先週は仕事のストレスで精神的にずっとやられていたせいか大腸さんの調子の悪い日が続き,木曜日のレディースデイを狙って観に行こうと思っていた『カフェ・ソサエティ』を翌週に見送り。

それでも,月曜日には『クーリンチェ少年殺人事件』をとうとう観に行ったよ。

あまりにも内容盛りだくさんな名作のため,感想は別の記事でじっくり書こうと思うのだが,先に昨日観てきた『パーソナル・ショッパー』の感想を。

タイトルと予告編で「ファッショナブルでスタイリッシュなシーンがたくさん出てくるサスペンス映画だろう」とすっかり思い込んで,仕事の後わくわくしながらスガイディノスにノコノコ出掛けて行った訳ですよ。

金はあるが買い物に行く時間がないセレブの代わりに服や靴,アクセサリーのコーディネート&買い物をする…という,いわば専属スタイリストのような仕事がパーソナル・ショッパーというのだが,買い物好きな私にとってはめちゃくちゃ興味深かった。

きっと買い物シーンを観ているだけで楽しいんだろうな…と思った。

そのうち仕事とプライベートの区別がつかなくなったヒロインが,雇い主のセレブの留守中に無断で買ったものを身につけているうちに殺意が芽生え,セレブを行方不明に見せかけて殺害。その人肉を食して平然と生活するも消化不良を起こし「彼女を出さなきゃ!!」と叫びながら自分の腹をナイフでかっさばいて目玉をポロリと吐き出し絶命…といった話なんじゃないかと勝手に考えていたのだが全然違った(←相当『ネオン・デーモン』のエンディングがトラウマになっているヒト)。

タイトルだけ見たら,絶対お仕事中心のストーリーかと思うって。

ヒロインのモーリーン(クリステン・スチュワート)は,彼氏のいるオマーンを離れてパリに住む霊媒師。

なぜかというと,最愛の双子の兄が亡くなったのがパリだから。

パーソナル・ショッパーはパリ滞在のため一時的に,お金のために嫌々やっている副業。

兄が亡くなった悲しみからはなかなか立ち直れずにいる。

親友であり兄と同棲していた恋人から,住んでいた家を買いたいという夫婦がいるのだが,どうも家の中に何かがいるらしい,無害な霊か悪い霊かを見て欲しい…と頼まれる。

生前,兄とは「死んだ後もサインを送り合おう」と約束していたモーリーンは空き家に泊まり込み,兄からのサインを待ち続ける。

誰もいないはずの空き家の水道から勝手に水が出たり物音がしたり,壁に×印がついていたりするので,懸命に霊との交信を試みるが,現れたのは全く別の女性の霊で,エクトプラズムを吐いて消えた。

CGの幽霊が出現したシーンで,「こういう映画だったのかよ?!」と,目が点になった。

このシーン,かなり怖かったけど兄とは全く関係なくて,しかもそれっきりだったというね(笑)。

シャネルが協力,カルティエをはじめとする高級ブランドショップが次々に登場…と書いてあった宣伝文句を鵜呑みにしていた私は,とまどうペリカン状態。

確かにシャネルもカルティエも出てきたことは出てきたが,買い物シーンはさほどたくさんは出てこなかったぞ。ションボリ…

ヒロインと亡くなった双子の兄とがどんだけ仲が良くて深い絆で結ばれていたかは描かれていないので解らなかったが,とにかくモーリーンは終始表情が暗く,すっぴんで飾り気のない男っぽい服装とぶっきらぼうな物言い,買い物シーンも買いっぷりは確かにいいけれど「楽しそう」というものじゃなかった。

雇い主が喜ぶか,美しく見えるかを瞬時に判断し,サイズ直しを頼んだり,直感に任せて次々と買いつけるといった感じ。

雇い主のキーラというセレブも,忙し過ぎるためにモーリーンを雇ってからもしばらくは顔も知らない状態で,自宅マンションに置く伝言メモでしかやり取りしない有様。

ある日モーリーンが仕事でロンドンに向かう途中,見知らぬ番号から「お前を知っている。お前もこっちのことを知っている」という謎めいたメールが届き,怖いと思いつつも兄からかもしれないという期待で移動中ずっとスマホでやり取りをする。

とにかく,ずっとスマホをいじってるんだよね!!

かなり長い間スマホのシーンが続いて眠くなったのだが,外を歩きながらガラケーを見たり通話をしたり未だに出来ない私にしたら信じられないと思った。

モーリーンのプライベートを,かなりツッ込んだことまで知っているらしいその謎の相手は,兄なのかどうかと何度尋ねても答えない。

そんな状態でずっとやり取りが中断されては再開し…の繰り返しなのだが,やり取りしているうちに「別の誰かになりたい」という本音をポロリと漏らしたモーリーン。

「一番怖いことは何?」と尋ねられて,「禁じられていることをしてしまうことよ」と回答したモーリーンは,キーラの留守のマンションに買い物した品を届けに行った際に禁止されている試着をしてしまう。

キーラのマンションの合鍵を与えられているモーリーンは,キーラのものには一切手をつけてはならないという約束になっているのだ。

だが,若く美しいモーリーンは高価なドレスや靴,アクセサリーを身につけた自分にうっとりし,そのままキーラのベッドに横たわり,独りHをした後キーラのマンションで夜を明かす。

