スネークファームへ行くためにトゥクトゥクを拾った私。
最初は運ちゃんと世間話をしていたんですが「スネークファームへ行く前に、いいところに連れて行ってあげる」と、運ちゃんは言いました。
そこはタイのドレスを扱っていて、見るだけでドリンクが飲み放題になる素敵なお店なんだそうです。
タイではスパンコール尽くしのきらびやかなドレスが安値で手に入るという話を聞いていたし、何より飲み放題なので行きたいなと思ったのですが、ファームの講義開始時間が迫っていたので、断ることにしました。

ところが「今はいいので、ファームへ行ってください」と告げても、運ちゃんは退きません。
それどころか「飲み放題なのに何で行かないんだ」と、だんだん機嫌が悪くなってきました。
私は「いいから行ってください」とちょっと恐くなってお願いしました。
すると運ちゃんは細道に入り、どんどん路地裏に進んでいきました。
明らかに道が違うのは分かったんですが、どうしようもありません。

運ちゃんはまったく人気のなくなった細道でトゥクトゥクを止めると私を振り返り、「今から服屋に連れて行く。飲み放題だし、見るだけでいいから。そこを出た後にファームに連れて行く」と言ったきり、じっと私を見ています。
響くのはトゥクトゥクのエンジン音だけ。

恐ぇ〜〜〜〜!

もはや飲み放題なんて、なんの得にも感じません。
私は頑なに「お願いだからファームに行ってください。蛇を、蛇を首に巻きたいんです!!」と、なるべく相手を興奮させないように頼みました。
ギャングが出てきて周りを取り囲んでもおかしくないような町並みの中、私は初めて知らない土地の恐さを知りました。

沈黙の後、運ちゃんは黙ったまま向き直り、トゥクトゥクを動かしました。
私も身動きせず見守っていると、広い道路に出てどうやらファームに向かってくれたようでした。
やがて赤十字の看板が見えてきて、私はやっと安堵を感じました。
いやいや、タイなのに寒気がするほど恐かったです。

服屋は本当に服屋だったのか?
本当に飲み放題だったのか?
気になってしまうところが懲りていませんが、とにかくファームまで長い長い恐怖の道のりでした。
こんなこともあるので、女の子の海外一人旅はご注意ください。

と、安心したのも束の間、ファームからの帰り道、その恐怖は再びやってきたのでした。

恐怖は続く→
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