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UFC 91: COUTURE vs LESNAR
2008/11/15@ラスベガス・MGMグランド



45歳のアメリカンピープルズヒーロー、ランディ・クートゥアをスタンディングオベーションで歓迎するオーディエンスの熱狂ぶりがテレビ画面から十分に伝わってきた。現場では段違いのボルテージなんだろう。嫉妬にも似た羨ましい気持ちで、一瞬たりとも一部始終を見逃すまいとテレビの前に姿勢正して陣取った。

メタリカの「エンターサンドマンで入場したレスナー。クートゥアはエアロスミスの「バック・イン・ザ・サドル」。この分かりやすい選曲がこの対決の分かりやすさとメジャー感を表しているようだ。
鍛え上げた肉体を観客に披露しながらフィールドは違えど数々の修羅場をくぐり抜けてきた両者の佇まいから極上の雰囲気が漂う。

心なしかクートゥアが少々“しぼんで”見えた。
45歳の生ける伝説に、1年3ヶ月のブランクは大きかっか、シルビアやゴンザガを圧倒した頃の肉体だけでなくアクションの勢いも披露できるのか、少々不安になった。

クートゥアが小さく見えてしまうほどレスナーはでかくて分厚かった。レスナーに飛ぶブーイングは“異ジャンル”からやってきた元WWEスーパースターへのお約束行事か、英雄クートゥアへの判官贔屓の裏返しか、ヒール的オーラを発したレスナーはWWE時代より魅力的に映る。

テレビ画面を見ているだけで、やっぱり、何だか、物凄い高揚感。これがUFCの今である。

フェンス際のスタンド差し合い攻防でクートゥアは決して負けていなかった。しかしパワーの差は歴然、いかんともしがたかった。
グラウンドでは下ポジションを強いられたがパウンドにも極めにも至らせず凌いだ。
1ラウンドを終えたクートゥアを大多数の声援が温かく包み込む。

次の回で、半ば強引に、力ずくにクートゥア復帰戦の幕が閉じられた。
13センチのリーチ差、20kgの体重差、体積の差を計算すると一体どのくらいになるのだろう、圧倒的にフィジカル優位なレスナーがパワーでねじ伏せてしまった。

側頭部を捕えたパンチに崩れ落ちたクートゥア。すかさず豪快なパウンド・・・というよりも細かいパンチの速射砲。それでも十分にスーパーヘビー級の威力だったのだろうが。
さすがに返しようのないクートゥアを救うにはレスナーをストップするしかレフェリーの手立てはなし。

何とも表現しようのない静寂。まさかの現実を受け入れるために思考回路を整理する時間を要するエアポケットにはまったかのよう。
世紀の大勝利を成し遂げて己を誇示する新王者レスナーの脇から起き上がったクートゥアの姿を観て、ようやく会場全体が我に返ったかのように敗者の存在を確認し、万雷の拍手で讃えた。
しかしこの瞬間からUFCヘビー級戦線は新たな局面に突入することになる。

わずかMMA4戦目でトップに君臨することになったレスナーを軸にして、UFC内だけでも一気にマッチメイクの幅が急拡大する。
年末大会でホドリゴ・ノゲイラとブランク・ミアの間で争われる同級暫定王者決定戦の勝者ともれなく統一戦が行われることになる。
レスナーにとって、ノゲイラなら初対決、ミアならUFCデビュー戦のリベンジマッチとなる。

ヘビー級第二軍にもレスナー絡みとなればフレッシュなチャンスが訪れる。
ナパオン・ゴンザガ、ファブリシオ、コンゴ、そして日本のファンにはここでミルコに再浮上して食い込んでもらいたいだろう。
もちろん今回は敗れたものの、クートゥアがノゲイラやミアと並んで群雄割拠状態にしてほしい。

そしてUFC外のプロモーションに視点を広げれば、当然ながら絶対的なゴールに行き着く。
エメリヤーエンコ・ヒョードル。
当初はクートゥアのモチベーション対象だったヒョードルがこの結果により自ずと新たな究極カードに向かって進むことになる。

