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Dynamite!!
2009/12/31@さいたまスーパーアリーナ
対抗戦5試合+2試合決定!



ようやく発表された大晦日『Dynamite!!』の追加カード。もちろん注目はDREAM対SRC(戦極)の対抗戦。私が先日リストアップした希望カードの一部が叶い、少しはマッチメイカーのセンスはあるのかも? なんてわけはなくとも、中でも沸騰必至なのは今年両陣営で開催比べしたフェザー級。互いに異次元にいた両軍の日本人トップ同士が初遭遇するというあり得なかった組み合わせの刺激が対抗戦の価値を極めている。


山本“KID”徳郁 vs 金原正徳

DREAMの象徴vs戦極王者は事実上の日本人頂上対決だ。金原にとっては千載一遇の大チャンス。DREAMでは他の日本人選手誰もが対戦を望みながら叶わなかったKID戦。金原はこれまでにも増した粘りの底なしファイトで真っ向勝負に挑めば、KID越えは決して夢ではなかろう。


ただしフィジカル論になればKIDはかつてHERO'Sでは自らの階級を遥かに越えた70級の日本人を制した実績がある。絶対的な一発を持つKIDの勝負どころの突き方はバリエーションが豊富ゆえに研究し尽くしきれない奥深い恐怖あり。


金原が恐れずどれだけ前に出れるかが頂上対決をスイングさせる要素になろう。


高谷裕之 vs 小見川道大

高谷と小見川の“準優勝者対決”、これは必然性あるいいカードだ。
打撃という武器を持った高谷がリードしている感があるが、金原同様に小見川の粘りは特筆もの。しかし高谷とて粘りでは負けていない。
消耗戦になるか、一発が試合を決めるか、マニア向けの屈指の好カードにまずは拍手を送りたい。


そしてフェザー級でもうひとつ。


所英男 vs マルロン・サンドロ

これは所の魅力が引き出せるカードではないか。
私が希望した日沖戦はならなかったが、実は外国人相手に好勝負を連発してきた所にとってはシビアな日本人対決よりも己のポテンシャルを発揮できる期待がある。
しかしとてつもなく手堅く穴がなく強いのがサンドロ。
所が動き、サンドロを動かせれば、観る者を沸かせるだけでなく事実上の「キング・オブ・パンクラス」奪取もありだ。
動いて動いて動きまくる。そんな所が観たくて観たくてたまらない。


さらにヘビー級でも対抗戦と言えるカードが決定。


藤田和之 vs アリスター・オーフレイム

最近強大にパンプアップしたアリスターの恐ろしさはテレビ画面からも嫌というほど伝わってくる。
パンチにヒザの必殺打撃、一攫タップ奪取のフロントチョークと必勝パターンを持つアリスターに対して、戦極ではどこか元気なく負けがこんでしまっている藤田。
実は藤田を掻き立てるのはPRIDEの世界観かもしれない。
あの頃のイケイケ藤田を、ヒョードルを脅かしたときの藤田を観たいものだが・・・シビアだろうなあ・・・。


ほか、日本人ベテラン対決の、


桜井マッハ速人 vs 郷野聡寛

は正直あまり積極的に観たいとは思わない“友人対決”。
しかしこの種の友人対決は最近容赦なく組まれている傾向でもあり、ここは“日本代表決定戦”として感情抜きで観るのがよいか。


柴田勝頼 vs 泉浩

はキャリア浅い者同士の大味マッチ。
“プロレスラー”対“五輪メダリスト”という分かりやすさは国民の日に必要ということだろう。


K-1ルール戦の、


西島洋介 vs レイ・セフォー

も分かりやすいK-1であり、まだ知名度は残っているであろう“洋介山”のバリューで視聴者を気にさせたいテレビ向きカードである。


格闘技ファンにとってはやっぱり対抗戦だが、どうしてもテレビ向き編成は捨てられないという判断なのだろう。
でも試合内容さえよければキャラクターに頼らなくてもいいのに・・・と毎度の葛藤が生まれてしまうのだが、早く主催のTBSが格闘技を純粋な格闘技として伝える勇気を持ってもらいたいと思うのだった。


“勇気のチカラ”とはTBS自らに向けられた言葉なのかも!?
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Dynamite!! 〜勇気のチカラ2009〜
2009/12/31@さいたまスーパーアリーナ
DREAM対SRCの全面対抗戦実現か!?



