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DREAM.8
2009/4/5@日本ガイシホール
桜井“マッハ”速人vs青木真也



プロデビュー以来マッハの試合を全て観ているが、今回はキャリアの中で最も“気”が込められているように見えた。入場直前の煽りビデオで文字通りさんざん煽られた両者の置かれた立場と勢い。イケイケの青木が階級の壁を越えて日本を代表する大物食いをしてしまうのではないか。対戦が発表されてからそう思わされる一方で、かえってマッハが高い壁でいてほしいという感情になったのは長年格闘技界の変遷を見続けてきたオールドファンゆえの贔屓心からか。ビデオ上は青木の挑発をぐっとマッハが受け止めるという構図も、正直プロレスチックな言葉はこの闘いには必要ないと思った。結果的にマッハのベテランの風格が際立ち、マッハが印象度をアップしたビデオだった。

尋常なき緊張感。白黒は力の差による格闘技のシビアさに震える。
絶対にリスクが大きいのはマッハの方。これまでも自分より若い後輩たちと幾度も相対してきたマッハだが、やはり五味に喫したノックアウトは切なかった。やっぱり強いマッハが観たい。強いマッハに感動と勇気をもらってきた者として、青木には申し訳ないが今回は完全なるマッハサポーターの心情だった。

人間誰もが不安を抱え、その胸の内は顔とリンクして表に出てしまうもの。しかしマッハは気合い満々てエナジーを発散しながら眩しいオーラと共に姿を現した。怒りすらも滲ませた“ゴンタ”顔。
なんだかとっても頼もしく見えた。30代男を代表するボス猿としてマッハに心を託した。

その間わずか27秒。しかしこの瞬間にマッハが歩んできた格闘人生が凝縮されているように見えた。
稀代の若き寝技師をスイープしてみせ、怒涛の獰猛ヒザ&パンチラッシュ。マッハの名前通りの速射重爆。
コーナーに駆け登り全身で吼える。マッハ史上最高の歓喜表現。それだけにいかにマッハがこの試合にかける思いが大きかったかが伝わってくるではないか。

こんなマッハでいてほしい。こんなマッハがいてくれてよかった。リミットを振り切ったフルスロットルなマッハ。今回は戦前から戦後までマッハに尽きる。敢えてマッハのことだけ語らせてほしい。

マッハここにあり、を存分に見せつけてくれたが、次回もその次も、これからずっとこんなマッハでいてほしいという願いは無茶な相談なのだろうか。
いや、そんなことはないはずだ。次は外国人相手にワールドクラスに弾けるマッハがまた我々の目の前に登場してくれるはず。

あ、そういえばこれは『ウェルター級グランプリ』だった。マッハにとっては待望のメジャータイトルまであと二つ。
今回のように“気”を爆発させれば、理想のマッハ像で魅せてくれれば、間違いないでしょう。
だからマッハさん、これからも頼みます!
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DREAM.8 〜ウェルター級GP 2009 開幕戦〜
2009/4/5@名古屋・日本ガイシホール
桜井”マッハ”速人 vs 青木真也、決定!



今年二発目のDREAMで開幕するウェルター級GPの参戦選手がまだ日本人4名しか決まっていないにも関わらず、事実上の決勝戦となるビッグカードが発表された。桜井”マッハ”速人vs青木真也。きっかけは青木本人のアピールだったが、まさかマッハも一回戦からこの挑発を受け止めるとは思ってもみなかった。ここは、高田統括本部長がいたならもれなく、「マッハ、お前は男だ!」と絶賛することだろう。

明らかにリスキーなのはマッハの方。”DREAMの大黒柱”と自ら宣言し積極的に出場を重ねる伸び盛りでイケイケムードの青木と、ここ数年目立ったインパクトを残せていない(マッチメイクにも恵まれていなかったと言える)マッハとでは客観的な勢いの差は否めない。