メールの相手にあるホテルの部屋を指定され,来てくれるように誘い出されたモーリーンは,ドレス姿で赴く。

だが,部屋には誰もおらず,モーリーンの名前ですでに支払いは済まされており,謎の相手からのメールで要求されるままにドレス姿の画像を送る。

次の日,カルティエで宝石の買いつけをしてからキーラに届けることになっていたモーリーンは,予定通りにマンションへ向かう。

セキュリティが解除されっ放しなので,キーラが帰宅しているのかと思って家中見回ってみると…

奥の部屋にキーラが血まみれで倒れていた。

恐怖と混乱からマンションを飛び出し,2分ほどバイクで走ってから通報するが,モーリーンは第一発見者として疑われる。

キーラの部屋のパソコンを使ったことも,無断でマンションに泊まったこともバレていた。

本当ならすぐにでもオマーンの彼氏の元へ帰りたいが,嫌疑をかけられているため警察からは渡航禁止令を出されてションボリ。

キーラを殺害したのは幽霊だ,自分が契約違反をしてキーラのドレスや宝石を身につけたせいだ…と思い込んだモーリーン。

そんな彼女の部屋に,なぜかキーラのために買いつけした後マンションに置いてきたはずのカルティエの宝石が置いてあった。

ショックを受けていると謎の相手からのメールが来る。

「このメールのやり取りのことを警察に話した?」

何と,今モーリーンのマンションに向かっているという。

「今,ドアの前」というメッセージ(このシーン,めっちゃ怖かった…!!)を見て恐る恐る覗き穴からドアの外を見るが,誰もおらず,ドアの下からまたしてもホテルの部屋のカードキーが差し込まれていた。

勇敢にも赴いてゆくモーリーンだが,やはり部屋には誰もいない。

だが,ここでドアが開き,何かを凝視するモーリーンが映し出される。

続いてホテルのエレベーターのドアが開き,誰も通っていないはずなのに自動ドアが開くシーンが。

多分,モーリーンと部屋で会った幽霊が出て行ったんだろう。

その後,別の男性がホテルのエレベーターを降り,自動ドアを通って外に出たら,刑事らしき人たちに捕まった(でも,この後振り切って銃をブッ放して逃亡)。

この男性は映画の前半にほんの少しだけ登場したキーラの彼氏で,キーラのマンションに買い物を届けに来たモーリーンと言葉を交わした人物。

いかにも温厚そうな好人物だったが,キーラを殺害しモーリーンに謎のメールを送りつけた犯人であることが判った。

幽霊が,何らかの力を使ってモーリーンを彼から守り,彼のことを警察に知らせたのだろうか。

ともあれ,ようやく疑いが解けて,親友(兄の元彼女)の家に遊びに行ったモーリーン。

親友は新しい恋人と暮らし始めていてしあわせそうだったが,新しい恋人が言うにはどうも家の中に兄の気配を感じるとのこと。

嫉妬などの邪悪なものではなく,あくまでも自分の彼女の新しいしあわせを温かく見守っている感じだという。

彼が席を外したとき,誰もいないはずのキッチンでグラスだけが浮遊,いきなり落ちてガチャンと割れる。

オマーンに帰ったモーリーンに,それと全く同じ超常現象が起こる。

とうとう兄の霊が降臨してくれたのか…と涙にむせぶモーリーン。

幽霊はモーリーンからの問いかけにYESはドン1回,NOなら2回で答えるのだが,最後の最後に「兄なの?」という問いかけにドン2回で答えていたので,「空気読めよ」と思った(笑)。

何だ…別人なのね…とニヒルに苦笑するモーリーンのアップで映画は終わるのだが,2月に観た『ワイルド~わたしの中の獣』同様,「終わりかーい!!!!」と叫びそうになった。

フザケてNOと答えただけなのか,本当に違う人物の霊なのかは判らずじまい。

何せモーリーンは霊媒師なのだから,いろいろな霊を招き寄せやすいのだろう。

そんなこんなで,以上が『パーソナル・ショッパー』のあらすじなのだが,本当に,何を言いたい映画だったのだろう(笑)。

ホラーなのか,オカルトなのかサスペンスなのか…

別にパーソナル・ショッパーという,一見華やかな仕事のネタはいらないのでは…

死に別れた最愛の兄の霊と交信するまでのオカルティック・ロマンとして描き切った方が解りやすかったのでは…と思ってしまった。

それに,冒頭で兄の住んでいた家を買いたがっている夫婦が話していた抽象画家(かなりスピリチュアルな分野に傾倒していた女性で,没20年後に作品を発表させた)のエピソードはどこに行った?

そして,亡くなった兄同様,先天的にふつうとは違う形の心臓を持っているために年に2回,モーリーンが検診を受けているという設定は何かストーリーに関係していただろうか?

色々,解りにくいところや描き方不足なところはあったが,主演のクリステン・スチュワートは凄く魅力的でビンビンきた。

もしかしたら彼女,レズビアンでは…と思っていたら,バイセクシュアルだという話で,やっぱり!!と手を叩いてしまったよ。

調べたら,メジャータイトルよりもインディーな佳作にたくさん出演していて,ケーブルテレビでも結構放送されてるので観てみようと思う。

もうひとつ,私はやっぱり買い物は自分でしたい。

ふんだんにお金がある訳ではないが,買い物する時間も作れないほど多忙なセレブでなくて本当によかった(笑)。
[Web全体に公開]
| この記事のURL

1件中 1~1件目を表示


1