「チケットが売れすぎてより大きな会場に変更せざるをえなくなった」という業界でも類を見ない“新しい”理由が戦極からリリースされた裏で、半ば事実情報として戦極のDynamite!!吸収合併が駆け巡っていた。そして恒例の“重大発表記者会見”の名のもと、日本格闘技界にとって本当に重要な決定事項が発表された。

DREAM vs 戦極
全面対抗戦


ようやく日本格闘技界が目を覚ましたと言おうか、そもそも分裂して真裏で興行戦争してどうするの、という嘆きがこの大英断で喜びに急転化した。
「プロ野球のセ・パ両リーグのようになればいい」というのは絶妙な喩えで、今や格闘技界年間最大の檜舞台となった大晦日が日本シリーズになればよいわけである。


魔裟斗のラストマッチが観たければ、石井慧の格闘技デビュー戦も観たいに決まっている。その二大メインイベントが同日同所で観ることができる上に、夢の対抗戦までついてきてしまうのだ。
そもそも大連立が続いていれば夢は当然の日常となっていたはずだが、そうもいくはずもなく2008から始まったDREAMと戦極の日本国内二大メジャー舞台の競い合い。共に同じタイミングで同じ階級のグランプリを開催していく様を見て、どうせなら一緒になればいいのに・・・と何度思わされてきたことか。これは大多数のファンも同じ意見だろう。


でも、両陣営それぞれに王者がいて人気選手がいる。
年に一度の両軍の一期一会。これが今後定着しレギュラー化していけばよい。DREAMも戦極あらためSRCも、独自に運営し、夏頃にでも軽くプチ対抗戦を挟んでもよいか。これもプロ野球の交流戦のように。
日本のプロ野球を踏襲する形は日本格闘技界にほんとにマッチしている。


アメリカでもMLBのようにア・リーグとナ・リーグよろしく、UFCとストライクフォースが激突、なんとことになれば面白いに決まっているが、それはないだろうか・・・。


大晦日の全面対抗戦希望カードについては別稿するとして、まるでベルリンの壁が崩壊したかのようなムーブメントは他にも起こっている。


古くから格闘技界の歴史を知る者は驚き、感慨無量でもあろう、修斗とパンクラスの交流戦実現。厳密に言えばパンクラス選手が修斗公式戦に参戦する形であるが、それでもオフィシャルに修斗のリング上で“パンクラス”とアナウンスされるのだから時代は変わった。
両者共にアイデンティティーは違えど、日本格闘技界の老舗団体であったにも関わらず、後に勃興したビッグプロモーションに選手をこぞって持って行かれる形となり、同様の苦しみを味わった者同士でもある。
本来なら昔から両者が手を組んでいれば日本総合格闘技界の勢力図は全く違うものになっていたかもしれない。


今から始めればいいのだ。バラバラに独自で小さくやっていたものが集まって、誰にでも分かる形の“日本総合格闘技”になればいいのだ。
一緒になって大きくなろうよ。ルールも統一していこうよ。そうすれば少なくとも日本では総合格闘技のコミッションが成立していくことになる。
総合格闘技がスポーツのいちジャンルとして世間の誰もが認知するものになるために、今年の大晦日が、そして業界連立の流れが、真の一歩となってもらわなければ意味がない。


内藤対亀田の一戦があれほどまでに注目された要因の根底には、ボクシングが絶対勝負論前提のスポーツであり、王座戦が頂点の価値があることが明確なことが挙げられる。
ならば格闘技界はどうなのか。ドラマ重視のプロレス手法を取るのではなく、ボクシング手法を取っていくべきである。


まずは今年の大晦日、正真正銘のジョイントがうまく行ってもらわないと。
両軍対抗戦で絶対やるべきカードは王者対決である。


青木 vs 廣田
ビビアーノ vs 金原
サンチアゴ vs ジャカレイ or メイヘム
ザロムスキー vs ホーンバックル or 郷野 or 瀧本


こう見ると実は外国人に占められている日本のベルトだが、日本人のための大晦日では絶対勝負論に基づいた王者対決はまだお預けだろうか・・・


いずれにせよ、この“再編”の流れが業界の繁栄に繋がっていくことを心から願い、我々ファンも原動力となるべく盛り上げて行こうではないか。
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叶わぬ想い・・・もしかしたらUWFが観たかったのかもしれない

