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UFC Fight Night FLORIAN vs GOMI
2010/3/31@アメリカ・ノースカロライナ州・シャーロット



五味がUFC初参戦で宇野、岡見と揃い踏み・・・そりゃ見たいに決まっている。五味がPRIDEで築き上げてきたファイトの数々に心酔した日々を忘れられない者は多いはずだ。つい先日、久々にラックから取り出したPRIDEライト級GPのDVDに今改めて痺れさせてもらったばかりだ。宇野は言わずもがなの日本総合格闘技界の生き字引。今なおUFCに挑む姿勢に刺激をもらわないわけがない。岡見は日本のメジャープロモーションを横目に着実にUFCで実績を残してきた。PRIDE崩壊後の日本MMAシーンがいまだ当時の勢いを取り戻せないでいる一方で、PRIDEが持っていた勢いをそのまま頂戴した形で快進撃を続けるUFCの現在進行形を実は日本のファンは完全に理解しているわけではない。


WOWOWでは毎大会即日放送がなされているものの、衛星放送と地上波ではここ日本ではリーチの差は圧倒的に違う。だからこそUFCにとって、6局ネットとはいえ地上波全国放送の意義はあまりにも大きい。少なくとも、これまで以上のフリー視聴者の目に留まるチャンスはWOWOW視聴者数の比にならないほど多くなるはずだからだ。


昨今の不況にともなう広告費減少の大打撃を受けている4大メディア(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)は、同時に視聴率、聴取率、購読者数をも減らしてはいるが、それでも日本においてはいまだにテレビが持つパワーは圧倒的だ。情報を取る分には完全にインターネットが市民権を得ているが、「テレビを観る」という行為は日常習慣となっている。これは世界中の人にとって同じ傾向であるゆえ、わざわざこの場で指摘する必要がないと思われるかもしれないが、ここに海外から日本を見る“認識の違い”が生じているのではないかと最近強く思っている。


たとえば、アメリカではテレビと言えばケーブルテレビが当たり前で、日本で言う“専門チャンネル”も“テレビ”として普通に同列に視聴されている。
しかし、こと日本に関しては、アメリカと同じだと思ったら大間違いだ。ここに日本を見る目の落とし穴がある。
一般層へのプロモーションやパブリシティを目的とするならば、あえて断言すれば、日本では地上波テレビしか効果は期待できない。BSは年配向けサブテレビであり、CSは有料会員制サービス。明確にセグメントされたターゲットに対する宣伝広報活動ならばBSやCSも有用だが、それでもある一定数のラインまでリーチさせたければ相当数のボリュームを露出していかねばならない。


これまでUFCはWOWOWで放送してきているが、では日本国民にどれだけ認知が広がっているかといえばその答えに詰まってしまう。有料制会員サービスで独占放送している時点でパイはその範囲からそうそう広がらない。約200万世帯が視聴契約をしているWOWOWだが、日本の世帯の25分の1、4%の普及率にすぎない。この現実による現状をUFCもようやく実感したのではないだろうか。しかもWOWOWは映画、音楽、スポーツなどの総合編成。UFCを観たいがためにWOWOWに加入した人はそれなりにいるだろうが(私もその一人)、ほかの番組目当てで加入した人がたまたまUFCを観てファンになる・・・というケースはあまり考えにくい。なぜならすでに映画やサッカーなど明確に観たいものがあって加入している動機がメインだからだ。
WOWOW側から見ればラインナップしている総合編成全てを目的とされなくても視聴者が加入してもらえればよいわけだが、UFC側がプロモーション効果を期待するならば限界がある。UFCにとっても放映権ビジネスにはなっているわけだが、その先を目指したいジレンマが今回の手法に表れたのではないだろうか。


WOWOWではUFC本戦と『THE ULTIMATE FIGHTER(TUF)』。しかし今回テレビ東京で放送するのは『ULTIMATE FIGHT NIGHT(UFN)』。WOWOW未契約の別ラインにあえて日本人ファイターを寄せ集めて、新たな局で放送する。
アメリカではSPIKEでフリー放送されているUFNのメインに五味を抜擢して米国内プロモーションのチャンスを与えると同時に、日本マーケット調査を深めるための日本向けラインナップでZUFFA体制UFCを地上波初上陸させ、一石二鳥のメリットで展開の幅を広げられるUFCのパワーを思い知らされた。
一時期K-1が3局で3ブランド展開していたのを思い出すが、UFCにとってお手本となっているのはWWEだろう。これについては改めて書きたい。


3/31の大会から1週間後に日本でオンエアされる現在のUFC、日本のトップクラスファイターが出場するUFCが一体どんな反響を得るのか。これが今回の最大の焦点となる。
3人の日本人が勝利と共に好試合を演じることができれば自ずと数字にも結び付くだろう。数字とはこの場合、もちろん視聴率のことだ。
テレビ東京系列にとって、数字が取れれば次回の検討が前向きになる。さらにUFC本戦への興味に繋がればWOWOWにとっても契約者獲得のプロモーションになる。WOWOWはテレビ東京中継枠でCMを流すべきだ。このようにリンクしていけばUFCにとっては日本ビジネス展開の足掛かりになる。当然ながら日本大会だって成り立つのならやりたいはずだから。


アメリカからじわじわと国外戦略を広げているUFCにとって日本は大事なマーケットになるはずだが、まだその時期に至っていない現状を打破する一手になるか否か。
あれだけ世間で格闘技が話題になっていた時代はつい数年前なのに、まるで遠い昔のようになってしまっている日本で、UFCがまずはK-1と肩を並べていくために・・・・・・日本の水が甘いか辛いか、実はメインの五味の闘いぶりに懸っていると最後に思う。
日本で海外スポーツが認知されるには日本人選手の活躍ぶり次第であることはベースボールやサッカーが証明している。
私は日本でのUFCムーブメントを願ってやまない。日本という特殊なマーケットにUFCが居場所を作ることができたら本物だ。
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