あれからずっと,『ソン・ランの響き』のことしか考えられない日々を送っております。
 
私はホント,ある映画を好きになってしまうとその世界観の虜になってしまい,夢にまで出てくる始末。
 
現実の世界でも,訳もなくこのキーホルダーを握りしめてションボリし,「ひとりソン・ランごっこ」をしているし,ヒマさえあれば会社のパソコンでリエン・ビン・ファット(ユン)とアイザック(リン・フン)の画像漁りをする始末。
 
少し前まではドルフ・ラングレンとマ・ドンソク尽くしだったというのに,今や私のスマホのホーム画面は全てソン・ラン尽くし(笑)。
 
何も知らない人が見たら腐った女性と思うか,アイザック氏の美麗画像で韓流アイドルファンかと思うだろう。


ちなみにコレ,7~8年前に富豪2夢路さんにいただいたもの。
 
ベトナムではなくネパールのものみたいだけど。
 
北都プロレスの会場でTシャツを買えなかったため郵送していただいたのだが,その際に一緒に入れてくださって。
 
脱線しちゃったけど,あまりにユンとリン・フンのことしか考えられなくてつらいので,とうとうAmazonでDVDを予約してしまった。
 
9月4日発売なので,楽しみで死にそうになりながら待っている。
 
記憶がなくならないうちに…と思ってダーッと感想を書いたが, きっと記憶を捏造しているところがあると思うし,時系列も間違っていたりするかもしれないので,DVDが届いたらこっそりと記事を加筆修正するかも(笑)。
 
ところで,去年は気に入った色がなかったためスルーしたカネ暴ルナソルの,秋の新色アイカラーを2種類GETしますた。


アイカラーレーションの08と10。
 
この商品の魅力は,一見難しそうなコントラストの強い配色なのに,使い方次第でいろんな楽しみ方が出来ること。
 
欲張りな私はフルカラー使いでガッツリ盛っているけど。
 
左のパレットの,オレンジ系にグレーのアイホール用カラーって…ホント神!!
 
シックで華やかで…云うことなし!!
 
右のグリーンは大好物のカラーなのだが,会社で普段女性のメイクには全く興味がなさそうな男性から,「その緑の…まばたきしたときキラッとして,カッコいいっすね」なんて言われたよ。
 
嬉しいねえ。


こちらは千葉県の心の友・Motchyさんからいただいた誕生日プレゼント。
 
「猫が口からティッシュを出しているように見えるティッシュボックスケース」。
 
茶トラの他にもハチワレとキジトラを送ってくれた(笑)。
 
普段ビニールケースのティッシュを使っているのだが, これ使いたさに昨日すぐに『殺ドラ』に箱ティッシュを買いに行ったよ(笑)。
 
どちらかと云えば, ティッシュをもりもりと食べているように見える。
 
さて,今日は珍しく1本しか鑑賞しない日でのんびり過ごしてます。
 
たまには部屋の掃除や不要品処分をきちんとしないとね…
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ユンの部屋を出たリン・フン。

