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Krushライト級グランプリ2009 〜開幕戦 Round2〜
2009/8/13@後楽園ホール



 “Krush実行委員会”として開催される第二回大会にして、K-1ではなくキックの老舗舞台で企画実施される“60kgグランプリ”は、二回に渡る計16名選抜の中からベスト4が出揃った形になった。
 ずば抜けた存在感と内容を見せたのは、これまで雄弁に物を語り、キックボクシングというジャンルを背負う気概を表してきた石川直生。追い込まれダウンを奪われるも、目が覚めるような劇的大逆転KOをやってのけ、一夜に二度も後楽園ホールを底から沸かせてみせた。

ヒザやヒジのイメージが強かった石川がK-1ルールで開花したかのような連続ハイキックKOは、これまでのK-1の歴史と見比べても十二分に鮮烈な衝撃度。

しかし勝ってなお寡黙に佇む新しい石川が、一躍今回のグランプリの大本命に躍り出た、と私は推したい。

“大晦日出場”を大目標に掲げている石川の行く手を阻む包囲網はすでに出来上がっている。
かつてトーナメントで二度も苦杯を舐めている山本真弘、全日本キック新世代を切り開いてきたライバル・山本元気、他団体からの侵略者・“狂拳”竹内。
このメンツの中で勝てば本物も本物。さらに今回のような勝ちっぷりを見せてくれれば地上波テレビ側も黙ってないだろう。

決して地上波テレビに映ることが目的でないだろうが、大多数が一見さんの一般視聴者に届き響くことで石川直生の名前ととキックボクシングの存在のプロモーションとするべく第一歩とす。
今夜の石川ならそんな大いなる野望を現実化できるのではないか。
ハイキックの残像がいまだに焼き付いている中、思いっきり石川を後押ししたいモードなのである。

しかしながら、これだけは言いたい。
格闘技界の“黒い”事件がまたしても全日本キックに起こってしまった事実。およそ10年前にも内容こそ違えど全日本キックは崩壊の憂き目を見させられた。
またですか。格闘技がスポーツとして、競技として世間に認められ、親しまれる以前の、選手たちには何の関係もない問題で偏見に輪がかかってしまうのはどうしたことか。

結局、格闘技とは興行会社のプライベートな内輪イベントなのか、ひとつの確固たるスポーツジャンルとして統一ルール、統一機構を目指していくものなのか。
当然後者であってほしいと願う私は、キックに限らず格闘技界そのものの現況に憂いがある。
このテーマについては改めて書かせていただくとして、己を信じて、上を目指して磨き鍛えた成果を披露してくれる選手たちにどれだけ魅せられ勇気をもらっているか。

GAORAで観たいのに放送されないなんて悲しいではないか。
石川をはじめとした選手たちの奮闘を見て、格闘技業界そのものを考えてしまった。

あしきムードは“クラッシュ”してしまえ!
そんな意識で本グランプリに大成功してもらいたいものだ。

「KrushがK-1ライト級になってしまえばいいのに」
と以前私が書いた願いは事実上現実になった。
余儀なくされた新体制変更を新ジャンル開拓の好機として突き進め。
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DREAM.10
2009/7/20@さいたまスーパーアリーナ



戦前の不安が的中してしまった格好となった。世界には強いMMAファイターがまだまだたくさんいる。これが結論である。皮肉にも桜井マッハ速人というベテラントップ選手がリトマス試験紙となってしまった。これから世に出ていくのだから現時点で無名なのは当然なこと。新たなワールドクラスのニューパワーを発掘できたことで、DREAMという舞台がMMAの世界的底上げに貢献できたことになる。PRIDEがそうだったように、DREAMもあくまでも目指すところは世界市場であることが証明されたことで、日本に住む我々は今後DREAMに誇りを持って応援し続けるべきである。

目玉のウェルター級GPのファイナリスト4名の出身国は、日本、アメリカ、ブラジル、リトアニアと見事なバリエーション。限りなくアメリカ色で染められたUFCと差別化できる部分に真世界MMAブランディングへの道が見える。
日本のマッハvsリトアニアのマリウス・ザロムスキーによる真っ向打撃戦、アメリカのジェイソン・ハイvsブラジルのアンドレ・ガウヴァオンによるめまぐるしいグラウンドポジショニング戦と、UFCにヒケを取らないハイレベルな攻防戦を産み落とした。ライト級でもミドル級でもフェザー級でも非UFCのワールドクラスを創り上げているではないか。

