる。だからこそDREAMが選んだ道がケージだった。そう思ったほうがすっきりする。
あの頃のPRIDEを忘れられないファンは多くいるし、もちろん私もその一人だが、時代は動いている。PRIDEがあったからこそUFCもあり、ストライクフォースもあり、日本ではDREAMがある。リングからケージになるのは発展的かつ必然的な流れである。そう思ってあの頃の“誇り”を胸に現在進行形のMMAを見届けて行くことがPRIDE熱を体感した熱いファンの役目である。


今回を機に、実験から導入に移行しなければならない。最後の金網テストにトップファイターたち自ら挑むことが覚悟の表れだ。
本当はあとひとり、この男も加わって欲しい・・・・・・川尻達也。彼がDREAMの看板なのなら、今回ケージを筆下ろしを済ませ、次の本格期に備えるべきだ。最後の発表を待ちたい。


DREAMのケージ導入を徹底的に推していこうではないか。
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UFC113:MACHIDA vs SHOGUN 2
2010/5/8@カナダ・モントリオール



PRIDEが“消滅”してからもう三年を越える月日が経つが、PRIDEの思い出は熱と共にいつでもプレイバックできる。いまだに身近な格闘技マニアな友人たちとは、気が付けばPRIDE時代のエピソードを交換している。とは言え、もちろん現在進行形である。PRIDEを語る一方でメインの話題は当然ながらUFCだ。WOWOWの放送が終わるやいなや、どちらからともなくメールが飛び交う。そしてその温度はPRIDEファイター出場時に自然と高くなる。今回のショーグン勝利でPRIDEの誇りが甦ったファンは多かったことだろう。

UFCのPRIDE吸収後、PRIDEブランドを体現したトップファイターたちは軒並みオクタゴンに参戦したが、なぜか戦績は振るわなかった。ショーグンもUFC初戦で当時のUFCの申し子・グリフィンにタップアウト負けを喫している。
ミルコもミノタウロもダンヘンもヴァンダレイも、PRIDE時代以上の輝きをまだUFCで放っていない。


PRIDEはUFCより下なのか? 本来ならばファイター同士の競い合いにつき、どちらのプロモーションが上か下かという議論は意味をなさないものだが、少なくとも日本のファンの多くは『PRIDE』をブランドとして大枠で捉え、そして愛していた。だからこそPRIDEファイターの動向に敏感になり、ファイターにPRIDEそのものを投影するのだ。


そこでショーグンである。難攻不落の無敗王者・リョートを僅か1ラウンド、KOでダイレクトリマッチを制し、遂にUFCの頂点に立った。
久々に見た気がするショーグンの爽やかな満面スマイル。PRIDEのピースのひとつになっていたショーグンの笑顔が数年後の現在もなお、新しいベルトと共にもたらされたことを喜びたい。
PRIDEとUFCのグランドスラム達成。PRIDEの魂はショーグンに宿っている。PRIDEファンは堂々とそう思えばいい。ショーグンは現在進行形のPRIDEの象徴だと。


ショーグンが王者になったことで、今後のUFCライトヘビー級戦線が活気づいていく。まだショーグンがUFCで相対していないトップコンテンダーが続々と控えている。
次回大会でランペイジvsエバンズの因縁対決。共に元王者であるため、勝者が次期チャレンジャーとなるのはきれいな流れだ。
生ける伝説のランディ・クートゥアもいる。最近勝ち星には恵まれていないがティト・オーティズとも未対戦。フォレスト・グリフィンへのリベンジもしたいところ。元同門のアンデウソン・シウバとも可能性はあるし、前王者・リョートも黙っていないはず。
ざっとこれだけ書けてしまうほど、ショーグン包囲網の激化が約束されているなんて、UFCはなんて魅力溢れる戦場なんだろう。あの頃のPRIDEがこうだった・・・


PRIDEファンで今もまだPRIDEが忘れられないならば、と言うか忘れ去る必要はないしとても忘れられるものではないが、今に生きるPRIDEを追いかけたければ、UFCでショーグンを徹底的に応援していくべし!・・・なのである。
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K-1 WORLD MAX 2010 〜-63kg Japan Tournament 1st Round〜
2010/5/2@JCBホール



近年稀にみるほどの大きな期待を抱いてJCBホールに赴いた。敢えて新しい戦力へ希望を託したかった。それはK-1が近年スタートさせた“甲子園”シリーズのユース勢。22人中5人もエントリーされていた事実が主催者側からの期待を証明している。結果から言えば、ユース同士の試合もあり、勝った者は3人。だが、期待通りのインパクトを残せたかと言えば、ノーだ。たしかに他にはキック界の顔役やキャリア・実績ある王者たちがひしめく中で、どうしてもユース勢が若さゆえに見劣りしてしまうことは否めない。しかし、若さを武器にしないでどうするんだ?と言いたい。若いから、キャリアが浅いから、実績が少ないからこそ、エネルギッシュな積極ファイトが求められるのではないか?

