シアターキノでは金曜の夜たまに,1回限りの作品を上映する。
今回観た『悪魔祓い,聖なる儀式』は,休日出勤となったため1度はあきらめたのだが,結局休日出勤しなくてよくなって(今月の労働時間が220時間超えるため)行けることになった。
珍しい作品を1回限りの上映なので,シアターは満員。
高名なエクソシスト,カタルド神父の日常を撮影したドキュメンタリーフィルムということで,ドキドキしながら観に行ったのだが…
案外,マイルドでちょっと拍子抜け。
ナレーションもなしなので,本当に淡々としていて誰の主観も入らない。
医学で解決出来ない不調や心の病を持つ人々が毎日,カタルド神父の元を訪れる。
明らかに本人のものとは思えない声で聞くに絶えない恐ろしい言葉を吐いて暴れたり,祈りの言葉を嫌がりのたうち回って苦しむ,いわゆる"悪魔憑き"の人たちが何人か映った。
結構,怖かった。
本当に"悪魔憑き"ってあるのかなぁ…と思いながら見ていた訳だが,悪魔が体の中から出て行って倒れるとき,安全な倒れ方の人が多かったような気がしたのは私だけだろうか。
ある場所では,倒れる人を怪我をしないように受け止める係の人がいた。
最初に意識を失って倒れた男性はその係の人に受け止められ床に仰向けに横たえられたのだが,パンツのベルトからトップスが完全に出てお腹がはみ出してしまう。
一瞬,手が,お腹を庇うような動きを見せた。
2番目に倒れたのはかなり雄大な体格の女性だったのだが,係の人が受け止めそこね,思いッ切り最初に倒れた男性の上に倒れてしまった。
ぎぁっ!!という感じで飛び上がりかけたところが一瞬映った(笑)。
いや,別に最初からウソくさいと思って観てなどいないのだが…
どうも信仰心の薄い国民性のせいか,藁にもすがる思いで依頼してくる人たちを気の毒には思うし,毎日殺到する依頼者たちの悩みに耳を傾けるカタルド神父の姿には本当に胸を打たれたのだが,それとは別にどうしても虚構にしか見えないシーンがあったのは事実。
話は変わるが,エクソシストは電話対応でのお祓いもやっている。
『テレフォン・悪魔祓い』といった感じだろうか?
顔は見えなくても,スマホ越しで断末魔の大絶叫に向かって祈り続ける…電話の仕事をしている私はよく耐えられるなあと感心した。
そのうち電話やチャットでお祓いをする,エクソシストのコールセンターまで出来るかもしれない。
そんなことを考えつつ,心から困り果てて相談に来る人たちの姿を胸を痛めて観ていたら,
「雇い主が…給料を払ってくれないんです…!!」
と訴える人がいて,申し訳ないが笑ってしまった。
どうもその人物,お門違いな相談の常習者らしく,神父の対応もさっぱりめだが,「2分だけだぞ」と時間を取ってくれる。
で,「払わないなら訴える,と言いなさい」と答えて去ってゆく(笑)。
知らないうちに恋人に暴力をふるってしまうことで「悪魔が憑依するのだ」と相談する,首にまで刺青をした若者は,実家に物を取りに帰っても開けてもらえないという可哀想な青年。
彼は神父に会うためのアポの順番に納得がゆかず,また,神父と会っている間は憑りついた悪魔が暴れずに落ち着いているからというので後回しにされることでクレームをつける。
何とかしたいのにどうにもならないもどかしさが伝わってきて胸が痛んだが,その青年がヤケクソになりドラッグをキメるシーンが。
ダメじゃん!!
自分の暴力癖を悪魔やドラッグのせいにしたいだけなのかもしれない…と思ってしまった。
お祓いしてもらっている家族を応援しようと,神父の横で負けないくらいの声を張り上げ,悪魔を罵り立ち退ける言葉を吐き続けるオバチャン。
神父が冷たい目で,
「…気が散るから,別の部屋で祈りなさい」
とたしなめたのが印象的だった。
神父様は毎日大忙しで,ストレスも溜まるんだろうなあ。
私が楽しみにしていたのは,エクソシストを養成する学校みたいなのが映ると聞いていたこと。
だが,それは最後のたった何分かで登場しただけだった。
今,エクソシストは売り手市場らしく,世の中が世の中だからとにかく人手が足りてないらしい。
世界各国からいろんな人種の人たちが,受講しに来ていた。
どんな授業をするのかなと思っていたのに,授業シーンは映らず,学食みたいなとこで研修生たちが話すのを1人ランチのカタルド神父が聴いているとこが出てきただけでションボリ。
ビックリしたのが,カタルド神父,かなりの量のお食事をトレイに盛っていたこと。
そういえば,結構ガタイのいい方だったなあ…
毎日悪魔と闘ってるんだから,栄養もたくさん摂らなきゃならないんだね!!
ずっと憑りついてた悪魔が出てゆき,別人のように健康的にきれいになった女性がいたっけ。
でも,すぐにまた「何かいる」感覚が始まり,不安に顔を曇らせる。
出て行ったばかりの悪魔が戻りたがって「呼び戻し」をしているんだそうだ。
うああ…一度憑りつかれたら大変なんだなぁ…とげんなり。
最後は,「…今,世界中でエクソシストが急増しているという…」というテロップで終わっていた。
淡々とし過ぎていて何となく物足りなかったが,知らない世界を見ることが出来,エクソシストという仕事の大変さだけはよく理解出来た。
さて,これで今月の映画鑑賞は打ち止め。
今月は10本観た訳である。
来月は運よく1日か2日が休みになればいいな。