しかし、ここは敢えてマッハを応援したい。
階級を上げ、自信満々の発言を繰り返す青木に露骨な対抗意識を露わにし、堂々と迎え討つ選択をしたマッハが、ここ数年温存していたパワーを爆発させたなら・・・あのフランク・トリッグ戦を超える興奮を期待したいものだ。

実際に修斗で一戦交えているマッハと青木。その試合では、開始直後に青木がマッハをグラウンドで翻弄しかけ、あわやの場面を作ってみせた。
判定はマッハについたが、私の目では青木についてもおかしくなかったというのが本音だ。

あれから青木は多くの強豪相手に実績を積み、結果を残し、地位を築いてきた。
マッハは後輩の五味にKOされ、修斗でもタップアウトを喫するなど、痛い星が目立つ。
でも、だからこそ、マッハの意地、マッハの底力が見たい。
プロデビューから10年以上に渡りマッハの全試合を見続け、興奮し、勇気をもらってきた。はっきり言えば、思い入れ優先。格闘技界の”ボス猿”として力で君臨してもらいたいのだ。
若いものに負けてたまるか・・・クールを装わず、感情丸出しのマッハが見たい。
立っても寝ても、打撃でねじ伏せてみせてくれ。

実にヒリヒリする闘いを組んでみせたDREAMの本気度に脱帽。
4月5日は名古屋遠征するしかないなと決めました。
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DREAM.7 〜フェザー級グランプリ開幕戦〜
2009/3/8@さいたまスーパーアリーナ



ふと気付いた。まるでPRIDEだなあと。そんなことは分かりきっているし、我々ファンが全開で受け入れているからこそDREAMが事実上PRIDEを継承しているのだ。それでも、改めて、PRIDE色を必要以上に感じ取ってしまった。ドクター、ジャッジ、レフェリー紹介アナウンス、オープニングムービー、選手入場式、煽り映像、青いオープニングフィンガーグローブ、7m四方のリング、シルバーのロープ、リングアナ、判定の読み上げ・・・全ては完全にPRIDEのフォーマット。でもPRIDE亡き穴を埋めるにはDREAMが必要だったし、こうするしかなかった。
PRIDEでは実現しなかった新企画・フェザー級GPが始まった。それなのに、どこか縛られている気がした。何故だろう、グランプリ特有の爆発力が封じ込められている気がした。それはPRIDEの呪縛のような気がしてならなかった。

昨年末のDynamite!!のときにも顕著だったが、今なお会場の熱を創り上げているのはPRIDE経験ファイターでありPRIDEから続いてきているファンである。別な見方をすればK-1系選手はまるでアウェイ状態。こんな片寄った現象にアクセントをつける結果になったのがK-1系(HERO'S系)選手だった。

そもそもK-1のFEGが母体となり“大連立”となった経緯があるが、両陣営が手を結んだ効果はまだまだ出ていない。しかしその主たる原因はイメージにあるのではないか。
イベント名こそ違えど、PRIDEの世界観を全面に押し出ていることで見えない壁が打ち破れないでいるのでないか。

そう見えて仕方なかった2009年一発目、二年目に突入したDREAM。笹原プロデューサーはこう語っていた。
「今年は勝負の年」

DREAMを代表する存在となった青木、川尻、石田、フェザー級GPでは今成が歓声を集めたが、皆PRIDE参戦経験組。
PRIDEから発展した新MMAイベントとしてDREAMが勝負をかけていくなら、“非PRIDE”の新顔が必要だ。
PRIDE組と非PRIDE組が切磋琢磨しあって、PRIDEでもないHERO'Sでもない、全く新しいDREAMを創っていくこと。
それが勝負の年に仕立てていくことなのではないか。

そこで重要になるのは非PRIDE組の台頭。その究極のアイコンがKIDなのは明らかだ。
KIDの存在なくしてフェザー級グランプリ開催はありえなかった。いや、KIDなくとも成立はするかもしれないが、KIDがいるといないとでは企画の重みが変わってくることは否定できない。

