ソフィアはとうとうアントニオとの離婚を決め,ギャラクシーを売る前に皆で旅行をしようと提案する。

人手に渡る前にさんざん乗り倒したいというのもあったろうが,何より「私物を取りに戻ることになっているアントニオと顔を会わせたくない」というのが主な理由だったろう。

海辺のホテルに宿泊し,家族たち(おばあちゃんとアデラは留守番)は楽しいときを過ごす。

レストランで夕食時,ソフィアはとうとう子供たちに離婚したことをはっきりと知らせるのだった。

1人だけ父の浮気を知っていても,兄弟に話すことを口止めされており,ずっとストレスを溜めていたトニオもいくぶんかは楽になったようだが,はっきりと離婚を知らされたら知らされたでショックだったらしい。

食後みんなでアイスクリームを食べるときにしょんぼりしていた姿が,ひどく印象的だった。

つらかったね,もう一人で抱え込まなくていいんだよ,えらかったね…と言って抱きしめてあげたくなった。

だって,アイスクリームなんて,しょんぼりしながら食べるものじゃないからさ…!!

この旅行は言わば,アントニオなしでのこれからの生活を皆で頑張ってゆこう…という一家の決起会と,死産したクレオを励ます会のようなもの。

精一杯旅行を楽しみ,思い出を作る家族たち。

旅行の最終日は海でたっぷりと遊ぶ。

「あまり遠くへ行っちゃダメよ…私,泳げないんだから…」

クレオが一番小さいペペを浜辺に戻して体を拭いてあげている間に,今度はパコとソフィが海に入ってゆく。

私にも経験があるのだが,子供の頃初めて海に入ったとき,私はあまり水を怖いとは思わなかったクチで,波が来る度体が浮くのが面白く,唇を紫色にしながらもどんどん沖に入ってゆこうとして親から何度も連れ戻された(笑)。

多分,パコもソフィも幼くてまだ海の怖さが解らなかったのだろう。

クレオが「遠くへ行っちゃダメ!!」と叫ぶのも聞こえない程,どんどん行ってしまった。

不安を覚えたクレオは金ヅチだというのに,2人を連れ戻しに危険をかえりみずに海へ入ってゆく。

大きな波が何度も押し寄せる中,パコとソフィの名を呼びながら。

この海のシーンは驚異のワンカット撮影で,臨場感のある波の音も相まって,物凄い迫力だった。

正直,怖かったもん。

あれ,本当にどうやって撮影したのか…パコとソフィの頭が見えたと思ったらまた沈み…クレオも溺れちゃうんじゃないかと本当にハラハラしたよ…!!

あのシーンは劇場で3度が3度とも,「頑張れ…!!クレオ,頑張れ…!!」と祈りながら観てしまった。

何とか2人をつかまえて浜辺に生還したクレオ。

ソフィアもトニオもやって来て,無事でよかったよかった…とクレオをみんなで抱きしめるのだった。

そのとき,クレオがぽつりと口にした衝撃の言葉。

「本当は…産みたくなかったの…」

勿論,フルティン野郎との子供のことである。

「産まれてこなきゃいいって…思ってたの…」

そう吐露して涙を流す。

そんなことを考えていたら本当に赤ちゃんは死んでしまった…赤ちゃんを死なせたのは自分のせい…だから,絶対にパコもソフィも死なせる訳にはゆかない…そう思って命の危険もかえりみずに,クレオは海へ入って行ったのだろう。

そんなクレオを抱きしめながら,家族たちは言うのだった。

「私たち…クレオが大好きよ」

そのシーンが,この映画のポスタービジュアルになっている。

絆を深めた家族たちは家へと帰って来る。

本棚はすべてアントニオが持ってゆき,広い家の中はがらがらに。

だが,留守中おばあちゃんが子供部屋を模様替えしてくれていて,子供たちはいたく気に入って大はしゃぎ。

笑顔で迎えてくれるアデラに,クレオは「話したいことがたくさんあるの」と笑顔を返す。

コレ,何か,いいセリフだったなぁ。

そして,帰るなり早速クレオはお仕事。

洗濯カゴを抱えて離れの屋上へと階段を昇ってゆく。

抜けるような青空(白黒なんだけど,それが分かるの!!)が広がり,やはり飛行機が…

画面には「リボへ」と字幕が表示され,エンドロールが始まる。

このリボという人物は,監督の育った家に勤めていた家政婦さんの名前で,この映画は何と自分の子供時代を振り返ると共に,彼女との思い出を懐かしむために作ったものらしい。

自分を世話してくれたリボへの,映画によるラブレターといったところか。

本当にしみじみと心が温かく潤ってくるような映画で,大好きになってしまった。

2週間で1日1回の限定上映だったので,全くの休日に1回,出勤前に無理やり早起きして1回観に行ったのだが,あまりの評判の良さに1週間上映期間が延長された。

そのため,3回観られたのである…感謝!!