Dynamite!! 〜勇気のチカラ 2008〜
2008/12/31 @さいたまスーパーアリーナ



つくづく格闘技とはときに非情な結末を産み落とすものだと痛感した。これまでも幾度となく願望に反した現実に打ちひしがれてきた。こればかりは仕方ないと分かりきっているつもりでも、格闘技に、選手に思い入れを持つ以上、毎度リングに夢を託して没入するのがファンの性。当然ながら大晦日にも自分勝手な贔屓心を多くの選手に預けてきた。しかし全てがうまく流れるわけではなかった。特にメインはやり場のない切なさに打ちひしがれた。

PRIDE時代に話が沸いてから待つこと5年、遂に実現した田村vs桜庭に求めていたものは何だったのか。おそらくそれは生ぬるい理想だったのだろう。

12年前にUインターの第一試合で立て続けに三度相いまみえた両雄は、純プロレスの枠に寄ってしまったUインターの“良心”を二人占めするかのようにスイングしたUWFスタイルを体現してみせた。
それから時は過ぎ、リアルファイトの時代になり、開花した桜庭の相手として持ち上がったのが田村だった。

田村がUインターを離れ、リングスに移籍し、リングスを抜け、PRIDEにやって来ていなければ、企画される必然のないマッチメイクだったのかもしれない。
たしかに桜庭はPRIDEで、田村はリングスで“グレイシー”を相手に結果を残してきた。
しかし、2003年に両者の一騎討ちプランが上がるまでは“元Uインター”というフィルターを通しても桜庭と田村との絡みはそれほど期待されてはいなかった。

PRIDEが撒いた桜庭vs田村という種が発芽し実がなるまでに要した月日は5年。
もし5年前に実現していたら・・・そんな問いに田村は不快感を露にし口をつぐんだ。
しかし今回ようやく両者が交わった15分間を見て、私なりの意見はある。
もし5年前でも同じ展開になったのではないか。

目まぐるしく攻守入れ替わるUWFスタイルの最高形の現代版再現を望んでいた者が大多数だろう。
オープンフィンガーグローブを着け、グラウンド顔面パンチがルールで認められていても、きっとあの頃のシーンが進化して再現されるはず。そう信じてしまったのがそもそもの誤りだった。

“回転体”と呼ばれた両者のスイングは皆無。
グラウンド顔面パンチを悲観していた田村がパウンドや鉄槌を桜庭の顔面に落とす。
桜庭は下になりっぱなし。でも、ここからあの劇的なサブミッションが瞬時の逆転ムーブとして繰り出されるのではと願いつつ、残り時間が減るにつれて焦りが諦めに占められていった。

試合後、今回の12年ぶりの再会の展開内容について桜庭は、
「田村さんがああいう闘い方だったから」
と半笑いで語ったが、桜庭が展開を変えられなかったことも事実だ。
わかってはいたが、UWFとMMAは非なるものなり。UWFマスターの田村と桜庭でさえMMAの中でUWFを創ることができなかったのだから、そう認めざるを得ない。今さら何を言っているんだという声を多くいただいてしまいそうだが、田村と桜庭にそんな理想を託してしまっていたのだから仕方ない。

もう一度チャンスがあるならば・・・大晦日のメインである必要はないし、桜庭本人は嫌がるかもしれないが、本当に最後の“U”のケジメが観たい。

田村潔司vs桜庭和志
UWFルールの真剣勝負

きっとあの頃の桜庭が田村が、年輪と円熟を重ねた二人が、最後にして最高の“U”を刻んでくれるはず。

大晦日の切なさをいつか叶う夢のために引きずっていく。
“U”が時代に残してくれたものは何よりも重くかけがえのないものである。
そんな“U”をあれで終わらせてはならない。
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Dynamite!! 〜勇気のチカラ 2008〜
2008/12/31 @さいたまスーパーアリーナ



