『花咲くころ』の感想記事の続き。
いつものように配給のパンをもらうため列に並んでいたエカとナティアだったが…
何と,公衆の面前で,コテが仲間の不良少年たちと共にナティアを無理矢理車に乗せ,連れ去ってしまう。
必死でナティアを拉致らせまいと喰い下がるエカだったが,所詮は多勢に無勢だった。
並んでいた大人たちの誰一人として慌てて助けに入るでもなく,ただ傍観するのみ。
考えられないことだが,この時代のジョージアでは皆,自分のことだけで精一杯で他人が拉致られようが暴行されようがどうでもよかったのだろう。
エカはそんな大人たちに対して,そして世の中に対して鬱積した不満が噴き出し,非難の言葉を口にしながら喰ってかかるのだった。
だが,喰ってかかった大人のうち1人の男性から殴られてしまう…ひ,ひどい…
さらに信じられなかったのが,すぐに切り替わった次のシーン。
ナティアの肩に手を回したコテ…周りにはエカも含めて学校のシーンで写っていたクラスメイトたち。
ナティアもにこにこ笑っており,コテとはラブラブに見える。
何と,コテの家で行われている2人の結婚披露宴なのだ…!!
楽器を奏で,飲めや歌えの大騒ぎ。コテの両親もナティアの家族も,地域の人たちもいて皆が2人を祝福している。
そんな中で,殴られた右眼にアザを作ったエカだけが暗い顔をしていた。
トイレにナティアを呼び出したエカは,「コテを愛しているの…?」と尋ねる。
何と,コーカサス地方では少年が思いを寄せる少女を誘拐して家に監禁し結婚を強制して夫婦になる…というのが古くから行われているらしく,珍しいことではないらしいのだった(!!)。
結婚の年齢もひじょうに低く,中学生になるならずでこうして夫婦になって,女の子の方は家庭に入るパターンが一般的らしかった。
ナティアの答えは,「分からない…多分,愛してると思う」というもので,エカは何よそれ…とガックリきた表情。
流されやすいというか…おそらく「私のことを好いて(求めて)くれる人はみんな好きよ」というタイプなのかもしれない。
ナティアは,「私の結婚を喜んでくれないの?」とヘソを曲げる。
その後,女子だけにナティアが打ち明ける話によると,「閉じ込められて,作業を手伝わされたわ。どうせ逃げられないと思ったし」という,「そんなに嫌でもなかったから結婚することにした」的なもの。
エカの中で何かが壊れたのか,ひっそりと取り上げた酒のグラスをくいっと飲み干し,踊り騒ぐ大人たちの輪にゆっくりと入ってゆく…
そして,何かに憑かれたかのように一心に踊り始める。
この踊りが美しく,なかなか見事で5分くらいある長回しのシーンだったのだが,何となく微笑ましく見ていられるようなものではなかった。
皆,手拍子しながら喝采するが,だんだんとアップテンポになってくる音楽に合わせて一心不乱に踊るエカの眼は哀しそうで,でも懸命に「負けてたまるもんか…」というような炎をたたえており,見ていて胸が痛んだ。
ナティアは,エカが自分の結婚を祝うために踊ってくれたのだと思い,駆け寄って抱き締める。
違う。エカの踊りは『よろこびの舞』などではなかった。
友達たちも次々に寄ってきて,抱き合い…披露宴は大いに盛り上がっておひらきとなった。
その翌日,エカが朝食を取りながら母親と言葉を交わすシーンがあったが,「父さんは…コプラのお父さんを殺したの…?」と尋ね,母親が黙り込んだことからおそらく返事はYes,エカの父親は刑務所にいるのだと判った。
前半,車で父親に会いに行くのにエカだけがボイコットするシーンがあったからピンときた。
ナティアは結婚してから学校に来なくなった。コテの家が行かせてくれないのである。
エカが様子を見に訪問すると,ナティアはすっかりコテの家の召し使いのように扱われていた。