アパートの階段を降りながら,一人ウフフ…な微笑み。

この微笑みは,明らかに恋を知った者が浮かべる微笑みだ。

たった一晩のうちに,戸惑いや気まずさ,驚きや感動,共感やときめき…今まで経験したことのないくらいのたくさんの感情を覚えたリン・フン。

おそらくユンに対して好意を抱き始めている自分に戸惑ったが,ユンの本質を知るうちに,「好きになってしまった…」と気づいたのだろう。

出会ったときに抱いた印象とはまるで違うユンが,一晩のうちに見せた様々な面,ギャップを思い返してニヤニヤしていたのだと思う。

誰の曲か忘れたが,「嬉し恥ずかし朝帰り♪」という歌が聞こえて来そうな表情であった。

合鍵を作りに行った店で,奥に飾ってある象のキーホルダーに目を留める。

ぱおーん!!と鼻をのけ反らした象のモチーフのキーホルダーだった。

店員は「鼻を上げた象は幸運を運んで来るんだよ」と云う。

リン・フンはその象のキーホルダーを購入し,やはりウフフな微笑みでプレゼント用に包装してもらうのだった。

誰にあげるのかはバレバレですな(笑)。

その後は,買っておいた宝くじが当選したかを確認しに行くが,全滅であった。

だが,店番のオバチャンに,「宝くじにハズレると,恋に当たるんだよ」と云われ,またもやウフフ(笑)。

たった一晩同じ部屋で過ごしただけで,キスどころか手も握ってはいないのに…

リン・フンが恋に落ちてしまったことが,これらのシーンで判るのだ。

場面変わって,高利貸し屋の女主人にユンが束ねた札を差し出し,「これで全部返したから」と云って,取り立て屋稼業から足を洗う旨,宣言。

何と,ユンは自分の持っている金目のものを全て売り払い,自分が家族を心中に追いやった男の代わりに,借金を返済したのである。

屋上でユンが一人嗚咽するシーンがあった。

誰にも見せない泣き顔。

やはりユンが,あの家族のことでは良心の痛みを感じていたことが判るシーンだった。

あれだけ非情な取り立て業務を行っていたというのに,家財道具を売り払ってまで代わりに返済…そして取り立て屋を辞めるとは…

驚くと共に,ここで嫌な予感がしたのだった。

また,ユンはリン・フンを助けた食堂に昼飯に行った際,「これ,こないだの迷惑料だ…すまなかったな」と云って金を渡す。

義理堅い…!!それに何気ない一言がひたすら優しい…!!

私もこういう人,好きだよ!!男気に溢れてるじゃないか!!

そのとき,店員が,「この間,これを忘れて行きましたよ」と云って差し出されたのが,リン・フンの鍵。

キラキラしたスパンコールを数珠繋ぎにしたものがついていた。

「劇団に入り初めの頃,舞台に落ちてるスパンコール(衣装の)を拾って集めてた…糸を通してキーホルダー代わりにしてるんだ」

そう話していたリン・フンの顔を思い出しながら,そっと受け取りポケットにしまいこむ。

早くあんな豪華な衣装を身につけ,舞台に立ちたい…そう思って懸命に下積み時代を過ごしたのであろう。

演技に関してはストイックなリン・フンは,このスパンコールのキーホルダーを見ては,入団したての初心を忘れぬよう努めていたのだろう。

夕方,公演のため劇場入りしたリン・フンは,代役を勤めた俳優ほか劇団の仲間たちに謝って廻るのだった。

皆,温かく許し迎えてくれるのだったが,ミー・チャウ役の女優は,「何だか…顔つきが違うのね」とズヴァリ。

かすかに顔を赤らめるリン・フン。やっぱ可愛い…

その夜の舞台は,これまでのリン・フンが演技に唯一欠けていたものをまさに手に入れてから初めての公演だったため,素晴らしいものとなった。

情感溢れるまなざしと歌声に,相手役の女優もうっとり。

演技指導の爺ちゃんも,舞台袖からリン・フンを観て涙を流しているのだった。

そのとき,劇場の外にはダン・グエットとソン・ランを納めたケースを背負ったユンが立っていた。

リン・フンのすすめる通りに,オーディションに来たのである。

だが,すぐに劇場には入らず,何か思いを込めて劇場の看板を見つめている。

これまでの,いくら生きるためとはいえ人を踏みにじる人生に別れを告げ,自分なりに罪を償おう,そして,今までとは違う日々が待っているというのなら,迷わずそこへ飛び込もう…

そんな思いだったに違いない。

チョン・トゥイー役のリン・フンの看板が映る,ユンの瞳がアップになったそのとき。

その瞳が大きく見開かれ,硬直した。

背後から誰かがユンを刺したのである…!!