レスナーvsヒョードル。
誰が予想したかこのカード。でもここに挙げてみると、クートゥア戦に輪をかけてファンタスティックではないか。
レスナーの巨漢突進をヒョードルはさばくことができるのか。ヒョードルがレスナーをパンチで倒しサブミッションを極めてみせることができるのか。レスナーの上からのパウンドがクートゥア同様ヒョードルをも叩きのめしてしまうのか、ヒョードルがするりと下から逆十字を極めるのか。
思い描く全ての攻防がファンタジーである。

レスナーの戴冠はUFCのさらなる飛躍に繋がるはずだ。一方で敗れたクートゥアがここでリセットされてしまうわけではなく、復活ロードには意味あるお膳立てがされるだろうし、意義ある相手が選出されるはずだ。
どちらもUFCブランドの中枢を担う、あくまでもリアルな最高峰のファイトとしてもたらされるものとなる。

変動し続けるUFCにもはや敵うものはいない。
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カード発表時点からワクワク感がハンパない、アメリカンメジャーな顔合わせに太刀打ちできるものが他にあるのか!?と感服させられてしまう一騎討ちがいよいよ現実のものになりますね。

クートゥアか、レスナーか、私個人的にはランディに健在ぶりを見せてもらいたいですが、レスナーのあの巨体にしてあのスピードの炸裂ぶりにも期待したいと、ほんとファンタジー溢れながらリアルな強さを目の前当たりにできるというのがたまりません。
何度も何度も言っていますが、UFC恐るべしです。

各ネット、携帯サイトの結果速報を全てシャットアウトして、今夜23時50分からのWOWOW中継で衝撃を目撃しましょう!
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11月3日のプロ格闘家転向正式表明以来、連日メディアに露出しまくっていますね。

中には情報解禁前の取材もあり、やはり現役五輪金メダリストの価値が世間に対して大きいことを改めて知ることになりました。

久しく世間の話題に薄くなりかけていた格闘技業界にとって、今回の石井効果はまたとないチャンス。
石井の露出に合わせて一気に話題を畳み掛けたいところですが・・・まだ大晦日カードは一つも発表されていません。

もったいないと思う反面、実はとんでもない隠し玉が暖められているのか・・・

朝青龍が今場所を休場します。
彼もまた、もし格闘技に転向しようものならこれ以上のインパクトはありません。砲丸投げの室伏、ハンドボールの宮崎、フェンシングの太田・・・一発花火ではなく、ちゃんと格闘技仕様に鍛え上げたら世間に伝わるビッグネームがゴロゴロいますね。

キン肉マン世代からの永遠の夢、究極の格闘技オリンピック実現には、まず今回の石井が実績を作っていくことからですね。

ということで、最近は石井のメディアチェックに余念がない私でした。
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強行スケジュールでハワイ弾丸ツアーをしてきました。といっても3泊5日。普通ですね(笑)

さて、ハワイで格闘技と言えば誰を、何を思い浮かべるでしょうか。
日本人にとって最も身近な外国のリゾート地であるハワイでは、毎年夏休みの時期に合わせるようにK-1がWGPシリーズの大会を開催しています。
今年はハワイ出身の元横綱・曙がプロモーターとなっていました。
そう、これまではハワイと言えば、曙、武蔵丸、小錦に代表される相撲のイメージが強かったかもしれません。

しかし忘れてはならないのは、やはりというべきか、MMAです。
ハワイでのMMAの歴史は長く、黎明期は修斗公式戦が現地大会の「SUPER BRAWL」で行われて、以降ローカルの大会が実はコンスタントに行われてきています。

今回現地のブックスタンドで発見した格闘技専門誌のタイトルは「MMA HAWAII」。中身を見るとハワイの大会や選手に特化され、メジャー級選手のハワイ訪問時の様子などもあり。
mmahawaii.comのウェブサイトもあるので興味ある方は覗いてみては。

アメリカ本土でのMMA隆盛はハワイにも及んでいるようで、格闘技をモチーフにしたアパレルブランドの世間への浸透が目につきました。

UFCのオフィシャルスポンサーでもある老舗ブランド「TAPOUT」は全米でポピュラーなスニーカーショップ「Footlocker」に大きなコーナーを設けてラインナップ展開しているほど。
今回の滞在中ホノルルの街角で何人のTAPOUT着用者を見たことか。