略奪してまで結婚したがったから大切にしてくれると思いきや,コテは自分の着る服すらナティアに準備させ,いちいち探させる。
一応,エカの手前はコテのいいなりになどなっていない体を精一杯装うものの,実際は何でもかんでも身の回りの世話をしているのだろう。
そんな様子を見て,エカはむかっ腹を立てる。
ナティアは,友達を呼んで自分の誕生日祝いをしたいと言ったら,結婚披露宴をするのに借金をしたからというので一蹴されたという。
私も披露宴のシーンは食べ物や飲み物もふんだんにあって,どうやって用意したんだろうなと不思議だった(笑)。
コテや,コテの両親の言いなりになっているなんておかしい,自分というものはないのか…とエカはナティアに喝を入れ,じゃあパーティーはナティアの実家でやればいい…と連れ出すのだった。
ガミガミ屋だったおばあちゃんは,ナティアを喜んで迎えてくれ,おそらく何かを売ってお金を作り,2人のためにお祝いの料理をこしらえてくれたところが,ホロリときた。
小さなテーブルをバルコニーにセットし,2人で料理を食べながら語り合うエカとナティアだったが,外から聞こえてくるギターと歌声に気づいて下を見やると,ラダがモスクワから帰ってきていた。
再会を喜び,親密に見つめ合うナティアとラダであったが,そこにやって来たコテがナティアを連れて帰ろうとする。
別にラダと何かあった訳でなくとも,ナティアが拒否したのが気に喰わず,ある日,コテは仲間と一緒にラダをリンチにかけようと追いかけた。
ラダは一旦は逃げきれたと思いきや,いきなり現れた仲間の1人に腹をナイフで刺されてしまう(!!)。
それを知ったナティアは荒れ狂い,エカに「あんたに預けた銃を返して!!」と興奮状態で詰め寄る。
いくらコテの母親が叱って止めても,テーブルをひっくり返して大暴れ。
エカは,「じゃあ,仕返しして来なさいよ!!」と拳銃を渡すのだった。
ここから物語はイッキに皆殺しのバラードへ突入か…?!と思いきや,エカが湖に拳銃を投げ捨てるシーンが映し出されたことから,惨劇は起こらなかったと見た。
ていうか,ラダが死んだのかどうかも分からないし。
あの後,ナティアとコテは離婚したのかということにも全くふれられていないのである。
唐突かつあっさりめにラスト,バスで遠出しているっぽいエカが,ある場所に降り立ち面会を申しんでいる。
父親が収監されている刑務所である。
父親と向き合うことで,エカは何かに向けて一歩踏み出すのだろう…
そんなエンディングだった。
地味な作品だったけど,凄くよかった…
あの時代のトビリシの窮状,殺伐とした空気の中でも友情を育んだ少女たち,自分なりに恋する相手を思った少年たち,横暴な教師にみんなで逆らい授業をボイコットして遊園地で遊ぶ生徒たちのみずみずしい息吹を感じることが出来た。
ビックリしたのが,主役の2人はほとんど素人だったということ。
エカ役の女の子の,凜とした佇まい…よかったなぁ。
また,女性が,とりわけ若い女の子がひじょうに貶められていたことが分かって憤ろしくもあったし,戦争の不毛さを強く感じた。
ナティアとコテの披露宴のときに,コテの父親か?が演説をぶったけど,「わしらは女性なしでは生きていられん。女性はかけがえのない存在だ。女性万歳」とかぬかしており,まるで説得力がなかったこともつけ加えておく。
朝9時35分から1日1回しか上映しないってんで,無理くり早起きして観に行ってよかったよ。
さて,明日からは4日間仕事である。
次の休みは『トレイン・ミッション』と,ロック様の『ジュマンジ~ウェルカム・トゥ・ジャングル』そして,まだスガイディノスでやってる『ゆれる人魚』を2度目で観に行こうかと思ってます。