日本では格闘技不況と叫ばれて久しいが、わざわざそんなネガティブな見方をしていくこと自体が間違っている。
格闘技自体はなくなるどころか世界的に技術体系は進化し競技人口は増加の一途を辿っている。
一時のバブル的ピークは引いたものの、しっかり存在している格闘技文化を地道に育み、牽引していくのがDREAMなのだ。

イケメンでなくてもいい、キャラはついてくる。格闘技そのもののスキルを持ち合わせた強い者がリスペクトされヒーローになっていけばいい。
今回の『DREAM.10』 は特に“地味強”が頭角を現した。それでいいのだ。

左右のハイキックで連続KOを奪いウェルター級の頂点に躍り出たザロムスキー。見た目はどこからどう見てもどこにでもいそうだが(失礼!)、リング上で魅せたファイトこそがザロムスキーの個性となる。トップファイターの仲間入りをしたばかり、今後ザロムスキーには名声がついてくる。

プロデビューから無敗でDEEP王者となり、DREAMにステップアップし、さらに強豪・ジダにKO完勝してみせた菊野は、礼儀正しい、純朴な好青年。笑うと目がなくなってしまうスポーツ刈りの格闘技一筋マン。格闘技を愛し格闘技を探求する。身近なお兄さんが格闘技界の鑑となる。かえって夢がある話ではないか。

青木だって川尻だって石田だって特段イケメンなわけではない(またまた失礼!)。繰り返し書くが、格闘技は見た目ではない。格闘技そのものをどれだけ本質的に極めんとするか。
それが日本のみならず世界レベルで探求道が深く広がっているのだ。

だからこそ、芸能的アプローチでテレビ視聴率競争見え見えの“にわか”人選に走ることなく、“地味強”道を突き進めばよい。格闘技が本当の格闘技として広まっていくために、DREAMはルックスやキャラ重視ではない完全実力主義で日本発世界の格闘技を極めていってほしい。

王者となったザロムスキーを奇をてらうことなくキャリアを積ませていけばいい。世界からどんどん無名の強豪ファイターを発掘し招聘し育てていけばいい。日本で名を上げたい、成功を掴みたいというファイターはたくさんいるはずだ。
日本からも菊野のような純朴ファイターがトップに駆け上がれば痛快ではないか。日本国内からDEEPや修斗など日本人選手の登竜門から着実に経験を積み上げた実績者に対世界の力試しの檜舞台を提供していけばいい。

あくまでもテーマは世界。UFCの勢力とは別価値のより広い世界を対象とした唯一無二の舞台を築き上げていくこと。しかし焦らず一歩一歩階段を登っていくように・・・。
DREAMに課せられた使命はPRIDEから継続してきたマニアと、新たにMMAの魅力にハマったファン、そして和製メジャーステージを目標とする選手たちの夢を叶えること。その過程に最短距離はない。
ナンバー100を数えたUFCだってそうだった。地道に着実に・・・。
DREAMはまだ10回。DREAMにしかできないことをひとつ一つ形にしていくこと。格闘技から得ることができる“夢”の尊さを体感したいがために我々はDREAMを見続けている。
DREAMが100に達したときは、世の中の格闘技に対する目は変わっているはずだ。
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DREAM.10
2009/7/20@さいたまスーパーアリーナ
直前コラム



10回目のDREAMの主役は桜井マッハ速人。新設されるウェルター級タイトルを決めるグランプリのベスト4唯一の日本人にホスト国・日本の期待が寄せられるのは当然だが、一株の不安もある。

前日計量でまさかのオーバー。三度目のトライでなんとかクリヤーしたが、主役たる存在は戦前のコントロールでもしっかり見せなければならない。
マッハに“甘え”がなければいいが・・・。

マッハ以外の3名の外国人選手は、マッハと比較すればネームバリューの劣るニューフェイス。
そこでマッハに“おごり”が出なければいいが・・・。

世界的MMA隆盛により、まだ名前はなくても相当強いという“未知強”ファイターが続出しており、さらに今後の浮上を控えている。

UFCを筆頭に新しい人材が輩出される中、日本からもウェルター級では郷野や長南もUFCに参戦するも黒星が上回ってしまった現実を思い知らされてきている。

マッハへの一番の不安は最近外国人選手との実戦から遠ざかっていることだ。
階級は同じでもパワーは階級越えの違いを持つ外国人との闘い慣れができていないこと、昨年に外国人と試合はしているもののタップアウトを喫してしまっていることがどうしても引っ掛かる。
万が一の結果になっても、もはや“フロック”や“ポカ”では済まされなくなってしまう・・・。