で、本稿の主役・BJペンについて。
サーフショップの店頭にBJ・ペンのシグネチャーモデルのTシャツやキャップがコーナー陳列されているではないか。サーフブランド「RVCA」によるコラボモデル。
これはいい記念と、商品を購入しようとレジに行くと、
「オー!BJペン!彼は最高だね!」
とリアクション。しばしBJ話で盛り上がりました。

で、別のロックアパレルショップでは、格闘技アパレルブランドの「CAGE FIGHTER」が置かれ、BJとチャック・リデルのシグネチャーモデルが。
ここでもBJモデルを選び、レジに持っていくと、前と同じ大きなリアクション再び。
「BJはみんな好きだよ、グレートだ!」

MMAの普及に合わせて、その最高峰・UFCの頂点に立つBJ・ペンの存在が地元で讃えられる。これは実にナチュラルな広がり方だし、いい形ではないか。

来年1月のUFC第一弾でジョルジュ・サンピエールとの再戦が決まっているBJ・ペンへの熱がハワイから全米に伝わり全世界へ。
そんなハワイのMMAの源泉を垣間見してきたのでした。
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UFC89
2008/10/18@イギリス・バーミンガム



結果速報をシャットアウトしてテレビの前に座る。日曜日の24時。しばしのイントロダクションの間随所に使用されていたPRIDEの映像にちょっぴり感慨。UFCがPRIDEの映像権を掌握しているからこそできる業であり、今後日本のテレビ放送でPRIDE映像を垣間見る機会はWOWOWでしかないということ。やはりUFCにMMAの最高峰が詰まっているなあと感服していると、中継のオープニングマッチが我々日本人にとってのメインイベントではないか。我らが郷野の登場。UFC中継再開に際してWOWOWの掴みはグッドだった。

イギリスで開催されたUFC89では地元選手の起用が多かったが、それは当然の施策。
郷野の相手、ダン・ハーディーはホームの声援を浴びて優位な心境にあっただろう。
アウェイの郷野は臆することなく久々に“アゲアゲ”なパフォーマンスでかなりの時間をかけて入場。日本ならもれなくステージと花道があるゆえに分かりやすい演出も、UFCでは舞台装飾なく通路上。そんな悪状況に対する工夫はセキュリティスタッフを巻き込んでの踊り。郷野により日本の固定観念が変わるのなら素晴らしいことではないか。

詰め寄るハーディーに対しバックステップとカウンターパンチで応戦する郷野。ひとつひとつの攻撃が無駄なく居合い斬りの如く緊張の中を一閃する。上背のあるハーディーのほうが時折大きく映り、明確な優劣はつかぬも、印象点をとった感じも受けた。

こめかみのあたりから出血した郷野だが致命的ダメージは受けておらず、ハーディーのバックスピンキックに同じ技で返す神経戦も忘れていない。

判定ポイントの明暗を分けてしまったかもしれないのは郷野の反則ヒザ蹴り。片ヒザをついているとグラウンド状態とみなされ、そこへの打撃攻撃は反則とされる。この細かいルールを郷野が理解していたか否か、いずれにせよ明確なルールのもとMMAというスポーツの競い合いとしてUFCが成り立っていることを再確認させてくれる厳格なジャッジングだった。

最終ラウンドでグラウンド状態に持ち込んだ郷野だが極めには至らず。ただしこのグラウンド時間がもっと長く、しかも郷野がコントロールできていたなら勝敗の行方は変わっていただろう。

判定はスプリットでハーディー。試合直後、郷野は自身のブログで悔しさを露にしたが、どちらに票が転んでもおかしくない接戦だった。
そしてオクタゴンの中での攻防はスポーティーな爽快さを覚えさせてくれた。

もはやUFCが総合格闘技の世界最高峰・メジャーリーグであることは揺るぎない現実である。
次々と新たな人材がUFCのオクタゴンに入り、新たな衝撃を見せ、己の名を売る。
PRIDEの晩年に急浮上したソクジュがUFCでは大苦戦。この日もまさかのTKO敗戦。しかし、まさかと思っているのはPRIDEを通じ選手に思い入れを抱いている我々日本人だけかもしれない。

真の“世界”に挑む日本人ファイターよ、もっともっと出てこい。
こんな不況のご時世だからこそ、気持ちで勝負できる日本の姿勢が見たい。
UFC大会に毎回誰か必ず日本人が出場できるくらいになることを望む。
UFCが日本に帰ってきたのだから!
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