いつものように配給のパンをもらうため列に並んでいたエカとナティアだったが…
何と,公衆の面前で,コテが仲間の不良少年たちと共にナティアを無理矢理車に乗せ,連れ去ってしまう。
必死でナティアを拉致らせまいと喰い下がるエカだったが,所詮は多勢に無勢だった。
並んでいた大人たちの誰一人として慌てて助けに入るでもなく,ただ傍観するのみ。
考えられないことだが,この時代のジョージアでは皆,自分のことだけで精一杯で他人が拉致られようが暴行されようがどうでもよかったのだろう。
エカはそんな大人たちに対して,そして世の中に対して鬱積した不満が噴き出し,非難の言葉を口にしながら喰ってかかるのだった。
だが,喰ってかかった大人のうち1人の男性から殴られてしまう…ひ,ひどい…
さらに信じられなかったのが,すぐに切り替わった次のシーン。
ナティアの肩に手を回したコテ…周りにはエカも含めて学校のシーンで写っていたクラスメイトたち。
ナティアもにこにこ笑っており,コテとはラブラブに見える。
何と,コテの家で行われている2人の結婚披露宴なのだ…!!
楽器を奏で,飲めや歌えの大騒ぎ。コテの両親もナティアの家族も,地域の人たちもいて皆が2人を祝福している。
そんな中で,殴られた右眼にアザを作ったエカだけが暗い顔をしていた。
トイレにナティアを呼び出したエカは,「コテを愛しているの…?」と尋ねる。
何と,コーカサス地方では少年が思いを寄せる少女を誘拐して家に監禁し結婚を強制して夫婦になる…というのが古くから行われているらしく,珍しいことではないらしいのだった(!!)。
結婚の年齢もひじょうに低く,中学生になるならずでこうして夫婦になって,女の子の方は家庭に入るパターンが一般的らしかった。
ナティアの答えは,「分からない…多分,愛してると思う」というもので,エカは何よそれ…とガックリきた表情。
流されやすいというか…おそらく「私のことを好いて(求めて)くれる人はみんな好きよ」というタイプなのかもしれない。
ナティアは,「私の結婚を喜んでくれないの?」とヘソを曲げる。
その後,女子だけにナティアが打ち明ける話によると,「閉じ込められて,作業を手伝わされたわ。どうせ逃げられないと思ったし」という,「そんなに嫌でもなかったから結婚することにした」的なもの。
エカの中で何かが壊れたのか,ひっそりと取り上げた酒のグラスをくいっと飲み干し,踊り騒ぐ大人たちの輪にゆっくりと入ってゆく…
そして,何かに憑かれたかのように一心に踊り始める。
この踊りが美しく,なかなか見事で5分くらいある長回しのシーンだったのだが,何となく微笑ましく見ていられるようなものではなかった。
皆,手拍子しながら喝采するが,だんだんとアップテンポになってくる音楽に合わせて一心不乱に踊るエカの眼は哀しそうで,でも懸命に「負けてたまるもんか…」というような炎をたたえており,見ていて胸が痛んだ。
ナティアは,エカが自分の結婚を祝うために踊ってくれたのだと思い,駆け寄って抱き締める。
違う。エカの踊りは『よろこびの舞』などではなかった。
友達たちも次々に寄ってきて,抱き合い…披露宴は大いに盛り上がっておひらきとなった。
その翌日,エカが朝食を取りながら母親と言葉を交わすシーンがあったが,「父さんは…コプラのお父さんを殺したの…?」と尋ね,母親が黙り込んだことからおそらく返事はYes,エカの父親は刑務所にいるのだと判った。
前半,車で父親に会いに行くのにエカだけがボイコットするシーンがあったからピンときた。
ナティアは結婚してから学校に来なくなった。コテの家が行かせてくれないのである。
エカが様子を見に訪問すると,ナティアはすっかりコテの家の召し使いのように扱われていた。
