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DREAM.15
2010/7/10@さいたまスーパーアリーナ



これまで全てのDREAM興行の中で今回が最も会場の雰囲気よく盛り上がったのではないか。登場する選手への歓声と拍手、勝者への称賛、敗者へのエール・・・DREAMという空間自体に対してリスペクトに満ちていた。格闘技会場にあるべきテンションの高さを牽引したのは当然ながらメインのライト級チャンピオンシップ。まさか、こんな結末が待っていようとは、青木が前日会見で予告した“衝撃”が正夢となり、納得のエンディングとなった。


グラウンドで下位置になった瞬間に青木が捉えた川尻の足首。掴んで離さぬこと1分以上、逃れられぬまま経過した1分以上、観ている方にもがっちり感が分かる完全ロックのアキレス腱固め。
耐えに耐えた川尻だったが選ぶ道はタップしかなかった。


青木のセコンド仲間の北岡が五味に極めた同じ技を思い出す。
プロレス界で一世を風靡した技が四半世紀の時を経てなお、現代MMAのフィニッシュホールドとして生き続けていることに感慨無量でもあり。
“Uの魂、ここに健在なり!”・・・Uから発展してきた日本総合格闘技界の歴史と成り立ちの意味を知る心の体現者として青木を見てしまうオールドファンの気持ちを許してほしい。


これでライト級日本最強が決まった。
青木自ら高らかに宣言したが、次なる目標は日本代表としてアメリカに挑むこと。まずはStrikeforceへのリベンジが急務だ。日本のファン皆が望んでいる。


負傷具合が心配だが川尻も対アメリカに乗り込んでいってもらわなければならない戦力だ。だがその前に菊野や廣田、北岡との次なる日本代表決定戦は避けられない。


PRIDE終焉を青木が宣言し、DREAMも最大テーマの決着をみて一区切り。
やはりアメリカを視野に入れた日本格闘技界の底上げをしていかねば意味がない。
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DREAM.14
2010/5/29@さいたまスーパーアリーナ
裏メイン:DJ.taiki vs 石田光洋の注目は”塩漬け”


青木vs川尻という現状考えうる圧倒的メインの切り札カードに加えて、誰も予想しえなかった興味満点の意外マッチメイクが発表された。最近顕著な階級変更の波に乗った選手がまたひとり。念願の王座に挑む川尻に花を添える形で久々のリングに臨む盟友・石田光洋のフェザー級転向は賢明な判断と言えよう。対するは会見二日前、試合の10日前という直前オファーを受けたDJ.taiki。K-1MAX連戦により実は今年初のMMA出場となるDJが不利と言われる中、応援せずにはいられなくなるほどDJが面白すぎる。

仕込みの準備かできなくてコスプレできず、それでも『ケイオン』のネクタイで小さくアピールしたDJ。
何より面白かったのはDJが発したコメントだった。


まるで一部マニアなファンの意見を代弁してくれているかのように、対戦相手のファイトスタイルを“塩漬け”呼ばわり。公の場で、ここまではっきりと“塩漬け”という言葉を使った選手はDJが初めてではないだろうか。“手堅い”や“ディフェンシブ”のようにオブラートに包まず、ズバリ、“塩漬け”。
このストレート発言でDJに肩入れしたくなるファンはそれなりにいるのではないか。


なかなか専門誌でさえもインタビューの機会が多くないDJ.taikiだが、話せば話すほど深く、ネタ豊富で、面白い人物である。
確固とした考え、明確な目標、自分の言葉を持つ。本音の言葉がストレートだからこそ意志がダイレクトに伝わる。それでいいじゃないか。
格闘技を稼業とする男の訴えはもっと業界に、そして世間に届かなければならない。


“塩漬け”にされないためDJの秘策とは何か。石田とて決意を新たに階級変更した第二のデビュー戦。両者とも死に物狂いだ。こんなシビアなマッチメイクこそDREAMが成せる業。
この試合の焦点は“塩漬け”。漬けるか漬けさせないか。必死な攻防が約束されている、今大会の裏メインである。
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K-1 WORLD MAX 2010 -63kg Japan Tournament FINAL
2010/7/5@代々木第一体育館


5月の開幕戦が期待の高さと裏腹に不完全燃焼に終わった分、この決勝トーナメントが63kg新階級の今後を左右する“二度目の正直”となることは言うまでもなかった。K-1らしさをいかに新しい形で創ってみせるか。KOはもちろんのこと、加えてスピードとキレ、そしてスリリングさが軽量級に求められている要素か。単純に軽量になればその分KO率は低くなるのは仕方ない。しかしK-1の名の下に大会が開催される以上、ダイレクトにマスの世間を相手にすることにもなり、求められるハードルは自ずと高くなる。それを理解した者、そして世間に対して己の存在をアピールしたい者が強い意識を持って臨むリングがK-1なのである。果たして、K-1生誕の地で、前回より遥かに大きい会場で、63kgは大爆発してみせた。K-1の歴史においても奇跡的化学反応を生んだ“神”興行となった。