年間最大ボリュームの、番組タイトル通り“格闘技史上最大の祭典”を全編通してライブ体感し、格闘技界にとって数々のことがハッキリした。テレビでは伝わりきらない、ライブだからこそ分かることがあり、しかしそれらは格闘技界の今後を創っていく上で重要なファクターとなる。2008年大晦日、何がハッキリしたのか。大会総評として書いていきたい。

まず、“大晦日の格闘技イベント”はもはや完全に定着したことがハッキリした。
振り返れば2001年に大阪ドームで開催されたプロレス大会(だった)『イノキボンバイエ』から始まった。翌年に同大会が“猪木軍vsK-1”として異種格闘技戦対抗戦となり、TBSで中継されて以来、テレビは7年目である。
最大時の2003年には格闘技バブルと言える地上波テレビ3局が真裏で格闘技中継合戦ということもあったが、テレビではTBSが社を上げて盛り上げ続け、格闘技=大晦日テレビ番組も定着しつつあるだろう。
今回の視聴率は12%台も、かつての紅白一人圧勝時代と比べたら十分健闘している。

そしてテレビ視聴率云々以前に、大晦日に格闘技イベントに足を運び、超満員に膨れ上がるほどのファンがしっかり存在することもハッキリした。
ライブこそ格闘技の命なり。かつてPRIDE時代に高田統括本部長が幾度となく熱弁した“選手、ファン、スタッフによる三位一体の熱”こそ格闘技ライブのかけがえのない価値として完全に根付いたこどがハッキリした。

世間でも大晦日は新年を迎える前の最後の日、コンサートや演劇やパーティーや遊園地など自ら体感して一年のハジケ納めをする傾向は強かった。そこに格闘技イベントはものの見事にハマった。同時に格闘技は音楽をはじめとした一般的に人気あるエンターテイメントと肩を並べたことにもなる。
格闘技はもっともっと自信を持っていい。

その格闘技ライブに熱を持って来るファンのほとんどは、特に今回さいたまでのDynamite!!に来たファンは、MMAファンであることがハッキリした。
もちろんK-1WGPにもK-1MAXにも会場を埋め尽くすファンがいるが明らかに質が違う。
MMAといってもかつてのHERO'Sファンとも違う。
もうこれは疑いようないくらいにハッキリしたのが、会場熱を生み出しているのはPRIDEから続いて来ているファンだということ。
前述した“三位一体の熱”を心の底から理解し原動力となる分子たちが格闘技の過去から現在、そして未来を支えていることを大事に捉えるべきだ。

歓声のボルテージが分かりやすい例だ。
一際高い声援を集めるのは決まって元PRIDE経験ファイターたちだ。
青木、川尻、桜庭、田村、マッハ、ミノワマン。
ムサシ、アリスター、ミルコ、ハント。
ハンセンの欠場アナウンスにはこれ以上ないほどの落胆が響き渡った。
しかし純粋に闘いぶり(&キャラクター?)が認められた選手にはPRIDEファイターと同等ボリュームの歓声が与えられる。
アルバレス、所、柴田。
今回の勝利と試合内容で今後、中村とマヌーフも仲間入りするだろう。
反面、“悪”には容赦なくブーイングを飛ばす。
K-1を台無しにする反則を犯したバダ・ハリや、試合ぶりが不甲斐ない武蔵。同様に秋山へのブーイングも決して冷やかしではない。
リング上のファイターに対して喜怒哀楽をぶつけることができる、それだけリング上をよく観ているファンがPRIDEから育っていることは、日本格闘技にとってかけがえのない財産である。

PRIDEあがりのファンは決して偏狭でも偏見でもない。純粋に格闘技を愛し、夢を追い求めている。
彼らのような“本物のファン”にサポートしてもらうこと、そして育てていくことがハッキリと格闘技界に必要なものである。
プロ野球もJリーグもそう。ならば格闘技にできないわけがない。テレビ環境ではゴールデンタイム中継や大晦日中継と二大プロスポーツよりかえって恵まれているのだから、うわべだけでなく根底をしっかりさせていくことで、選手、試合内容、イベントのムードなど全ての要素が前向きに改善されていくはずだ。