略奪してまで結婚したがったから大切にしてくれると思いきや,コテは自分の着る服すらナティアに準備させ,いちいち探させる。
一応,エカの手前はコテのいいなりになどなっていない体を精一杯装うものの,実際は何でもかんでも身の回りの世話をしているのだろう。
そんな様子を見て,エカはむかっ腹を立てる。
ナティアは,友達を呼んで自分の誕生日祝いをしたいと言ったら,結婚披露宴をするのに借金をしたからというので一蹴されたという。
私も披露宴のシーンは食べ物や飲み物もふんだんにあって,どうやって用意したんだろうなと不思議だった(笑)。
コテや,コテの両親の言いなりになっているなんておかしい,自分というものはないのか…とエカはナティアに喝を入れ,じゃあパーティーはナティアの実家でやればいい…と連れ出すのだった。
ガミガミ屋だったおばあちゃんは,ナティアを喜んで迎えてくれ,おそらく何かを売ってお金を作り,2人のためにお祝いの料理をこしらえてくれたところが,ホロリときた。
小さなテーブルをバルコニーにセットし,2人で料理を食べながら語り合うエカとナティアだったが,外から聞こえてくるギターと歌声に気づいて下を見やると,ラダがモスクワから帰ってきていた。
再会を喜び,親密に見つめ合うナティアとラダであったが,そこにやって来たコテがナティアを連れて帰ろうとする。
別にラダと何かあった訳でなくとも,ナティアが拒否したのが気に喰わず,ある日,コテは仲間と一緒にラダをリンチにかけようと追いかけた。
ラダは一旦は逃げきれたと思いきや,いきなり現れた仲間の1人に腹をナイフで刺されてしまう(!!)。
それを知ったナティアは荒れ狂い,エカに「あんたに預けた銃を返して!!」と興奮状態で詰め寄る。
いくらコテの母親が叱って止めても,テーブルをひっくり返して大暴れ。
エカは,「じゃあ,仕返しして来なさいよ!!」と拳銃を渡すのだった。
ここから物語はイッキに皆殺しのバラードへ突入か…?!と思いきや,エカが湖に拳銃を投げ捨てるシーンが映し出されたことから,惨劇は起こらなかったと見た。
ていうか,ラダが死んだのかどうかも分からないし。
あの後,ナティアとコテは離婚したのかということにも全くふれられていないのである。
唐突かつあっさりめにラスト,バスで遠出しているっぽいエカが,ある場所に降り立ち面会を申しんでいる。
父親が収監されている刑務所である。
父親と向き合うことで,エカは何かに向けて一歩踏み出すのだろう…
そんなエンディングだった。
地味な作品だったけど,凄くよかった…
あの時代のトビリシの窮状,殺伐とした空気の中でも友情を育んだ少女たち,自分なりに恋する相手を思った少年たち,横暴な教師にみんなで逆らい授業をボイコットして遊園地で遊ぶ生徒たちのみずみずしい息吹を感じることが出来た。
ビックリしたのが,主役の2人はほとんど素人だったということ。
エカ役の女の子の,凜とした佇まい…よかったなぁ。
また,女性が,とりわけ若い女の子がひじょうに貶められていたことが分かって憤ろしくもあったし,戦争の不毛さを強く感じた。
ナティアとコテの披露宴のときに,コテの父親か?が演説をぶったけど,「わしらは女性なしでは生きていられん。女性はかけがえのない存在だ。女性万歳」とかぬかしており,まるで説得力がなかったこともつけ加えておく。
朝9時35分から1日1回しか上映しないってんで,無理くり早起きして観に行ってよかったよ。
さて,明日からは4日間仕事である。
次の休みは『トレイン・ミッション』と,ロック様の『ジュマンジ~ウェルカム・トゥ・ジャングル』そして,まだスガイディノスでやってる『ゆれる人魚』を2度目で観に行こうかと思ってます。