彼らなりには精いっぱい頑張っているのかもしれないが、残念ながら観る者の心には響いてこなかった。若くて世間を虜にしている活躍をしているアスリートをライバル視するくらいではないと、とてもじゃないがK-1ブランドはまだユースには託せない。


一方でユースアスリートの活躍は目覚ましいものがある。K-1ユースたちは彼らのように世間を相手にするようになってもらいたいのだ。
K-1MAX@JCBホール大会と同日、プロゴルフでは石川遼が“世界最少スコア”の記録でツアー優勝を果たした。19歳である。K-1ではユースだが、今や堂々と日本を代表するジャンルの顔になっている。
バンクーバー五輪で銀メダルを獲得したフィギュアスケートの浅田真央も19歳。その注目度合いは書くまでもない。
高校野球の甲子園で大熱戦を演じた後にプロ野球・楽天に入団したマー君こと田中将大は21歳。エースの一角を担う人気者になっている。
皆、広告キャラクターにも引っ張りだこ。K-1のユースたちは彼らのようになりたくないのか?


同じリングを使用したスポーツのボクシングではご存知亀田三兄弟は上から23歳、21歳、18歳。K-1MAXと同じTBSで試合中継がされている亀田兄弟のように、K-1ユース勢は自分たちが完全主役の番組枠を勝ち取りたくないのか?
テレビ放送が約束されているK-1という世間的浸透度高いイベントに出場していることだけで、その他多くスポーツの同世代アスリートよりも露出環境が恵まれているのだから、会場の観客だけでなく十万〜百万単位の視聴者に己をアピールできるというのに・・・。


特に本稿のテーマを書くきっかけとなったのは才賀紀左衛門だ。人気キャラのファイヤー原田を相手に3ラウンド通してフルマークの完勝ではあったが、この9分間で彼が見せた仕草に拍手を送る者は皆無と言っていいだろう。
実際に原田はグシャグシャ系の選手につき非常にやりにくかったかもしれないが、紀左衛門はこれからキャリアと実績を積んでいかねばならない身分で中途半端な余裕アピールなどする資格はないし、見たくもなかった。そんなことをする暇があったら、もっと全力で相手を倒しにいくべきだし、結果的にKOできなくてもその姿勢が称賛に繋がり、自身の生涯に繋がるというものだ。
紀左衛門は自分自身をビッグマウスキャラに仕立て上げようとしているようだが、リング上では100%目の前の相手に対してまっすぐでないとアスリートとは認められない。


ほかのユース4名からは気持ちが伝わってこなかった。小さい頃から格闘技を始め、実は修行人生を積んできてはいるものの、どこか小さくまとまってしまってはいないか。
例えば、高校野球にあるガムシャラさ、高校サッカーにあるガッツ。打撃系格闘技はもっとそれらの要素を体現しやすいはずだが、どこか淡々と試合をこなす様が若くなくてノレなかったのだ。
“地上最強の高校生”として一時代を築いたキックボクサー・立嶋篤史は当時、ハンパないオーラと色気と感情を試合の度に爆発させていた。時代が立嶋に味方したからなのか? とんでもない、今のほうがよっぽど選手にとっては恵まれている。立嶋が特別だったというのは簡単だが、ならばみんな立嶋を目指さないのか。
魔娑斗に憧れたのなら、もっと魔娑斗を目指そうよ。元気ハツラツな若者らしい姿を見せようよ。魔娑斗のプロデビューは18歳。ユースの彼らよりもみずみずしく可能性を大いに感じさせてくれていた。


地上波テレビ中継でユース勢の試合は番組後半に、一部はダイジェストにされてしまっていたことが、今回の惹きのなさを表している。
7月の8人による決勝では、ユース勢はまだエントリーされないほうがよいし、おそらく選ばれないだろう。選ばれてもせいぜい1つのユース枠か。
若者らしい真摯な積極性と清々しい汗、勝って嬉しく負けて悔しい素直な感情表現・・・下手な虚勢を張らず、競技そのものにどっぷり浸かった姿が観たい。
そうであれば自ずと彼らユース世代の時代がやってくるはずだ。
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K-1 WORLD MAX 2010 〜-63kg Japan Tournament 1st Round〜
2010/5/2@JCBホール
直前コラム