何よりハッキリしたのはリングに上がりリスクを背負いながらも闘いに挑む選手たちの強い意志。
大会サブタイトルの“勇気のチカラ”という言葉では甘すぎるほどにヒリヒリした己の全てを賭けたかのような“気”が伝わってきた。
選手が本気になるには、そのサポーターたるファンがいて、その場を創る主催者スタッフがいる。
PRIDE時代に言われていた至極当たり前の理想形を実践していけば、あるべき格闘技界の姿となる。

以上改めてハッキリしたことで2009年の格闘技界が進む道がハッキリした。
格闘技とは何ぞや。リアルの中リアルを体現していくことが格闘技の使命であり信用である。
リアルな強さに歓声が集中し、ストイックに闘い抜いた選手たちが勝ち名乗りを受けたという現実。
今年はもっともっとシビれる一年になる。
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PRIDE時代のこだわり度数No.1カードが、遂に、ようやく実現することになった。
正直、ピークは過ぎてしまった感は拭えないが、現在の停滞感ある格闘技界でコアな部分を担う“R35”ファンを中心に起爆剤となる切り札カードであることは間違いない。

桜庭も田村も共に、リアルファイトでのUロードを歩んできた。
分派したUの夢の対面として、共に美濃輪、船木と交わり勝利してきた。
現在の総合格闘技シーンでまミクロな世界かもしれないが、それでも“ケジメ”として確認し、落着させなければならない、残された最後の宿題のようなもの。それがこの桜庭vs田村である。

田村は今回の桜庭戦受諾の決断を“流れ”と表現した。
月日を要しているが、たしかに田村はひとつひとつUのケジメをつけてきた。
田村にとっては桜庭は同い年だが後輩。田村にとって永遠に変わることのない上下関係はあるだろう。

先輩の意地。この一戦で田村に視点を置けば、絶対に負けられない、なんとしてでも勝たなければならないという感情が見えてくるはずだし、そんな感情が見たい。
高田戦で流した涙、吉田戦で露にした悔しさ。
桜庭戦を安堵の表情で終えることができるのか、非情な現実に打ちひしがれるのか。
桜庭という重圧に田村のポーカーフェイスを崩してほしい。
何気に私は田村を主役にこの試合を観たくなってきた。

対する桜庭は、実績でもステータスでも田村を事実上越えた存在になっていた。
もしPRIDEで両者の対戦が持ち上がったときに、つまり両者がピークのタイミングで実現していたなら、私は桜庭完勝に投票する。

主催者からのしつこいまでのラブコールと、実現を望むファンの声。桜庭は快諾していても肝心の対戦相手にフラれ続けてきた。
桜庭から田村へのアピールは周りの希望を代弁したもの。そう、桜庭が田村と決定的に違う点は、ピープルズヒーローであることだ。

Uを巡るマッチメイクでも残された一戦であることを桜庭自身が理解しているだろう。
しかし田村が抱いているほど桜庭はこの一戦を特別視してはいないだろう。
桜庭のリアルファイト戦歴にまだ記されていない相手。ドライになればなるほど桜庭が有利になる。先輩に対して胸を貸す。田村に対してリスクの少ない桜庭が絶対的優位に立っていると思うのは私だけだろうか。

桜庭の不安材料は骨折した腕の治療明け初戦であること。必ずしも万全な状態ではない桜庭に対して田村の言う“流れ”が合ったとは思いたくないが・・・

「時間無制限で素手打撃ルール」というとんでもない提案をしてみせた桜庭のリップサービスに対し、田村には「ならばUスタイルルールでやろう!」と返してほしかった。
Uに対するこだわりと愛は俺は誰にも負けない!と、Uを遺物とさせない決意を田村には表してほしかった。逆に言えば田村はそのくらいの自己ブランディングをしなければ桜庭と並べるだけの支持は得られない。
だからこそ田村に注目なのだ。

高田延彦の敵討ちでもなければ榊原さんへの恩返しでもない。
幾多の壁を乗り越えて、2008年末、Dynamite!!を舞台に実現することになった日本格闘技界最後の運命の一戦をどう観ていくか。その気持ちはさまざまだろうが、少なくとも言えることは、これで一区切りがつく、ということである。
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