父にジャックを受け入れてもらえぬまま,ジョイとジャックの新しい生活がスタートした。

ジャックにはカウンセリング・ドクターが定期的に訪れ,精神面でのケアが施されたが,一方でジョイは…

高校生時代のアルバムをめくり,部活の仲間の写真を見て懐かしむと同時に,自分の失った青春(何せ,17歳のときから7年間もだからね…)というものに気づいてしまい,ふと言い様のない寂しさを感じてしまう。

弁護士とこれからのことを相談するうちに何かとお金が必要になり,弁護士の提案でジョイはテレビ出演を承諾する。

ジョイは「誘拐・監禁されて奇跡的に救出された女性」として世間の関心を集めている人物である。

テレビに出演すれば相当な額の出演料が支払われるから…であった。

テレビ局が来てセットが組まれ,収録が始まった。

番組の女性司会者も悪意はないのだが,世間が知りたいことを質問しなくてはならないので,「答えるのがつらかったら次の質問に移るから」と言ってくれるのだが,話はどうしても核心にふれてしまう。

「ジャックは犯人の子なのか」と尋ねられて,ジョイはきっぱりと答える。

「ジャックに父親はいません。親は,私だけです」

私なら,テレビもここで引き下がってあげればいいのに…と思うのだが,司会者の女性は,「生物学的にはどうなのか」という観点で追及してしまう。

極めつけは,
「生まれたジャックだけでも助けようとは思わなかったのか」
「もし,父親は誰かと訊かれたらジャックにはどう説明するのか」
という質問であった。

これにはジョイも激しく心をかき乱されてしまう。

本当に子供のことを思うのなら,病院の前に置いてもらうなどして誰かに代わりに育ててもらうように犯人に頼むべきではなかったのか…と。

ジョイは涙が止まらなくなる。

映画の中ではその収録がどうなったか,番組としてどのように編集されたかは分からなかったが…

私は,ずっと閉じ込められてきて,ともすれば無気力に陥るような生活のなか,"子供を育てる"という使命が出来たことで自分の生きる理由や存在意義を,ジョイは見つけたのではなかろうか…と思う。

そんな忌まわしい子供,産みたくも育てたくもない…!!と思っても仕方がない。

だが,ジョイはそうではなかった。

大切な命として,持ちうる限りの母性愛でもって,ジャックを守り,育ててきた。

それにオールド・ニックに頼んだって,どうするか分からないし(そのままくびり殺したり生き埋めにするかもしれない)。

どう育ったのか分からないままいるなんて,嫌だろう。

何が正解だったかなんて,誰にも分からないのだ。

だが,すっかりそれで考え込むようになってしまったジョイは,精神的にも不安定になり,ジャックにもつらく当たるようになった。

あまりの刺々しい態度をとがめ,心配する母親にすら,
「私がいない間にもママは楽しく暮らしていたのよね?!」
などという,ひどい言葉を投げつけるのだった。

そのうえ,
「ママから人には親切にしなさいって教えられて育ったけど,一緒に犬を探してくれと頼んできたあいつに親切にしたおかげで私は閉じ込められたわ」
となじるのだった。

バァバは胸の潰れるような思いだったに違いない。

だが,バァバも彼女の恋人(名前,忘れた)も本当に優しくて辛抱強く,どんなにジョイが荒れても受け止めてくれるのだった。

だんだん鬱に近い状態に陥ってきたある日,とうとうジョイはバスルームで薬を大量に飲んで自殺を図ってしまう。

ジャックの発見が早くてすぐに病院に運ばれ,助かったが,そのときもバァバは,
「ずっとそばにいるわ…!!」
と囁きながら救急車に乗り込み,ついていったのである。

しばらくジョイは入院し,ジャックはバァバの恋人と一緒に留守番するが,母親がいない間にどんどん精神的に成長する。

髪にはパワーが宿っている,という聖書のサムソン(not宮本)信仰から,生まれたとき以来ずっと髪を切らずにいたジャックだったが,その髪を切って「ママにパワーをあげるんだ」と,ある日とうとう言い出す。

前から髪を切りたかった(笑)バァバは,喜びいさんでジャックの散髪を始める。

このシーンがまたね…何とも微笑ましくて涙が出るのだ…!!

切った後の髪をシャンプーしてタオルドライしてくれたバァバに向かって,ジャックが,
「バァバ,大好き…」
と言う。

涙ぐみながら,バァバも,
「バァバもジャックが大好きよ…!!」

私,このシーンで泣いたもん(笑)。

束ねた髪は,早速入院中のジョイに届けられた。

髪を切ったジャックの気持が解り過ぎるほどに解ったジョイは,しっかりしなくては…と反省し,やがて退院する。

退院して帰宅すると,びっくりするほどジャックは大人びていた。

友達も出来て庭で一緒に遊んでおり,与えられたおもちゃも使いこなし,描き続けていた絵も完成していた。

そんなジャックとこれから強く生きてゆこうと思いを新たにしたところ,
「あの部屋に帰ってみたい」
とジャックが言い出す。

ぎくりとしたジョイだったが,承諾。

助けてくれた婦警さん同伴で,7年間監禁されてきた納屋に連れて行ってもらう。

「この部屋,縮んだの…?」

びっくりしているジャックに,「あなたが大きくなっただけよ」と答える。

生活していたときはこの『部屋』が,ジャックの世界の全てだった。

だが,世界はもっと広くて大きい…ここに一度戻ることによって,ジャックはそう再認識する。

納屋に残された家具に1つ1つ別れを告げたジャックは,振り向かずにジョイと共に敷地を出てゆくのだった。

…というエンディングだったのだが,静かな,そして希望に満ちた素晴らしい終わり方だと思ったね…!!



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