格闘技コラムメディア『STAND』のコラムがSPORAでも読める! STAND代表・シンジニシムラが日米を中心とした世界の格闘技シーンをタイムリーに斬っていきます!
DREAM.8
2009/5/26@横浜アリーナ
○所英男 [2R 1'38" チョークスリーパー] エイブル・カラム●



平日にも関わらず盛況だった横浜アリーナ。集客の原動力となったのは久々復帰の山本KIDや、PRIDEから続くリアルファンにとっては真のメインといえる川尻vsカルバンだったのだろう。今年に入って初の地上波プライムタイム中継となるDREAMが惜しげもなく提供したてんこ盛りのラインナップはそのままDREAMの本気度を表していた。ミドル級タイトルマッチ、スーパーハルクトーナメント、そして何よりフェザー級グランプリ。しかし主役の座をかっさらったのは前述した名前ではなかった。会場を最も沸かせ、テレビ視聴率でも瞬間最高を叩き出した“ピープルズヒーロー”、所英男に尽きる。文句なしのMVPは所英男だった。

勝ち星に見放され三連敗中、かつトーナメント再エントリーというビハインドを、試合内容で覆してみせた。所英男の最大の魅力はノンストップアクション。ガチンコで陥りやすい膠着は所には無縁。
崖っ淵の状況でベストパフォーマンスをやってのけてしまえる所英男が赤い閃光となり、この日最も眩しく輝いた。

覚悟の坊主頭と悲痛な表情。所は入場ゲートで深々と頭を下げた。不安がよぎる。しかしそれ以上に何がなんでも勝ってくれと所を応援せずにはいられない気持ちにさせられる。所にはみんながついている。観客も視聴者もほとんどが所英男応援団と化していたのではないか。
入場時に見せた悲壮感は、リングインするときにはどこか吹っ切れたやる気に変わっていた。両腕を上げてリングを回るお決まりのポーズを捨て、目の前の勝負に集中せんとする所英男が挑む究極の真剣勝負。

コーナーの前で再びお辞儀をした後に、顔をあげた所は高校球児のように見えた。と同時に、プロデビュー時のリングスやコンテンダーズに上がっていた頃の初々しさをも感じさせた。
見た目に分かる初心回帰と選手生命を懸けた決意。そしてキャリアと共に着実に成長した技術で掴んでみせた勝利。所英男が総立ちの感動を呼び込んだ。

所がプライベートで仲良くしているというバナナマン・日村が、煽りビデオやリングサイドゲストでクローズアップされたのは地上波テレビの演出としておいしい要素かもしれないが、所英男はキャラづけや付帯演出なしで、リング上のファイトだけで格闘技の魅力を体現できる稀有なアーティストであることを声を大にして言いたい。

エイブル・カラムと見事に噛み合った。所英男の代名詞であるグラウンドムーブが今回は流れるように披露された。これまで何度もフィニッシュを飾ってきた三角絞めが長時間に渡って極まるも、なんとカラムは脱出。決意をもってリングに上がったのは所だけではない。日米の執念が交錯し、一転カラムのパウンド優勢となる。この体勢から所が苦杯を舐めてきたシーンがオーバーラップする。ここからも意地と、そしてテクニックが絡み、まったく中だるみすることなく両雄の積極アクションが続く。

名前がある者同士による、事前に期待が膨らんだ分が大きければ大きいほど、名勝負が生まれる要素は大きくなる。しかし、所の場合は違う。所英男という存在そのものが名勝負を創る絶対要素となる。
カラムはまだ日本で二戦目。まだ実力査定が出来きっていない未知の相手であろうと、所が動けば試合は動く。カラムも前回以上のポテンシャルを発揮した。攻めて凌いで、凌いで攻める。格闘技という体を張ったコンペティションの理想形の攻防が所の試合では生まれる確立が非常に高い。そりゃ一般テレビ視聴者にも伝わるわけだ。所もあっぱれ、カラムもあっぱれ。さらに感動がついてくるのだからたまらない。

所英男がタップアウトを奪った瞬間、横浜アリーナはこの日最大に爆発した。
勝利の瞬間に立ち上がることすら忘れ、マットに座りながら右手を精一杯高く突き上げた所の姿、放心状態で顔をゆがめる所の表情に泣けてきた。