まず、トーナメントエントリー選手8人全員の意識が伝わってきた。勝つんだ、盛り上げるんだ・・・弛みなく緊張ある攻防が観る者を釘付けにしてくれた。


ダウン、KOが大量発生した。これはK-1の絶対要素。軽量級でなされたことは特筆に値する。
大和vs久保の決勝戦はダウンの応酬、優勝した大和は三戦連続KO勝利、久保は準決勝で鮮烈ハイキックを決めてみせた。
K-1スターの条件はKOアーティストであること。そのポテンシャルは十分に見えた。


戦前の予想を覆すアップセットもあった。かつて“K-1には魔物が棲んでいる”と言われたように、本命が姿を消してしまう事態が起こるから面白い。
上松は顔面を朱に染めながら松本の乱打を浴びて、散った。作られたスターはこの時代に歓迎されない。コアなファンの深層心理が具現化したような気がした。
キックボクシングマニアの想いは打ち砕かれた。石川は才賀紀左衛門に完敗。シビアな現実を教えてくれるのもK-1の役目である。


K-1の理想を体現し尽くした63kg級にかかってくる期待は大きい。初代王者が決まり、次はどうなっていくのか。ここで生まれたK-1新ブランドの可能性を絶やしてはならない。
年内のMAX国内大会はあと一回。まずはそこでワンマッチが組まれていくことになるだろうが、大晦日『Dynamite!!』でも枠の獲得を狙いたい。


出場選手のバリエーションも増えていくだろう。控えている日本人だけでなく、この階級の真の強者・ムエタイや諸外国選手を集め、ワールドクラスになっていくのが本当は健全な発展形だが、どうなっていくのだろうか。


これだけ先に関する可能性を語れること自体が63kg級の成功を表している。
そうそうあるものではない歴史的一夜に立ち会えたことを喜びながら、新たな格闘技の夢が創造されていく過程をしっかり追っていきたい。
素晴らしいトーナメントだった。
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K-1 WORLD MAX 2010 -63kg Japan Tournament FINAL
2010/7/5@代々木第一体育館
直前コラム



ひとりぶっ飛んだ形で口撃先行毒舌トークで際立っているのが唯一のユース出身ベスト8、才賀紀左衛門だ。あれやこれやと、よくこんなにフレーズが出てくるなーと、かえって感心してしまうほどの紀左衛門トークは関西弁が刺々しさを増長させている。正直、5月の開幕戦では紀左衛門は勝利したものの、観る者を満足させたとは言いがたい、かえって不快感すら覚えさせる内容だった。パフォーマンスはいいから真剣に試合に集中しろ!そんなバッシングはどこ吹く風、紀左衛門のビックマウスは石川直生という獲物を前にさらに大きくなってた。が、ひとつだけ、妙に納得できる紀左衛門の言葉があった。「K-1とキックボクシングは違う」・・・ここにK-1MAX-63kgの行方を占うヒントが集約されている。

K-1は立ち技打撃ルールで異種格闘技最強を決めるイベント。創始から月日が経つにつれて、そのコンセプトよりもK-1そのものが競技として成熟してきているが、原点に立ち返れば、K-1はK-1独自ルールの“一般大衆に分かりやすいテレビ格闘技”である。
空手でもキックボクシングでも他ジャンルでも、最大公約数のルールの中で勝敗を競う、改めて見れば実にフェアなイベントなのだ。


だからK-1とキックボクシングは似て非なるもの。キックで認められている首相撲もヒジ打ちもK-1では禁止。だがキックボクシングから見ればキックルールの一部が禁止されただけなのだから、純粋にキックとパンチのスキルで制してしまえばよい、と言いたいところだが、そう簡単にいかないのがK-1。これまで幾多のキックボクサーが鳴り物入りで参戦しては、苦杯を舐めた者多数。
キックボクサーとK-1の相性が必ずしもいいわけではない。つまりはK-1とキックボクシングの違いである。


K-1で勝つにはルールへの適性が求められる。極論すれば、キックボクサーはキックボクシングを捨て、K-1に徹する必要がある。K-1の闘い方を身に付けた者がK-1を制すると断言しよう。


魔裟斗と小比類巻の違いが分かりやすい例だ。佐藤嘉洋や山本優弥はK-1適応の進行形。長島☆自演乙や中島はK-1で結果が出始めている有望株だ。


63kg級ではどうか。必ずしもリングキャリアとは比例しない結果が出ているではないか。
全日本キックやKrushでは敗れてきた上松はK-1では水を得た魚状態でエース的扱いを受けている。キックボクサーから見たら面白くないだろうが、K-1に適応し結果を残しているからこそ、そして今後が期待できるからこその扱いなのだ。


また、K-1ルールとリンクするRISEで揉まれてきた裕樹は前回大会で上松と二人だけ、鮮烈なKOで勝利してみせた。
現状、63kgでポテンシャルを感じさせる結果を残したのは上松と裕樹である。


では紀左衛門と石川直生の場合はどうか。ここに思わぬ落とし穴がある気がしてならない。
リングキャリアでは石川が断然上だが、K-1キャリアとなると紀左衛門が上回るというパラドックス。
キックボクシングで誰もが認める実績を残した石川と、K-1に専念してきた紀左衛門。前回、石川はK-1初ファイトで勝ちはしたもののインパクトを残せなかった。紀左衛門はKOはできなかったものの相手を圧倒した。