で,この映画もDVDが発売されたら絶対に買うつもりである。

(『ROMA/ローマ』あらすじと感想・完)
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出産間近のクレオを連れて,おばあちゃんは家具量販店にGO竜馬。

ベビーベッドを見繕ってあげようというのだ…優しい…!!

ただ,やけに街には人通りが多く,学生のデモが行われている様子。軍隊もいて…ひじょうに物々しい雰囲気。

クレオとおばあちゃんが一緒にベビーベッドを選んでいる最中,店の外が騒がしくなったので,専属運転手(名前忘れた)が心配になって窓から街を見下ろすと,銃声がしてデモ行進の人々と軍隊とが衝突を始めた。

映画の時代設定は1970年代なのだが,大戦後メキシコは順調に経済成長を重ねてきた分格差も生んでしまったため,不満分子や現政権に反発する人々がたくさん出てきたのである。

大変だわ…とおろおろしているところへ,「助けて!!助けて!!」と悲鳴を上げて売場に逃げ込んで来た2人組。

その2人組を追いかけて乱入してきた武装集団に,売場にいた客や店員たちは凍りつく。

武装集団は躊躇なく2人組のうちの1人に発砲。他の客たちにも銃を向け,逆らうなと脅すのだが…

何とクレオたちに銃を向けている青年が,誰あろう"フルティン野郎"フェルミンであった…!!

フェルミンは,反政府デモに参加している学生たちを弾圧するべく政府に雇われた武装集団の一員だったのである。

自分を捨てた相手とのあまりに残酷な再会にショックを受け,立ちすくむクレオ…

そのクレオを,盾になって必死に庇うおばあちゃんの姿に感動していたら,フェルミンは銃を下ろして去って行った。

自分の子を宿した女を撃てるのか?!…これで発砲したら人間じゃないわ!!…とはらはらしながら観ていたからホッとしたよ。

あばよ!!もう2度と会うことはないだろう…!!…と,柳沢 慎吾バリにクレオが思ったかドゥかは不明だが,ショックで破水してしまう。

3人で家具店を出て,まるで戦場のような街をくぐり抜け車までたどり着くも,今度は大渋滞。

病院に着くまで,おばあちゃんはクレオの手を握ってずっと励ましてくれていた。

ようやく病院に到着。受付で,雇用している家政婦が破水したと告げ,何とか担当医の優先的な診察を取り計らってもらえる。

分娩室に搬送ちう,エレベーターで今度はアントニオに遭遇。

カナダに長期出張しているという建前になっているものの,バッチリ遭遇しといてスルーするのも不自然と思ったのか,きまり悪そうに言い訳じみた言葉をかけるのだった。

アンタ,身内の出産なんだからもっと親身になって付き添ってやれよ!!…と思ったが,仕事の忙しさにかこつけて上っ面だけの気遣いを見せ,その場を離れてゆく。

本当にクズい奴だ…!!

さあ,いよいよ分娩室で大出産だ…と思いきや,医師が,「胎児の心拍音が聞こえてこない…」と眉をひそめるではないか。

そ…そんな…!!

あっという間に赤ちゃんは取り上げられ,女の子と判明するもやはり死産…!!

懸命に処置を行うも,蘇生せず…

息をしない新生児を泣きながら抱きしめるクレオだった。

これというのもすべて,あのフルティン野郎のせいである。

チソコが根本から腐って取れてしまうがいいのだ…!!

お下品ですいません!!