コーナーに集結したチームメイトにもみくしゃにされながら勝利の味を噛み締める。リング上だけではない。客席から無数の両腕が上がり、万雷の拍手が所を祝福する。これほどまでに勝利を感動に変える存在がいようか。
K-1MAXでの魔裟斗、かつての桜庭和志と同等の感動ボルテージを所英男は生み出してくれる。

改めて、所英男の特別さを見直してほしい。所英男、つくづくどえらい存在である。所英男に想いを注げば、所英男は倍以上の感動を返してくれる。

日本格闘技界が誇る”感動メーカー”が、奈落の底から頂点に這い上がってみせる。その気になった者の強さ、調子に乗った者の上昇気流が加速する。
KIDが抜けたフェザー級グランプリは、この勢いで所英男がモノにしてしまうしかない。そんなハッピーエンドが世の中に幸せをもたらしてくれる。

ここに、所英男に心中宣言!
僕らの所くんが夢を叶える瞬間を後押ししようではないか!
[Web全体に公開]
| この記事のURL
プロフェッショナル修斗
修斗伝承 20th ANNIVERSARY FINAL
2009/5/10@JCBホール



元を辿ればみんな修斗だった・・・“Back to our roots”“修斗伝承”の名で20年という節目をセレブレートするゴールがこんなにも華々しく意義深いものになるとは。当然ながら感慨も深くなった。日本発総合格闘技の本流を改めて知ることになった。

修斗創始者・佐山聡の姿が修斗のリングからなくなって久しいが、紛れもなく佐山なしでは修斗そのものは存在しえなかった。

プロレスラー時代にシューティング構想を実験し、第一次UWFを経て佐山は修斗の形成に専念した。
そこで蒔かれた種が時代に合わせて変遷し、日本のみならず世界で芽を出していった。

オープンフィンガーグローブ、5分単位のラウンド制が大方のMMAの基本になっているが、修斗が原型となっていることは言うまでもない。

日本ので総合格闘技メジャー化においてはUWF系プロレスラーが軸となってきたが、その一方で、見方によってはその陰で、修斗は『修斗』という名の競技として地道に道を切り開き耕してきた。

修斗はボクシングになろうとしていた。しかし、厳密には違えど見た目に近い非修斗な格闘技大会が頻出していった。
もはや総合格闘技、MMAの大会は世界的共通の協会や機構により管理されたものではなく、それぞれがプライベートに開催しているものだ。
しかし、修斗は『修斗』である。多くの選手たちが修斗から巣だっていったが、なんの遠慮もなく戻ってこれる。だからこそ20周年の大同窓会が実現できるのだ。余計なお世話かもしれないが、実はこの状況を羨ましく思っているのはUWF系ではないだろうか。

修斗という唯一の総合格闘技競技を経験し、修斗のトップを獲り、外のプロモーションで活躍する。修斗から見ればみんなシューター。それが修斗の財産であり強みである。

リング上にズラリと勢揃いした歴代のトップシューターたち。選手の名前が呼ばれるたびに、それぞれの修斗でのハイライトシーンが蘇る。修斗が日本の総合格闘技の歴史そのものである。そう思わざるを得ないほどの豪華な光景に同じ想いを抱いたファンも多かったのではないだろうか。

五味が戻ってきた。かつての激闘ぶりを再現してみせた。
石田と廣田の交錯も嬉しすぎるマッチメイクだった。
修斗がハジけてからずっと本道を担ってきたルミナを打ち破ってみせたリオン武、五味に真っ向勝負をかくた中蔵の両現役王者の明暗は分かれたが、勝者も敗者も万雷の拍手を集めた。
プロ修斗興行から離れていたファンを引き寄せ、現在進行形の修斗をアピールできたのではないか。修斗ここにあり、を証明した一夜だった。

その勢いを受けた形になる企画が今年10年ぶりに復活する。

VTJ 09

VALE TUDE JAPAN 09

バリジャパ

MMAの名前が浸透した現在に、あえて修斗がかつて持ち込んだヴァーリトゥード。

8分×3ラウンドという昨今のMMAでは考えられないルールを復活させるのか、はたまた全く新しい21世紀バージョンを仕立て上げるのか。

修斗が格闘技界のメインストリームに再び踊り出るのか・・・修斗という総合格闘競技が中心に立つことは大歓迎である。
健全なる格闘技の世間への浸透に繋がればこの上なし、だ。
[Web全体に公開]
| この記事のURL
戦極 第八陣
2009/5/2@国立代々木第二競技場