そこで今回の開幕戦で顕著な役目を果たしてくれたのは高谷だった。
日本人勢の中で唯一のKO勝利。キャラクターと集客力と相成って、グランプリにおいてMVP級のインパクトを残してみせた。
山本篤の頑張りも特筆ものだった。結果的には今成に星を奪われたが、非PRIDE勢力としてはDREAMブランド創りに貢献したと言えよう。

HERO'S旗揚げの際の名キャッチコピー、
「業界に前田日明が足りない」
をDREAMに置き換えてみよう、

「DREAMにはHERO'Sが足りない」

高谷しかり、そして4月大会で一回遅れのグランプリに挑む所英男、そしてそして山本KID。
PRIDEのフォーマットの中で非PRIDE勢が存在感を示すことが新しいDREAMに繋がるはずだ。
その場合もちろん彼らの闘いぶりと結果が肝心になってくる。
PRIDEから引き続いている“生粋”のファンが彼らにPRIDE系選手以上の歓声を投げかけるようならば、DREAM改革は成功の第一歩を踏むことになる。

PRIDE系選手は“外様”に対して「こんちくしょう!」の精神で「俺たちのリングを荒らされてたまるか!」と気持ちを押し出して真っ向勝負に挑んでもらえればいい。
フェザー級グランプリの場合、その対象はKIDに集約されるのだろうが、だったらもっともっとKIDを挑発して、KIDから逆指名されるくらいにアピールすべきだ。
去年のライト級グランプリで川尻が宇野に噛み付いたように、もっと威勢よくやってもらいたいものだ。

あとは最後のひと仕事。
PRIDEのフォーマットを思い切って変えてしまうわけにはいかないものだろうか。
グローブの色でもいい、リングやロープの色でもいい、究極は煽りビデオ自体でもいい、新たに勝負するのであれば見た目の演出を刷新してみれば、大いに生まれ変わった感は創っていけるはずである。
私個人の希望としては大胆な変化が見たい。オバマ効果で方々で謳われている“チェンジ”である。

ただでさえアメリカに本番を奪われ、地上波中継枠も縮小してしまっているのだ。
業界をリードし感動を生み続けてきたスタッフならば必ずや新しいものを創造してくれるはず。
DREAMを正夢にするための私なりの願いよ、届け!
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最近の傾向として、選手の口から具体的な対戦希望者の名前が聞かれなくなってきている。
特に王者クラスやトップランクファイターに多く見られるが、
「私はプロモーター、マネージャーに指定された選手となら誰とでもやります」
と決まり文句で言われても面白くもなんともない。

昨日、DREAMを主戦場とする川尻達也が講習会を開き、その場で大晦日出陣を宣言。気持ちいいくらいの対戦相手希望を言ってみせた。

川尻が狙うは、グランプリをリザーバーから制しライト級王者となったヨアキム・ハンセン。
二年前に修斗で王座を争った両者だが、まさかの開始8秒での金的アクシデントで試合ならず。あの虚しい空気に誰よりも悔しく涙した川尻の姿が思い出される。

川尻vsハンセンはDREAMで実現すべきスーパーカード(本音は修斗で再戦してほしいが)。
その前に、川尻自らハードルを課せられても構わないと言うのなら、どうせなら修斗の因縁続きで宇野薫と決着戦をしてほしいものだ。

と、選手本人の発言から観る側の期待と想像が膨らみ上がる。これこそ今、格闘技界が生み出すべき好転の流れではないか。

所英男が山本KIDを目指し、秋山が吉田秀彦戦をぶちあげ、青木真也が秋山に噛み付いた。
アメリカではランディ・クートゥアがヒョードルをゴールとしている。

闘う主役たるファイターたちが何事も表で話題を作り、業界を牽引すべし。
対立構造が分かりやすいほど格闘技が面白くなるに決まっている。

皆、川尻のように遠慮なく発言してください。
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