詰まるとこ、我々が本当に知りたいのは、マッハは今なお世界のトップランクファイターなのか、ということである。
比類なき強さでUFCの頂点に君臨しているジョルジュ・サンピエールや、チアゴ・シウバ、ジョン・フィッチなどのコンテンダーたち、またジェイク・シールズやロビー・ローラー、ニック・ディアズたちと、マッハは対等にやりあえる存在なのかどうか。

気が付けば、世界に通ずる日本人ファイターが少なくなってしまった今、マッハには世界の最前線でいてほしいという願いが託されるのだ。
だからこそ、このウェルター級GPくらい軽く制しちゃってもらわないと困る。

マッハは残された希望なのだから。
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K-1 WORLD MAX 2009
World Championship Tournament -FINAL8-
2009/7/13@日本武道館
○魔裟斗[2R 1'43" TKO]川尻達也●



MAXの象徴的スター・魔裟斗が立つ最後の“己の”舞台。大トリを張る魔裟斗なき後の主役は俺だ!と言わんばかりに新たな人材が日本から台頭してほしいと願う前に、気合い満面で奮闘してみせたのがトーナメントベスト4進出をもぎ取った山本優弥。執念が伝わる心のファイトは観る者の心に届くものだった。HIROYAも成長と逞しさを見せた。日菜太もナチュラルな歓声を誘ってみせた。まだまだ魔裟斗の牙城には遠く及ばないものの、食い気ある闘いぶりが見れたことは大きな収穫だった。一転、肝心のトーナメント及びリザーブマッチは山本優弥を除いて、まるで消化試合のごとき低調ぶり。サワーvsキシェンコは最高峰同士のシーソーゲームなのだが・・・。早くも魔裟斗完全不在のMAXに不安を覚えさせられた。しかし、この日は誰しものお目当てはメインイベントの“異種格闘技戦”。大会開始から4時間後、22時を回った頃にようやく来た本番を迎えたときのボルテージは近年稀に見るものだった。それにしても凄かった。

メインに行く前にひとつ。
会場人気では魔裟斗、川尻に次ぐ別格ぶりを改めて証明したKIDがまさかの豪快完全KO負け。
試合後のバックステージで「スランプだ、スランプだ」とまるで親のように心配していた谷川Pが印象的だった。
KIDのK-1でのやられっぷりは常に衝撃的。これもスターの要素となるのが格闘技という世界の特色である。

そんなKIDの後に敗者復活権を手に入れた佐藤と城戸だったが、とてもじゃないが魔裟斗の後を任せられない試合っぷりに言葉が出ない。本人たちは勝って満足かもしれないが、観る側のファンは正直だし甘くない。
こんなんなら、毎回川尻やKIDのように異ジャンルからトップファイターを招聘して異種格闘技戦を組んでいかないと興行が成立しないのではないか、という思いに至ってしまった。
しかしK-1での異種格闘技戦を担う者はエースの証を得た者のみ。佐藤や城戸が例えばどのMMAファイターとやれば面白いか。残念ながら思い浮かばない。

気を取り直して、メインイベントに移ろう。歓声合戦ではPRIDE〜DREAMの野獣的コアファンを味方につけることに成功した川尻だったが、リング上の勝負では歯が立たなかった。完敗だった。

戦前の宣言通り真っ向から臨んだ川尻だったが、フック系パンチで攻め入る場面を作り沸かせるも、大方は魔裟斗の勢いに飲み込まれてしまった。
キシェンコが魔裟斗からダウンを奪った左を意識していたのだろうか、川尻は左フックから入ることが多かった。そしてアッパーへの繋ぎ。されどクリーンヒットできず。ラウンド途中でガス欠状態に陥り動きも止まってしまった。川尻の何倍もの手数を見せた魔裟斗との差は明らかだった。
悲しいかな、これが現実だった。