崩れ落ちるように街路に倒れたユン。

刺したのは,ユンが過酷な取り立てで家族を心中に追いやったあの男であった。

代わりに借金を返済したところで,こうなりそうな予感はしていたのだが…やはり当たってしまった(泣)。

ユンの倒れているところは映らず,街路の溝を流れる血が映し出される。

程もなくして降り始めた雨がやがて大降りになるのだが,雨水がはねる様がミルククラウンで表現される。

その雨が,ゆっくりと街路の血を洗い流してしまうのであった。

救急車が来て,ユンが運ばれてゆく。

中で舞台が進んでいる間に雨は止み,劇場前の道路は素知らぬ顔で平常の様子に戻ったのだった。

舞台はこれまでにない素晴らしい出来で,大喝采で幕を閉じた。

笑顔で劇場を出るお客たちは誰も,この劇場の前で人死にがあったことなど知らずに家路に着く。

リン・フンは,ユンが必ず来てくれると信じて待ち続けるが,とうとう閉館時間になったため,ションボリとため息をつく。

ユンが来れば必ず座長に雇ってもらえる,と確信していたのに…

採用されたら渡そうと思って買った象のキーホルダーを, リン・フンはじっと見つめるのだった…

(完)
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夜の街からアパートへ帰って来た2人。

ユンが水浴びして出てくると,リン・フンが本棚を見ていた。

その中の1冊を取り出し,「この本,僕も好き」と笑顔を浮かべる。

この笑顔がまた可愛いんだな…こんな無防備な笑顔を向けられたら誰でも彼を好きになるだろう…ってなくらい,可愛い。

ユンのまなざしもふっと優しくなる。

同じ趣味を持った人間に出会えると嬉しくなってしまうからな…解る,解るよ。

何かもお,どんどんいい雰囲気になってきて,そのうちユンの兄貴が「辛抱たまんねえぇぇ!!」と絶叫しリン・フンをどうにかしてしまうのではないかと心配になった。

だけど,そんな心配は杞憂に終わった。

並んで頁をめくるうちに,リン・フンは,本の頁の間に折り畳まれた紙を見つける。

それはユンの父が昔書いた詩であった。

「いい詩だね」

そう云うリン・フンに,ユンは「この詩を即興で歌ってくれよ」と頼むのだった。

ユンは,劇場でのリン・フンの歌声に魅了されていたのだ。

「無理だよ。何か伴奏がないと…」

リン・フンがためらっていると,ユンはケースにしまってあったダン・グエットとソン・ランを取り出した。

映画の最中は,私はソン・ランとは弦楽器なのかと思っていた。

それが,違ったのだ。

興味があって調べてみたら,ソン・ランは打楽器なのだった。

父の形見であるダン・グエット(まさにこの弦楽器を私はソン・ランだと思い込んでいた)を構えるユン。

ペダルのついたカスタネットのような打楽器(これがまさにソン・ラン)で拍子を取りながら奏で始める。

リン・フンがその調べにのせて歌う,このシーンが凄くよかったのだが,かなり夜遅かったし窓も開けてたようだったんで,近所迷惑になりやしないかと他人事ながら心配してしまった(笑)。

この映画は無駄な,説明的な台詞が一切なく,たっぷりと間合いを取った主演2人の視線や表情,息遣い…などの演技でとことん魅せるものだったので,この夜少しずつ2人の気持が近づいてゆく様が本当に丁寧に描かれていたと思う。

ドキドキとも違う…胸の奥がじんわりと,何か温かなもので潤ってくるような感覚を覚えて,このシーンでは泣きたくなった。

歌い終え,ユンの腕前を手放しで褒め称えるリン・フン。

「凄いや…!!座長が君の演奏を聴いたら,スカウトするよ」

謙遜するユンだったが,自分もカイルオンの楽団の奏者になりたくて一生懸命練習していた時期があったので,嬉しさを隠せない。

「明日の公演が終わった後,座長に君の演奏を聴いてもらうから…劇場に来てくれないか?」

リン・フンはすっかり興奮しており,目が輝いていた。

ユンは返事こそしなかったが,かなり心が動いていることは確かだった。

いつの間にか寝ついた2人…

リン・フンをベッドに寝かせ,自分は床に寝るユン。

おそらく,ユンは本当に大事に思っている相手でなくてはベッドを使わせないのだろう。

セフレのおねいちゃんとは床の上でしかヤらない…というのを妙に思い出してしまった。

先に目覚めたユンが,リン・フンの寝顔をそっと覗き込むシーンがあったが,このときの目も優しくて,他人事ながら泣けてくる思いだった。

愛おしい,シーン。

朝になり,起き出して窓から外を眺めるリン・フンに,飲み物を差し出すユン。

この朝のシーンがポスター・ビジュアルになっている。

細長い水風船みたいなものにストローが刺さっている飲み物は,多分ベトナムではポピュラーなドリンクなのだろう。

窓辺に並んでたたずみ,一緒にちうちう飲んでるところは可愛かった(笑)。

「今夜,来てね…絶対だよ?」

そう言って,部屋を出て行くリン・フンだった。

だが,これが今生の別れとなることを,2人はそのときは知る由もなかったのだった。

(続く)
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目を覚ましたリン・フンは,朦朧とした頭で起き上がった。