代々木第一競技場では安室奈美恵のコンサート、隣の特設会場ではシルク・ド・ソレイユの『コルテオ』、さらに『マッスルミュージカル』もある。なんか一瞬、ここ代々木公園一帯はものすごいエンタメ集中エリアだなーと感心してしまった。そんなエンターテイメントの戦国地帯で代々木第二競技場では総合格闘技。その中でリアルファイトがどれだけ観客の心を動かすことができるのか。これが『戦極』が挑み、世間に問われるエンターテイメントの姿である。

やはり主役のフェザー級グランプリは、来るべく者が勝ち上がった。

今回は打撃で圧倒秒殺してのけたマルロン・サンドロはパンクラスのベルトを高々と挙げていたが、パンクラスでサンドロとフルラウンド闘ったDJ.taikiや滝田はよく頑張った、というか本グランプリに出場資格を十分に有していることになるかも。あまりにも強いサンドロを見てそんなことを思ってしまった。

メインを張った日沖も危なげなく完勝。しかも前戦とは違ったテクニックを繰り出してみせたところに底なしのポテンシャルを感じる。やっぱり決勝でサンドロと観たい。

その両者に割り込む形になる日本人2名。

個人的にはナム・ファンが来るんじゃないかと根拠ない予想をしていたが、まさか(失礼!)小見川が圧勝してみせるとはあっぱれだ。
ナムをまったく寄せ付けず、スタンド打撃勝負で小見川のキャリア史上最高のインパクトとなる堂々たるファイトで勝ち名乗りをあげた。
今回は「クソッタレ!」発言はなかったが、柔道の子供生徒が応援に訪れている目の前でこの言葉は教育上よくない。だから今回のマイクアピールは一安心。強い男は憧れの存在なのだから汚い言葉を使う必要なんてない!

唯一判定に及んだ金原は、一進一退の大接戦の末勝利をもぎ取った。
本人は肩を落としたが、15分ノンストップで動き競り勝つタフさを証明できたと言える。分かりやすいKOや一本がもてはやされる一方で、制限時間いっぱいに闘い抜くタフさも十分凄みとして伝わるはず、そんな金原のファイトだった。

4名のファイナリストによるグランプリ決勝戦は8月2日、大会場のさいたまスーパーアリーナで。
私ならこんな組み合わせを推したい。

日沖 vs 金原

サンドロ vs 小見川

戦極という舞台だからできる各自所属のプロモーションでは実現できない組み合わせ、かつ本命視される2人を分けるというまっとうなやり方がかえって現在に適しているのではないか。

当然ながらもう一方のDREAMも気にしながら、“戦極流”がなんぼのものか、この夏にひとつの結論が出る。是が非でも日本人に獲ってほしいところだ。
まだまだ奥底を見せていないサンドロと日沖、食らい付く構図の小見川と金原。
戦極がフェザー級の新しい価値観を生み出してくれるはず。
日本を舞台に決めた戦極の最強が、WECやDREAMも包括した世界標準の王者となるか。決勝に立つ4名にはそんな気概を胸に、一見さんの世間にも響く熱血格闘技を体現してほしい。さいたまスーパーアリーナの大箱にファイターの”気持ち”が充満すれば、戦極はもうひとつ上のステージに登ることができるはずだ。
[Web全体に公開]
| この記事のURL
DREAM.8
2009/5/26@横浜アリーナ
新企画:スーパーハルクトーナメント〜世界超人選手権〜開幕



“重大発表記者会見”のリリースがファックスで届いた。これまでPRIDE時代から、このタイトルのリリースはそれこそ時代を揺るがす内容の発表に繋がった。PRIDEのUFCへの売却発表@六本木ヒルズ、DREAM発足発表。そして今回は何か・・・ちょうど前日にM-1チャレンジでヒョードルが来日中、さらにAflliction幹部も来日中、ならば絶対にその線だと勝手に信じ込んでしまい、会場となる八芳園に向かったたら・・・