「魔裟斗の攻撃は早かった」
と舌をまいた川尻は、
「辞めさせてしまうのはもったいない」
と谷川Pに漏らしたという。
それほどまでに魔裟斗は段違いに勝っていた。

ならば川尻は魔裟斗相手に健闘できたのだろうか。
あえて比較する。同じMMAファイターによる魔裟斗チャレンジで、魔裟斗からダウンを奪い目もつかせぬスリリングな名勝負を演じてみせたKIDに匹敵する内容を川尻は残すことができなかった。
男気は見せた。しかし3ラウンドもたなかった。格闘技ファン、マニアは川尻の心意気をよく分かっている。しかし、大多数のテレビ視聴者、つまり世間一般の目にはどう映ったのか。それが問題であり心配である。

KIDは判定までいったのに川尻は2ラウンドで負けちゃった。
KIDはダウン取ったのに、川尻はパンチを当てられなかった。
川尻はKIDより弱いのかな。
川尻は総合格闘技のトップ選手なのに負けちゃった。
総合格闘技はK-1より弱いのかな。

・・・・・・

平均視聴率15%、瞬間最高19.8%と高い数字を記録した中継で、たしかに川尻の名前を売ることはできただろうが、果たして川尻のファイトを世間に印象づけられたかは正直微妙である。
厳しい言い方をすれば結果的には魔裟斗の格好のやられ役になってしまった。
戦前こそ舌戦合戦で尋常なき盛り上がりに繋がったが、川尻の強さは出せず。

K-1はK-1、MMAはMMA、と競技が違うのだから強さの質も違うというのは当然な意見ではあるが、一般視聴者にその理屈は通用しない。

打撃を含有したものが総合格闘技、K-1を包括したものがMMA。だから総合格闘家はK-1でも強いし勝てるんです。
MMAファイターにはそんな姿勢でいてもらわない限り、もはや世間ではこんな構図で捉えられてしまいかねない。

K-1>MMA

DREAMがテレビ中継されていても、
「あ、魔裟斗に負けた人たちね」
と言われたら悔しいではないか。
しかし残念ながら世間とはこんなもんである。

だからこそ、川尻の結果と内容が残念で仕方ない。
川尻が対世間に失地回復するには魔裟斗にリベンジするしかないがそれは叶わぬ夢。
ならばホームリングのDREAMで魔裟斗戦の過去を思い出させないほどの闘いぶりを見せていかねばならない。

しかし同じDREAMには魔裟斗と接戦したKIDがいる。素人目にはこんな見られ方をしかねない。

川尻<KID

階級の違いは第一印象に及ばない。
DREAMではダントツ人気の川尻が本当の人気を得るには世間への浸透が絶対不可欠だ。
今回、川尻が魔裟斗に勝っていれば、せめて一度でもダウンを奪っていれば、川尻のバリューは大きく跳ね上がっていたはずだ。
川尻の知名度アップ=MMAの認知度アップ。川尻に課せられた期待度はあまりにも大きい。K-1での魔裟斗戦敗退という“負債”をいかなる形で帳消しにし、人気という利潤を得ていくのか。

日本での格闘技が、一般世間をも巻き込んだメジャー展開をしていくのか、コアなマニアの量を増やし質を上げ“ニッチ”で十分成り立つようにしていくのか、川尻の闘い方によって進む道が決まっていく。

私なら、もっともっと多くの人たちに格闘技に触れてもらい好きになってもらいたいたいと考える。
だからこそジャンル代表の川尻にはもっともっと魅せてもらいたい。魔裟斗戦ではもっともっと“らしさ”を見せて欲しかった。

格闘技が純粋に広く理解されて親しまれてほしい。
川尻のような決して派手ではない実力者がオーバーグラウンドに出てくることが、格闘技の真のメジャー化に繋がる草の根運動になると思っている。
“地味強”に世間をギャフンと言わせてもらいたいのだ。

川尻が何もできなかったことが悔しくて、いまだに引きずっている。
世間という厚い壁を打ち破らないと。
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K-1 WORLD MAX 2009
World Championship Tournament -FINAL8-
2009/7/13@日本武道館
直前コラム



世間的には主役は魔裟斗。ピークでの現役引退を発表してから残り2試合のひとつなのだから当然だ。MAXの世界トーナメントベスト8を差し置いてのメインイベント。かつて魔裟斗と劇的名勝負を繰り広げた戦友・山本KIDも花を添える。前売り券はソールドアウト。戦前から尋常なき熱気渦巻くことが確実視される日本武道館で、他の誰にも増して一世一代のチャンスを掴んだ男は川尻達也。本人も曰く「おいしい」大抜擢の中身次第で、今後の日本格闘技界のパワーバランスが大きく変わってくる。

