<前回までのあらすじ>
無実の罪で日本を追われ、タイへ逃亡した広田さくら。
航空券の罠を見破り、入国ゲートを突破し、空港で待ち構えていたFBIの追跡も振り切って仲間の待つカウサンへと向かうバスへ乗ると、突如、背後から謎の男が声を掛けてきた…。

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カウサンへ向かうバスの中、私に猛烈アタックをかけてきたのは、2人組の韓国人男性でした。
私が状況を整理しようとしていると、そのうちの1人がさらに詰め寄って来ました。

「だって君、まだホテル決めてないんだろ?僕たちもなんだ。だったら同じホテルに泊まればいいじゃないか」

何言ってんの、この韓国人。
確かにそのときの私は、“地球の歩き方”のカウサンロード安ホテルページをガン見して宿泊料を比べていましたが、だとしてもなぜ同じホテルに泊まるのか意味がわかりません。

でも私は気付きました。
もう始まっていたんだ。
そう、“勝手にウルルン”の幕は、もう上がっていたんです。
ここは私のユーモアと度胸の見せ所。
日本代表・広田さくら、咲かせて見せようタイ桜。

広:「わお、楽しそうね。あなたたちは観光?」

韓:「僕たちは営業に来ているんだ。僕の父がホテルを持っていて、今度タイにもホテルを作りたいから、今回はその下見さ。で、どこのホテルにする?」

私のいんちき英語と韓国人の韓国英語で会話は進んでいきます。
といっても、進んでいるのは向こうの話の展開だけなんですが。

それにしても、これはいわゆるナンパというやつでは。
しかも、相手は韓国のホテル王の息子です。
よく考えてみると悪い話ではありません。
私が「今日は私の誕生日なの」と言うと、「わお!コングラチュレイション。今日はお祝いパーティーだね」となりました。
まあ、当然の話の流れです。

でも気に食わないのは、二人連れのもう一人が全然話の輪に入ってこない事です。

「どうせなら、もっと二人して私を奪い合えよ!」

そう心の中で叫んだ私。

私の中での展開が、むしろ一番進んでいました。

→続く
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