(続く)
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人目はばからず甲高い声を上げながら走り去ってゆくバカップルを見て,私も,「あれ?この男,ペペたちの父ちゃんじゃ…?」と思った。

そしたら,トニオたちに追いついた親戚の少年が,「君のお父さんが走ってったよ…?」と指摘するではないか。

父親を信じきっているトニオたち兄弟は,「絶対に違うよ。パパは今カナダにいるんだから」と即・否定。

複雑な表情のクレオだが,余計なことは一言も発さず。

場面は変わり,バスに揺られるクレオ。一人で休日お出掛けらしいが,浮かない表情である。

降り立ったところは,泥道だらけの小さな村らしきところで,選挙カーのような音声が聞こえ,広場では祭なのかイベントなのか,トランポリンに向かって人間が大砲から発射されていた。

クレオが歩いて行った先は,下ッ手クソなバンド演奏の練習ちうのラモンの家。

「フェルミンの居場所を知らない?」と訪ねて来たクレオにあまりいい顔をしなかったラモンだが,彼女であるアデラが「ラモンなら教えてくれるわ」と言った…と聞いてはむげには出来ず。

バンド仲間に車を出してもらい,フェルミンが武術の練習に励むグラウンドへ連れてゆくのだった。

笑ったのが,暑かったからかタンクトップにトランクスというマヌケな格好でギターをかき鳴らしていたラモンが,うっかりそのまま出かけそうになって,「おっと…パンツ履くわ」と慌てて家の中に引っ込むところ(笑)。

グラウンドでは100人近くの生徒が,掛け声と共に棒を刀のように一斉に振り回しており,女や子供たちが見物していた。

ずいぶんたくさんの門下生というか練習生がいるんだな…何の武術なんだろうか…と思っていたら,どこからともなく「ゾベック先生」という師匠が出現し,生徒たちの前に立つ。

オールバックにポニーテールの長髪,昔は鍛えていたのだろうがだいぶ脂肪に底上げされている感じの,背は高いがむちむち気味の男性である。

特撮の怪しいヒーローかプロレスラーのようなショルダータイツ姿であまりカッコ良くはなく,それにしても,どこかで見た顔だな…と気になり始めた。

先に書いてしまうが,この「ゾベック先生」を演じていたのはAAAの(今はどうだか知らないが)ラティン・ラヴァー。

いっときストリッパーキャラでブイブイ言わせていたプロレスラーだったのを覚えているが,もうかなり歳だろうに。

まさかこのような映画に出演しているとは思わなかった。

生徒たちの前に立ったゾベック先生は,「これから一芸を披露する」と厳かに宣言し,1人の生徒を指差して招き寄せ,目隠しを頼むのだった。

どんな凄い芸を見せてくれるのか…と期待を込めたまなざしで見守る生徒たち。

しかし,頭上でピラミッド形に手を合わせ,脚を4の字にして片足立ちするだけのゾベック先生。

(芸って…これがかよ…?)
(勿体ぶった割には大したことねえな)

あちこちから失望の声が洩れる。

だが,ゾベック先生は,「このような芸は大したことではないと思っているね?だが,これは鍛練を極めた者だけに可能な,高度な妙技なのだ。嘘だと思うならやってみるがいい」と言い,その間も微動だにしないまま。

試しにやってみる生徒たちと見物人たちだったが,皆一様によろけて,しっかりと立てないのだった。

その中でなぜかクレオだけが,目を閉じてしっかりと片足立ち出来ている。

あの不思議なシーンには何かの意味があったのだろうか…と,気になったが,実は3回観ても解らなかった。

練習が終わったフェルミンに声をかけるクレオ。

「ラモン…あのデブ…」と呪詛の言葉を口にし,無視こそしなかったが,あからさまにうっとぅしそうな様子。

「私,妊娠してるの。あなたの子よ」

直球なクレオだが,「だからフェルミンにどうして欲しいのか」は言わない。

予想通り,いや,予想以上にフェルミンの取った態度はひどいものだった。

認知しないばかりか,棒を構え突きつけて嚇しながら,たかが家政婦ふぜいが,もう自分の目の前に現れるなよ…とまで言ってのけ,仲間たちと車に乗って去ってしまうのである。

かえって気持に区切りをつけられてよかったのではないかと,私なんかは思うのだが,まだ若く,おそらくフェルミンが最初の相手であったのだろうクレオが可哀想でならなかった。