飲めない癖に飲んだビールたった2杯で,かなり酔ったらしい。

そして,すぐそばのソファーに腰かけてファミコンで遊んでいる憎き借金取りの男に気づいて飛び上がるのだった。

「よく一人で奴らに向かって行ったな。お前のこと見直したよ」

ユンは,頭を押さえるリン・フンに,生姜湯を淹れて差し出す。

生姜湯を淹れるヤクザですよ奥さん(笑)。

食堂での喧嘩を思い出し,さらに,時計を見ると22時を回っていたので,自分が舞台に穴を空けてしまったことを知ってリン・フンは愕然。

「お…起こしてくれたっていいじゃないか…!!」

「今から劇場に向かってもすぐに終演だ,このまま泊まってけ」

ファミコン画面から目も離さずに言ってのけるユンに腹を立て,リン・フンは部屋を出て行った。

だが,しばらく経ってから気まずそうに戻って来る。

部屋の鍵がないので探させてくれ…と言い,ベッドや床など必死で探すが,どこにもない。

さっきの食堂だろう…ということになり,すっかり気落ちしてしまったリン・フン。

自分の劇団の衣装に火をつけようとした借金取りの男の部屋に,今夜は泊まらざるを得なくなったのだ。

情けなかった。衣装からガソリンの匂いが漂う度にユンを思い出して腹を立てていたのだから。

仕方なく,張り出し窓に脚をのばして腰かけるリン・フン。

居心地悪げにションボリと黙っており,ユンのプレイするファミコンの音だけが部屋に響く。

このファミコンの音がまた(笑)…ビシ!!バシ!!グワシ!!ってな感じで,小さな音で流れてるのを聴いてるだけでもノスタル爺。

それが,ふとしたことから部屋の空気が変わることになる。

失敗してゲームオーバーになり「くっそぅ」とボヤくユンに,「アイテム取ってんのに,下手なんだね」とリン・フンが声をかけてくすりと笑った。

「何だよ…上手いのか?」

そこで,2人並んでゲームを始めるのだったが,まあ~夢中になっちゃって!!

その様子はまるで子供(笑)。

何となく仲良くなり始め,互いに口もきくようになったそのとき。

パツン,と音がして暗くなった。停電である。

そこで,2人は外へ出ることにした。

近くの麺屋で夜食。

それにしても,ベトナムの屋台や食堂って,食べるものがどれも美味しそうなんだよね~。

おかしかったのが,ユンが赤唐辛子の種を丁寧に皿の端によけていたこと。

ホントにすることがきめ細やかなヤクザだよ。

目の見えない老人の流しの歌手が,孤独な流浪の歌の弾き語りをしながらテーブルをまわってくる。

仕事柄か,しんみりと聴き入るリン・フン。

「何だか僕のことを歌っているみたいだ…」

そんなリン・フンに,ユンは,自分の母はカイルオンの舞台女優で,父は楽団のダン・グエット(ベトナムギター)とソン・ランの奏者だったことを打ち明けるのだった。

夜食の後はアパートの屋上で,互いのことをしんみりと語り合う。

母はある日出ていってしまい,父も早くに亡くなったユンは,父の奏でていたダン・グエットとソン・ランを自分も練習し,いっときはカイルオンの奏者になりたかったのだと言う。

一方,リン・フンは両親の反対を押しきって俳優になったのだが,頑張ってとうとう主役になったとき,両親も観に来てくれることになった。

だが,劇場に向かうバスが事故に遭い,両親共々亡くなってしまったのである。

自分のことを誰かに話したのは,互いに初めてであった(に違いない)。

こんなふうに話せる相手だったなんて…孤独な2つの魂がそっと寄り添うかに思われたとき…

「あ…点いた」

停電が復旧したので,屋上からユンの部屋に戻る。

だが,ユンの部屋の前には,ユンの職場のセフレのおねいちゃんが…

「君の邪魔はしたくない」

そう言うリン・フンをユンは「いいから,いろよ」と引き止める。

このおねいちゃんの弟がユンにめちゃくちゃ憧れていて,友達と一緒に舎弟気取りでつきまとい,ユンのような取り立て屋になりたがっているのだった。

友達と一緒に,返済出来ないある家にイキッて嫌がらせに行ったのだと知らされ,ユンはバイクで駆けつける。

後ろにリン・フンを乗せて。

バイクで夜のサイゴンの街を走るシーンもよかったな。

ユンが来たのでますますイキッた坊主たちは,用意したペンキを壁にぶちまけてやるのだと言って見せる。

しかし,ユンにぶん殴られて叱られる。

姉さんを心配させるな,まっとうに生きろ,俺のようになるな…と諭すユンを離れたところからそっと見ていたリン・フン。

ユンは好きこのんで取り立て屋になった訳ではなかった。

両親を亡くし頼る者がいないので,生きてゆくために仕方なかったのだ。

だから,その説教もめちゃくちゃ胸に迫るものがある。

(何か…この人,実はいい人かも…)