勝たねばならない意地とプレッシャー、負けても仕方ないと慰められる若さ。精神的には紀左衛門が有利か。
勝負の行方はゴングが鳴ってからでないと分からないが、紀左衛門がK-1での勝ち方を教えてくれるなら、それはそれで痛快なリアルではないか。
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UFC116:LESNAR vs CARWIN
2010/7/3@ネバダ州ラスベガス・MGMグランドガーデンアリーナ
●秋山成勲[3R 4’40” タップアウト ※三角絞め]クリス・レーベン○


日本のファン目線で見れば、ヴァンダレイ戦の消滅でトーンダウンした感は否めなかったが、それは秋山本人も同様だっただろう。そしてすぐさま決まった代役はクリス・レーベン。日本での戦績がないレーベンは日本人からは無名として捉えられ、タイトルに絡むポジションにもおらず、しかも二週間前に試合をしたばかりという不利な条件も重なり、正直に言えば“安パイ”と思われていたかもしれない。秋山にもモチベーションや対策不足の問題はあっただろう。しかしオクタゴンの中ではシビアな現実が映し出される。秋山、タップアウトで敗れる。この瞬間、秋山がUFCで置かれたポジションも分かってしまった。


日本では馴染みがなくとも、レーベンはUFCブレークの火点け企画『THE ULTIMATE FIGHTER』シーズン1でキャラを発揮して一躍人気者になっている。私もTUFシーズン1はDVDで全部観たが、レーベンの存在感は際立っている。
大観衆の後押しもあり、連戦にも関わらずレーベンがホームでリラックスしているように見えた。
それにしてもあんな結末が待っていようとは。レーベンが秋山より“タフ”さで上回っていた。


1ラウンドはテイクダウンやグラウンドを含めトータルで秋山が取った印象だったが、2ラウンドに入ってから見るからにガス欠状態に。秋山もレーベンも同様の消耗度で、パンチを当て合うもダウンには至らない。
それにしても秋山のスタミナ不足は顕著だった。1年の実戦ブランクからか、直前の対戦相手変更によるゲームプランミスか、練習不足なのか、今まで見たことのない姿を露呈してしまった。キャリアを振り返ると3ラウンドに及ぶフルラウンド戦は前回のUFC初戦が初めて。短期決着戦が多かっただけに、スタミナ面での不安は否めない。


秋山とレーベンの決定的な差を感じさせられたのが第3ラウンドでのグラウンド戦。秋山が上にいながらも、レーベンは下からパンチとヒジを休まず放つ。こんなに下から手を出す選手はそうそう見たことがない。勝敗が大きな意味を持つ世界で一番厳しいUFCで生き残っていくためのアグレッシブなマインドがレーベンに染みついている。そう思わせるほどに勝利に対して貪欲な姿勢、負けてなるものかという必死さが伝わってきたシーンだった。


結果的にこの下からの打撃が優勢になった流れで、下から三角締めを極めてみせたレーベン。同じく下から腕を取りに行くシーンも見られたが、試合終了間近のタイミングでしっかりサブミッションを極められることこそ、UFCで長く闘い続けてきたファイターたる所以ではないか。レーベンはMMAファイターだった。


そして秋山である。ヴァンダレイ戦はまた別の機会に実現してもらいたいとことだが、このカードは日本向けであることは明らかだ。ではもし今回、ヴァンダレイ戦が実現したらどんな結果が待っていたのだろうか。
レーベンはヴァンダレイと対戦経験ないが、タイトル戦線を争うミドル級トップランクファイターではない。UFC無敗の王者アンデウソン・シウバが飛び抜ける形で、コンテンダーグループは次の挑戦の機会を目指してひしめき合っている状態。秋山は残念ながら今回の敗戦でまだタイトルを狙える位置にはいないことを証明してしまった。


6試合と言われている秋山とUFCの契約だが、ならばあと4戦はオクタゴンで闘うことが約束されている。
ヒョードルが敗れた今、もはや無敗の絶対王者など存在しない時代、秋山にもこれからの闘い次第=勝利の積み重ね次第で王座挑戦のチャンスはある。
現ミドル級王者のショーグンもUFCデビュー戦はタップアウト負けを喫していた。統一ヘビー級王者になったレスナーもそうだった。
彼ら王者のように秋山がUFCの頂点に立つには、あまりにも高く厚い関所が幾重にも控えているが、日本から、アジアから、MMAのてっぺんを獲る期待を託すことができる選手がなかなかいない現状、秋山は稀少な存在なのである。だからこそ、レーベン戦敗退は痛かった。


早く秋山がUFCになくてはならないポジションを勝ち取ることが先決だ。次がまた1年後にならないようヴァンダレイに拘ることなくコンスタントに闘ってもらいたい。好き嫌い関係なく、なんだかんだ言って秋山の試合を観たいのだ。そう思われているうちにUFCで勝利の実績を築くことが秋山の正しい道である。
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