家ではソフィアが友達にヒステリックに電話で愚痴っていた。

ソフィアはアントニオが浮気をしていることを知っていたらしい。

「あいつ,カナダになんていもしないクセに,『景色がきれいだ』とか何とか,嘘の手紙を書いて来たのよ…!!」

部屋の中から聞こえる母の声のただならぬ響きに,心配顔でドアの外で聞き耳を立てるトニオだったが,ショックを受けて固まっているところに出てきたソフィアに,「盗み聞きするなんて,何て子なの!!」とぶたれてしまう。

駆け寄って助け起こすクレオ。

すぐに後悔して謝るソフィアだったが,「他の子たちには絶対に(父の浮気を)喋っちゃダメよ」と言い聞かせる。

そんな訳で長男トニオのストレスが溜まり,そのせいで兄弟の間もぎくしゃくし始める。

トニオとパコが一歩間違ったら命を落とすのではないかというほどの喧嘩をするシーンがあった。

トニオが咄嗟によけたから当たらなかったのだが,ささいな原因で取っ組み合いをした後,パコが重い灰皿を投げつけたのだ。

開き直って恋人と住み始めたアントニオが家にお金を入れないことを嘆くソフィアだったが,彼女をなだめ,「しっかりしなくちゃダメよ」と慰めるおばあちゃんもつらそうだ。

夜,外出から帰ったソフィアがケラケラ笑いながらクレオの頬を撫で,「私たち女はいつも孤独…!!」と自嘲的に囁くシーンは胸が痛んだ。

ゲスい男に苦労させられるという共通点を持つクレオとソフィアは,身を寄せ合い力を合わせて生きてゆくしかないようであった。

(続く)
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ある日の映画館,イチャコラベタベタしてくるフェルミンに,「私…生理が遅れてるの」と打ち明けるクレオ。

その場では,「いいことじゃないか…!!」と言いつつも,もうすぐ映画は終わりというのに「我慢出来ない」とトイレに立つフェルミン。

あ,絶対コイツ,バックレる気だ…と思ってたら案の定,座席には戻って来やがらない。

しばらく映画館の前で待ってからションボリして帰るクレオの姿が,哀れだった。

もし妊娠していたら,お手伝いの仕事は辞めなくてはならないのだろうか…不安を胸にソフィアに相談することに。

クレオの住み込んでいるおうちは裕福で,子宝にも恵まれ一見しやわせそうなのだが,アントニオは仕事から帰るなり家事のダメ出しをして寝るだけ,出張でカナダに行くと言って素っ気なく出て行き(家を出る際,ボラスのウンチョスを踏む),何だかソフィアはピリビリしている。

「お父さんに絵つきの手紙を書きなさい」と,子供たちに強制し,自分の部屋で書くと言った子を怒鳴りつけたり。

でも,クレオが思い詰めた顔をしているので,態度をやわらげ話を聞いてあげるのだった。

「私…クビですか?」

泣きそうな顔で妊娠の可能性を打ち明けるクレオを,「心配しなくていいわ」と手を握り,ソフィアは元気づける。

電気を無駄遣いしないように見張ったり,アントニオがボラスのウンチョスを踏んだときには「フンの掃除をしろって言ってるでしょ!!」と怒鳴ったりするが,やはりクレオのことは家族同然に考えているようだったから,ホッとした。

早速クレオを検査のため,アントニオの勤務先の大病院に連れてゆくソフィアだが…まー運転の荒いこと。

駐車場に停めるときは,他の車にぶつかって引きずった部品?をそのままにしてドアを閉め,病院へ入ってゆく。

別のシーンで車庫入れしていたが,その入れ方が,慎重なアントニオと違ってガッツンガッツンぶつけながらだったし(笑)。

…気をつけて見ていると,かなり動作ががさつな女性なのだ。

クレオを産婦人科医に預けて,検査の間,自分は夫の同僚をつかまえては「夫はそんなに忙しいのか」と根掘り葉掘り尋問。

やはりクレオは妊娠していたのだが,ソフィアがおしゃべりしている間,新生児室を見物してくれば?と言われる。

保育器に入って並んでいるたくさんの赤ちゃんをガラス越しに眺めながら,クレオは何を考えていたのだろう…

そのとき,大地震が発生。

すぐにおさまったのだが,何せ音がひじょうにクリアで臨場感のある映画なので,あの地震のシーンは怖かったの何のって。

アントニオの出張が長引き,クリスマスも帰って来ないというので,ソフィアは子供たちを連れて仲良しの親戚(友人?)の屋敷で年を越すことにした。

クレオも同行する。

この親戚の屋敷というのが大豪邸で,何十人もの宿泊客を受け入れても大丈夫なくらい。

ちょっとビックリしたのが,歴代の飼い犬の首を剥製にしてずらりと客室に展示してあること…!!