リン・フンの目は,初めてユンと会ったときの強張った表情とはまるで違っておだやかだった。

帰り道,深夜だというのに路上で遊んでいる子供たちが何人もいて,皆が口々に「ユン兄貴だ」と声をかけてくる。

ちょっとだけボールを投げ返して遊んでやったりするユンに,「君は有名人なんだね」とリン・フンはにっこり。

何だか凄くいいムードで,夜の街を2人は帰ってきたのであった。

(続く)
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『ソン・ランの響き』のあらすじと感想,続けます。

翌朝も取り立てる気満々にて出陣するユン兄貴。

前日幼い姉妹をギャン泣きさせたお家へとGO竜馬。

しかし,様子が変…どうやら一家に何かあったらしい。

近所のオバサンたちの噂話から,一家の母親が殺虫剤を吸って自殺したことが判る。

病院に駆けつけると,父親が家族の亡骸にすがって大泣きしているところだった。

病院にいる人たちの噂話では,自分の病気のために夫が借金で苦しんでいることに耐えられなくての自殺だったことが判ったが,なぜか幼い姉妹までが一緒に死んでいることになっていた。

もしや心中…!?

だとしたら,身勝手な母親だが,毎日ユンのような冷酷な男から取り立てに遭うストレスと危険にさらすよりは…と思ってのことだったのか。

それにしても,大悲劇だ。

ユンはひっそりと教会に向かい,訪れる人も少ない中で祈りを捧げるのだった。

こういうシーンからも,やはりこの男はただのヤクザではなく,人間らしい心を持っているのだと解る。

その晩は,やはり前日訪れたカイルオンの劇場へGO竜馬。

だが,すぐに控え室に取り立てにはゆかず,金を払って入場券を買い,席に着く。

『ミー・チャウとチョン・トゥイー』という題名の,ミュージカルというかベトナム式オペラ?とでもいったような歌劇が上演されているのだったが…

敵国同士の王女と王子が愛し合いながらも引き裂かれる…というストーリーらしい。

この劇中劇がよく解らなかったのだが,ベトナムでは定番の演目なのだろうか。

パッと見,昔観た『さらばわが愛~覇王別姫』の中で登場する京劇のような衣装とメイクで役者たちが舞台に上がる。

そして,楽団の奏でる音楽と,役者が歌う曲,節回しが何とも独特で…この説明がひじょうに難しい。

とにかくノスタルジックで,どこか悲しい感じなのだ。

前の日に控え室で会ったリン・フンは主役のチョン・トゥイー王子。

ヒロインのミー・チャウ王女役の女優よりもずっと艶やかで美しいのだった。

こんなことを書いては何だが,この劇団,あまり若い人材がおらず,しかも美形なのはリン・フンだけのように見えた。

オッサンたちが真剣にアイラインを引き,まぶたや唇を塗って「濃過ぎるぞ」「いや,濃くない」などと言い合いながら舞台メイクをするシーンは結構笑えた。

劇に観入るユンは,子供時代のことを思い出すのだった。

ここで何と,ユンがカイルオンの舞台女優の子供であったらしいことが判る。

ミー・チャウを演じる美しい母に舞台袖から手を振ると,そっとウィンクを返してくれた思い出の回想シーンが…

その晩の公演は大成功。

幕が降りる際,リン・フンの歌声と演技に,惜しみない拍手を送るユン。

やっぱりこの男…実はいい奴なんだ(笑)。

リン・フンには金持ちの固定ファンの女性がおり,打ち上げの費用も惜しみなく出してくれるのだが,出席は礼儀正しく断り,舞台の後も歌の稽古。

演技監督の老人に新しい歌を聴いてもらうが,「お前はテクニックでは誰にも負けない。だが,まだどうも人間味が足りない」と言われてしまう。

「良い役者になるには人生経験を積むのだ。恋をしろ」

翌日,リン・フンがユンの勤め先に座長の代わりに金を返しに来た。

ユンの取り立て方についてクレームを入れるが,女主人は,「私らは,頭を下げて金を借りてもらってる訳じゃないんだよ」と眉一つ動かさない。

その後,街なかの食堂で独り夕食を摂りながら考え込んでいると,店員がサービスで果物を運んできた。

「役者さんですよね。これは店からの好意です」

それを見て面白くなかったのか,そばで飲んでいたぶさいくオヤジたちがリン・フンにからみ始めた。

相手にしていなかったリン・フンだが,酒をぶっかけられるとブチ切れ,飛びかかってゆく。

多勢に無勢のため, あっという間にボコられてしまうのだが,たまたま同じ店に居合わせたユンが酔客たちをコテンパンにのしてしまう。

さすが雷の兄貴…めちゃくちゃ強えっ!!

そして,昏倒しているリン・フンをそっと抱き起こして店を出るのだった…

(続く)
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