現在進行中のフェザー級グランプリに加え、新たなトーナメントの開幕。
その名は・・・

スーパーハルクトーナメント
〜世界超人選手権〜

噂になっていたスーパーヘビー級のモンスターGPが遂に正式なタイトルと共に形になった。

順に発表される参戦選手と対戦カード。

ヤン・ザ・ジャイアント・ノルキヤ
ソクジュ

マーク・ハント
ゲガール・ムサシ

チェ・ホンマン
ホセ・カンセコ

ボブ・サップ

そして、最後の一人・・・

ここで、ヒョードル皇帝が来ると最後の最後まで過剰な期待をしてしまった自分に反省・・・

これは“超人”選手権。
ならば、唯一の日本代表として、この男なくして成り立たない。

ミノワマン

ヒョードルが来るはずもなく、“超人”と言えばやはりこの人。

格闘技デビュー戦の元MLBスター・カンセコの起用や、モンスター感の象徴たるサップやホンマン、ノルキヤなど、見た目に分かりやすい企画ではあるが、果たして今どきこのようなアプローチで格闘技そのものが世間に受け入れられやすいものとなるのかは、正直疑問符がつく。

今さら奇をてらう必要があるだろうか?
せっかくここまで築き上げてきた格闘技が本当に世間に浸透するには、フリークショーではなく、リアルなコンペティションとして見せていくことが必要である。
ハルクトーナメントの中では、ソクジュやハント、ムサシ、そしてミノワマンが圧倒的に差のある内容を見せつけ、最高水準のMMAトーナメントに変えねばならない。

5月26日、テレビ放送では内藤大輔のボクシング世界戦とセットでオンエアされるが、ここで世間からボクシングと比較されることを忘れてはならない。

ハルクトーナメントなくとも、フェザー級グランプリがあるし、川尻vsカルバンやジャカレイvsメイヘムもある。
しかし、世間的ネームバリューが欲しい、という意見があるのだろう。その声の主がテレビ局側だとしたら、格闘技界の健全な発展はその局には任せられないことになる。

しかし総合格闘技にとってはテレビという日本最強のメディアのプライムタイムでオンエアされることは最大最高のプロモーションとなる。
フリークとリアルが同じ番組枠で混雑させられようが、数字で判断されるのならば、リアルが瞬間最高視聴率を取ってしまえばいいことだ。

KIDなのか、今成なのか、川尻なのか、所なのか、それともホンマンやサップ、はたまたカンセコなのか。
格闘技の健全な明日のために、リアルチームのベストパフォーマンスを期待する。
一般世間が食いつく格闘技のトップクラスの真髄をお見舞いしてほしい。
リアルチームが真のハルクにならなければならない。
[Web全体に公開]
| この記事のURL
DEEP M-1 CHALLENGE 3rd EDITION in JAPAN
2009/4/29@ディファ有明



ヒョードルがディファ有明のリングに立つ・・・もはやそれは事件である。

DEEPが日本代表として協力している『M-1GLOBAL』はその名の通り世界各地から有望選手を集め競い合わせる人材育成の舞台。
たしかにUFCとはビジョンが異なる戦略を理解できた。

契約の条件をあくまでも独占とし、他のプロモーションで試合することを禁ずるUFCのもとでは、今回のようなヒョードルの姿を観ることは叶わなかった。

実戦でなくとも、エキシビジョンと言えども、たとえ3分間でも、ヒョードルが間近でアクションするのなら、それは観たいに決まっている。
いや、皇帝と呼ばれる現役最強王者を拝んで、少しでも強さのエッセンスをお裾分けしてもらいたいと願うのが、格闘技を支えるファンの中の真のファンの姿勢だ。

ヒョードルと対するのは青木真也。エキシビジョンだから成り立つ組み合わせも、ヒョードルの相手として最もふさわしいのが青木だった。
時代の寵児にあてがわれたご褒美は、我々格闘技ファンも納得できる贅沢なひとときとなった。

赤いサンボ衣をまとったヒョードルと青木は揃ってニコニコ。
ゆるい空気の中でもヒョードルの一挙手一投足を一瞬たりとも見逃すまいと客席から視線が集中する。大会を通して最も濃密な時間だった。

豪快なリフトアップ、大胆な払い腰、一転緻密なサブミッションとヒョードルは魅せてくれた。
やっぱり、動くヒョードルが観れて嬉しいことこの上なし、だ。

リングサイドにはM-1とAfflictionの幹部がズラリ。これは近い将来の日本イベント開催を予感せざるをえない。
セコンドではあるが、なんとランペイジ・ジャクソンもいた。UFCとの契約は大丈夫か!?

ヒョードルが歩いたあとには次に繋がる格闘技の未来がある。ヒョードルが笑えば業界も笑えるようになる。
ヒョードルとM-1によるMMA新基準が何だかやってくれそうなしてきた。
[Web全体に公開]
| この記事のURL

125件中 81~85件目を表示


<< 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 >>