広大な敷地内をピクニックや散策,狩り三昧。夜はパーティー三昧。

そのパーティーが行われる広間にも,いたるところに動物の剥製が陳列されているのだった。

もう1つビックリしたのが,メキシコにも日本でいうところのナマハゲのような扮装をして子供たちを脅かす風習があるらしいこと。

毎年お邪魔しているのか,その屋敷の使用人たちとも顔見知りらしいクレオが,使用人たちの飲み会に誘われ参加していたとき,酒を口にしようとしたら,後ろで踊っていた2人組に派手にぶつかられて杯を落とすシーンがあった。

割れた杯が意味あり気に映し出され,クレオのこれからの不穏な未来が暗示されているような気がしてならなかった。

飲み会の後,自分の宿泊する部屋に戻ろうとしたクレオは,廊下で後ろから男性に抱きつかれて悲鳴を上げているソフィアを見かけ,ハッとなる。

「寂しいだろうから慰めが必要かと思って」などとぬかす男を激しく拒否して追い払うソフィアだったが,クレオに気づき,互いに何とな〜く気まずい雰囲気に…

その夜,山火事が発生。

皆でバケツリレーをしながら火を消すのだが,パチパチと火が燃える音も物凄くリアルだった。

皆が消火活動にいそしむ中,メキシコ版ナマハゲが仮面とかぶりものを取り,一人で歌を歌っているシーンがめちゃくちゃ謎だった。

応援の歌?…にしては悲しげだったのだが,「アンタも火を消せよ」と言いたかった(笑)。

親戚宅で年を越したソフィアと子供たちは家に戻って来た。

子供たちは連れて来たいとこたちを伴って,おばあちゃんとクレオの引率で映画を観に行くことになった。

一緒に歩きなさい,離れてはダメよ…と注意されても聞きやしないトニオとパコを追いかけ,クレオは走る。

映画館前の売店でたむろしているトニオたちをようやく見つけたクレオだったが…

傍若無人な嬌声を上げながら若い女が,カナダに出張しているはずのアントニオと脇を走り抜けて行ったので,ぎょっとするのだった。

(続く)
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最近じっくりと映画の感想を書いていなかったのだが,とにかく次々と劇場公開作品を観に行かねばならないのと,帰って来たら来たで借りたものや録画したものをやっつけなくてはならないため,書く時間が本当に取れない。

自分で思い出を振り返るためにも,本当に好きになった映画の感想は書いておきたいので,先月観た『ROMA/ローマ』の感想を。



この映画は第91回アカデミー賞外国語映画賞と監督賞,そして撮影賞を受賞した作品である。

Netflixの映画ということは知っていたが,ガラケーしか持っていない私はNetflixを視聴出来る訳もなく(笑)。

何だか凄く評判が良いので気になって仕方がなかったのだが,いよいよ春から日本の映画館でも上映決定。

シアターキノでも5月中旬から1日1回2週間の限定上映が決定し,いそいそと出掛けて行った。

もお,素晴らしい!!の一言に尽きる…!!

白黒なのに豊かな色彩と光を感じさせる,やわらかくもつややかな映像,すぐそばで家事が行われている,誰かがおしゃべりしているとしか思えないようなクリアな音。

何だか自分もその映画の中で生活しているかのように,私は入り込めた。

ストーリーはこれといってドラマチックではなく,1970年代のメキシコ,ローマ地区に暮らすある家庭の1年間ほどの出来事を,お手伝いさんの女の子クレオの視点で描いたもの。