大きくて新しい波、到来の予感・・・これまで格闘技の歴史を振り返れば、エポックメーキングな出来事はそのベールを脱ぐ前に尋常なき高揚感を与えてくれる。そしてその後は永遠に語り継がれる対象となる。数々の伝説を創ってきた正道会館からK-1が生まれ、K-1から今回、3つ目のビッグバンがもたらされようとしている。1つ目は1993年4月のK-1GRAND PRIX旗揚げ大会。2つ目は2002年2月のK-1 WORLD MAX開幕の日本代表トーナメント。共に、指折り数えて大会当日を待った。ワクワクドキドキ。この気持ちはとても大事だ。期待感を表す一番分かりやすい表現。そして2010年5月、K-1にとって新たな階級“-63kg”のスタート・・・ハンパないワクワクドキドキ。遂に本格開戦する軽量級カテゴリーがK-1流の味付けで光り輝く新ブランドに映っている。


ジャパニーズオリジナルな“63kg”という一見中途半端な設定も、その数字に自らを合わせて集まる選ばれし22人の顔ぶれを見たらワクワクドキドキ。K-1がメジャーな舞台として国内全てを束ねる以上はK-1流に従わねばならない。
“立技打撃系異種格闘技戦”というK-1の基本コンセプトが具現化された選手のバリエーションがワクワクドキドキ感を生みだしている。
キックボクシング、ムエタイ、空手、テコンドー、MMA、甲子園、高校生、喧嘩・・・キックボクシング団体でこれまで60kg級のトーナメントは何度も行われてきているが、これがK-1だからできる発想と力技。マニアも認め、一般層に働きかける、だから今回の軽量級が戦前から盛り上がっているのだ。


22人、11試合というボリュームの中、ほとんどのキック系トップ選手が顔を並べているが、敢えて注目したいのはMMA代表と甲子園代表だ。彼らがK-1ならではのトーナメントを色付けする存在となっている。


「若いスターを潰す」と一人毒づいて独自の存在感をあらわすDJ.taiki。K-1には総合格闘家や古くはプロレスラーのエッセンスは欠かせない。実力的にもキャラクター的にもまだまだ未知数ののりしろを持つDJが新設トーナメントをかき乱してくれたほうがK-1らしくて面白い。


そして高校生選手と甲子園出場組のユース系が5人も出場する。これは長い目で見たK-1の未来戦略と言えるが、これまでは甲子園の枠組みの中でいたティーンズと卒業生が今回から本格的にプロ選手たちと対等な立場でエントリーしていることがフレッシュではないか。これで彼らのうち一人でも“大人食い”をしようものなら痛快この上ない。


K-1としては初めて使用するJCBホールでチケットはほぼ完売状態。テレビ中継は関東の深夜のみ。このプレミア感、飢餓感の煽り具合がK-1GP、K-1MAXの旗揚げ時とダブる。二度あることが三度あるなら、今回も間違いなくK-1にとってのビッグバンとなるはずだ。
熱戦とKOのサプライズ続出。これがK-1が持ち合わせた稀有なるパワーだった。超満員のJCBホールが尋常ない熱で充満している様子しか思い浮かばない。


日本人が絶対的主役なゆえ、今後もっと世間に浸透する可能性を秘めている“-63kg”はどこを目指していくべきか。
同じリングスポーツのボクシングでは軽量級王者が誕生し、世界戦ワンマッチで地上波テレビ中継が成立しているように、K-1も“ガイジン天国”から脱出し強い日本人選手を全面に押し出したいところ。本来なら世界レベルになればムエタイが強敵になってくるところだが、まだここでは触れておくのをやめておこう。
亀田兄弟や内藤大助、長谷川穂積、ほかボクシングの世界タイトルホルダーのように、魔娑斗や武蔵が引退した後のK-1から世間的知名度ある新しい選手を輩出しなければならない。今回の22人の中から何人がK-1を引っ張る存在になっていくのか。
作られたスターではなく、リング上のファイトで魅せて勝った者がのし上がる。さあ、K-1新時代の幕開けを目撃しよう。
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