K-1創始の根底にある思想は“異種格闘技”だった。空手、キックボクシング、カンフー、カポエラ、格闘技・・・分散化した格闘技ジャンルを統一ルールのもとでNO.1を決める。だから“K-1”だった。
15年を経て、技術体系が成熟し、競技人口も急増した今、誰も彼もが陥るマンネリの壁と向かい合わねばならなくなっているが、そんなときこそ“初心忘るべからず”、の異種格闘技戦なのである。

ジャンルを背負う者が率先して挑む道。アンディ・フグや佐竹雅昭がそうだったように、MAXでは魔裟斗が幾度となく異種格闘技戦に挑み、全てに勝利してきた。
K-1の中のキングは名実共に間違いなく魔裟斗である。
誰しもが魔裟斗と拳を交えたい、しかしそう簡単に叶うはずもない。

同じ日本人として、異種格闘技のMMA代表として、川尻が魔裟斗と肩を並べ、向かい合い、ファイトする。
そのシーンが一割以上の日本国民にテレビ中継で目撃されることになる。

今やK-1のFEGが管轄するMMAプロモーション・DREAMから選ばれた代表が、青木でも宇野でもなく川尻だった。
この事実からだけでも川尻はもっともっと奮起すべきだ。本人は外野に言われなくても決意で沸騰しているはずだが。
つまり、川尻がDREAMの絶対エース筆頭候補。プロモーターとテレビ局が認めたマッチメイクに川尻が“乗った”時点で今回の勝者と言える。

見た目の分かりやすさという点で世間の認知と惹き付けでK-1の後塵を排しているMMAだが、世界的なムーブメントは完全にMMAに分がある。
総合格闘技の先進国だったはずの日本で、ならばこれから先に必ずMMAが来るはず。川尻はこの重責を背負ったも同然だ。だからこそ川尻に声援を飛ばすしかない。

K-1もMMAも、日本が火付け役になった格闘技。どっちが上か下かではない、両方共に盛り上がってもらってこそ、格闘技文化が今後さらなる発展を遂げていくのだ。
MMAの認知も人気もK-1MAXに劣るというのなら、ここで川尻が一発ぶちかましてMMAここにありを証明してみせればいい。

大晦日に魔裟斗と対決して以来、押しも押されぬトップスターにのしあがった山本KIDのように、川尻が大ブレークしてみせるチャンス到来である。

誤解を恐れずに言えば、勝ち負けは関係ない。限られた3分3ラウンドという短い時間の中で、どれだけ『川尻達也』を見せられるかだ。
KIDは魔裟斗に敗れはしたものの、観客と視聴者を虜にし、その後の地位と名声を勝ち取った。
川尻の真骨頂はキャッチコピーにもなっている“クラッシャー”っぷり。恐れず前に出て、拳に全霊を込め、打つ。
魔裟斗とて、ガツガツに前に出るスタイルでMAXブランドを引っ張ってきた。
ある意味同じスタイル同士の一期一会、川尻が成すべきことは魔裟斗より一発でも多く観る者の心に拳を刻み込むことである。

立ち技打撃に専念した業界の頂点の方がK-1ルールのあらゆる局面で勝っているに決まっている。
一方DREAMの新看板は、立ち打撃のみならず、スタンドとグラウンドのグラップリング、ポジショニング、サブミッション、パウンドと日頃から何でもやらねばならない。
非K-1専門家の挑戦。しかし、川尻の打撃が魔裟斗を打ち砕く可能性はゼロではない。
だからK-1の異種格闘技戦が成り立つし面白いのだ。

魔裟斗は残り2試合。川尻はこれから真のトップを目指す。
魔裟斗は勝って当たり前。川尻は勝ったら世紀のアップセット。
ならば、ならば、ここは川尻に賭けてみないか? 一波乱起こしてもらおうじゃないか?

MMAというジャンルの隆盛を賭けて、川尻達也という選ばれしニュースターの誕生を期して、あえて川尻を応援することを決めた。

黄色いギャルとド太い野郎と武道館に渦巻く異種歓声合戦も実現するか。
魔裟斗が勝てばあっぱれ。川尻には何がなんでもかましてもらわないと。

川尻の大ブレーク前夜。遂に川尻がここまで来たんだと感慨もひとしお。
とにもかくにも、久々に戦前の高揚感が天井を突き抜けている。
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