オープニングからもお,心を根こそぎ持ってゆかれた。

映し出されるのは床タイル…おそらく掃除中で,タイルをブラシでこすっているとおぼしき音がする。

次にホースで水を撒いているらしい音が聞こえ,タイルの上を洗剤の泡と一緒に水がゆっくりと流れてくる。

なかなかすぐには排水されないので水溜まりが出来るのだが,その水溜まりに窓枠らしきものと空が映り,さらにはその空を飛行機が通過してゆくのだ。

このオープニングで,空を臨むことの出来る天窓か吹き抜けのある庭or玄関を有した家庭なのだ…と分かる。

ここで,主人公のクレオが登場。

地味だが長い黒髪が美しい,少しずんぐりめの女の子で,若く健康的な魅力にあふれている。

もおね,私くらいの年齢になると,若いってだけで美しく見える訳よ(笑)。

で,どことなく松嶋 菜々子に似ている(笑)。

続いて家の中が水平移動で映し出されるのだが,ラジオから流れる音楽に合わせて鼻歌を歌いながら洗濯するものをまとめている。

家族構成はこんな感じ。

医者である父親アントニオと母親ソフィア,おばあちゃん(名前忘れた…),そして長男トニオ,長女ソフィー,次男のパコ,末っ子のペペ,犬のボラス,運転手兼下男がいて,お手伝いはクレオと同じく先住民の娘アデラ。

クレオとアデラは2階建ての家の横にある離れに住み込みで働いているのだった。

いつもおだやかでにこにこしているクレオを子供たちは皆大好き。

だが,クレオは特別末っ子のぺぺが可愛いらしい。

ぺぺを幼稚園に迎えにゆくのはクレオの仕事。

離れの屋上で洗濯物を干すときに,一緒に死んだふりをして寝転ぶシーンはなかなかよかった(笑)。

オープニングで掃除されていた場所はどうやら車庫代わりに使われているスペースで,父親のアントニオが高級車ギャラクシーで帰宅するシーンで判った。

なかなかギリギリなスペースで,車を入れるシーンでははらはらしてしまったよ。

ビックリしたのが,相当に裕福な家庭らしいのに,そのスペースにはやたらと犬のフンが落ちていたこと。

ていうか,オープニングのシーンで掃除した後に?飼い犬のボラスがウンチョスを量産したというのか?

少なくとも5~6ヶ所に落ちてた(!!)。

夕食後,家族みんなでソファーでテレビを観ている団欒シーンではクレオも一緒になって笑っていたことから,やはりお手伝いさんではあるが,家族も同然の扱いであることが分かる。

家族が寝静まってから,クレオが1つ1つ電気をパチン…パチン…と消してゆくシーンも好き。

仕事が終わって,アデラと一緒に蝋燭の灯り(ソフィアが電気を無駄遣いしないようにうるさいらしい)でお祈りをした後,美容体操をして眠る。

クレオは子供たちを毎朝起こしてくれるのだが,その起こし方の素敵なことといったら…!!

耳元で,小さな声で歌を歌いながらそっとくすぐる,優しい起こし方で,あれならどんなに寝起きの悪い子供でもにこにこして目覚めるだろうな。

前半しばらくは,この家庭の日常とクレオの生活がどんなものかを見せられる。

クレオとアデラにはちゃんとお休みの日もあって,それぞれのボーイフレンドと一緒にWデイツなんかもするのだった。

4人で映画を観ることになっていたが,クレオの彼氏フェルミンが「せっかく天気がいいから」と言って別行動を提案。

このフェルミン,クレオとアデラがランチを摂っていたカフェにラモン(アデラの彼氏。メタリカのロバート・トゥルジロと佐々木 大輔を足して割ったようなビジュアル)と一緒に迎えに来るのだが,クレオの残した飲み物をわざわざ店の中に引き返して飲み干すような意地汚さを見せたため,第一印象はかなり悪し。

「天気がいいから」とか言って,外でも歩くのかと思いきや,いきなりラブホみたいな場所に。

全裸のフェルミンがシャワールームのカーテンレールのバーをとっ外したかと思うと,いきなりそれを気合い&掛け声もろとも振り回し,武術の型らしきものを披露するからビックリ。

しかもフルティン,モザイクなしで!!

ひとしきりバーとチソコを振り回した後,「アリガトゴジャマシター」と日本語でお辞儀をし,ベッドにいるクレオに,グレていた自分を救ってくれたのは武術であり,武術だけが俺の友だ…などと打ち明ける。

優しく包み込むような笑顔で耳を傾けるクレオ。

ふーん…お手伝いの仕事をして生活するかたわらで,ちゃんとこうして青春も謳歌しているのね…と思って観ていたが,やはりフェルミンの第一印象から来る私の予感は的中。

このフルティン野郎・フェルミンはとんでもなくゲスい奴だったのである。

(続く)
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