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Dynamite!! 〜勇気のチカラ2009〜
2009/12/31@さいたまスーパーアリーナ
デビュー戦完敗の石井はどうすれば光るのか


戦前にあれだけ幻想に包まれながらデビューする選手の数は決して多くない。というか、そんな“大物”の格闘技デビューなど滅多にあるものではない。だから、あくまでも、石井慧は特別だった。現役の、最新の、オリンピックゴールドメダリストの格闘技転向である。それはそれは日本格闘技界にとっては世間的話題になる待望の存在だった。視聴率は取った。石井の試合が民放中、最高を記録した。注目を集めていたことは数字で証明した。しかし、問題はその内容である。せめて善戦はしてほしかったものの、まったく何もできずに完敗。野球で例えれば一点すら取れない完封負け、しかもノーヒットノーランに等しい。こんな石井の現実にさぞかし落胆した者は大多数を占めるはず。石井のビックマウスからかけ離れた闘いぶりを知らしめてしまった今、石井に残された機会は戦極との契約が残っているあと一回のみ。さて、石井に何を望むべきか、列挙していってみよう。


1)何より勝利すること。
日本、アメリカ、ブラジルと、名門ジムを武者修行・・・と言えば聞こえはいいが、逆にこんな贅沢な海外遠征をできる格闘家がほかにいるかと言えばいない。誰もが羨ましいに決まっているトレーニングを続けながら、いざ実戦で何が見せられたかはご覧の通り。
石井は戦前、Dynamite!!で組まれてきた“イロモノ”マッチを否定したが、実は石井にこそ白星を確実に獲るための相手をあてがうべきだったのではないか。
奇しくも吉田が挙げたボブ・サップだったならば、もっと石井がポテンシャルを発揮して、勝ちもできたのではないかと思う。
もしくはホンマン、ボビー、カンセコ・・・この中の誰かでよかったと思うのは私だけ?
金メダリストが負けてはいけないし、負けさせてもいけない。


まあ、石井のデビュー戦は当初、戦極大会のメインだからこそ吉田になったわけで、Dynamite!!に移管された時点でバラすべきだった。
石井vs吉田という黄金カードはそれ自体が絶対的なメインとして扱われるべきだった。
その点、吉田にはプロモーター感覚があったということになる。


2)もっと人前に出ること。ファンを作ること。
デビュー戦を前に、契約になかっただのとの理由で石井は公開記者会見に姿を見せなかった。敗戦後もバックステージのインタビューにやってこなかった。
契約云々はいかにも芸能事務所的感覚であるが、少なくとも大会の目玉的存在なのだからマネージメントが止めたとしても自分から振り切ってでも出席すべきだった。
金メダルの実績はあっても格闘家ではグリーンボーイの最年少。言動が身勝手に映り、肝心な実戦があの内容では、ファンも総すかんだ。
残念ながら私のまわりに石井ファンはまだいない。
選手生命にとってファンは何よりも大事なサポーターである。
石井の天真爛漫さなら、まずはキャラクターでファンを虜にすべきだ。この辺は、日本の格闘技界はある意味芸能界でもあるのだから。


3)石井らしさ=必殺技を体得する。
昨今のMMAは“MMA”としての技術体系化が進みトータルバランスが必須条件になっているが、それでも、ファイターごとに得意分野=フィニッシュムーブがあり、それがファイター自身を表すものとして認知される。
例えば、青木から変幻自在のサブミッションであり、川尻ならテイクダウン&パウンドであり、所ならクイックムーブ&サブミッションである。
もちろん総合格闘技ゆえに何でも全てできる上での秀でたものが明確にあることで、観る者にイメージを植え付けやすくなり、選手としての個性を確立することになる。
ならば石井は何で自分を表すのか、ということである。石井が目標とするヒョードルはスタンドパンチ、パウンド、サブミッションとオールラウンドに武器を身に付けている。石井も全てをマスターし、どの局面でも対応し優勢を取れるようになりたいのだろう。しかし、デビュー戦を観る限りまだまだ時間はかかりそうだ。


時間がかかるのは当たり前だ。
しかし時間の過程の中で石井ならではのパターンを身に付けていく必要がある。
それがそのまま石井らしさになるのは言うまでもない。


4)アマチュアで経験を積む。
これが実は一番の本音である。金メダリストの価値はそのままギャラの高さに繋がっているのだろうが、初戦はとてもじゃないが金メダリストの片鱗すら見せられなかった。
石井が総合格闘技界で着実に経験と実戦を重ねていくつもりなのならば、アマ修斗やアマチュアパンクラス、DEEPのフューチャーキングトーナメントなどで実戦を重ね、実績を積み、一歩一歩階段を上がっていくべきだ。柔道時代こそそうだったはず。金メダルを投げ棄てて、正真正銘ゼロからの出発をしていったほうがよっぽど好感度もよくなる。
政治的エレベーターでひとっ飛びしても内容がついてこなければ評価も人気もついてこなくなってしまう。


以上4つのポイントを提言してみたが、石井には“バケモノ”になってもらいたいのだ。それなのに、「MMAをかじってみました」的なリング上での所在なき佇まいに失望させられた。
でも、格闘技界なら、これからもう一丁!と言ってくれる土壌がある。


続くデビュー二戦目が三月になるのか先になるのかまだ定かではないが、プロモーターは石井の実力に合った相手を用意し、石井に適切な経験を積ませてもらいたい。日本人でも外国人でもいい。そこで初めて石井の実力を知ることになる。


石井vsヒョードルが実現する日を待ちたいではないか。
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