太陽はそのとき釧路に転勤が決まっており、恐らくもう会えない、どうせダメなら告白だけしてから札幌を去ろうというつもりだった。
やはり結果はただの「ありがとう」だけ。
太陽はこう言っていたものだ。
「みねさん以上の女性はもう現れない。だから俺はもう恋などしない」
かなり本気だった。真面目な奴なのでしないと言ったら本当にしなさそうだった。
で、自分で自分の気持に決着をつけた太陽は単身釧路へ。
相変わらず真面目な働きぶりで、俺ら部屋プロレスメンバーの中では一番まともというか順風満帆な生活をしている、といつも聞かされていた。
その太陽が・・・「もしかしたら結婚するかもしれない」と言うのだった。
とうとうみねさん以上の女性が現れたのか!!と俺は色めきたったが、違うのだった。
太陽が恥ずかしそうに打ち明けたところによると・・・
ある女性とたった1度あやまちを犯したとのことだった。
行き付けの店の従業員であるその女性に太陽はかなり熱心にアタックされ、タイプじゃないのでずっと気づかない振りをしていたのだが、ある晩、どうしても人肌恋しくなるときがあり、つい関係を持ってしまったのだという。
だからって結婚にすぐ結びつけるとこが奴の真面目なところだ、と俺が言うと、あべが、
「違うんスよ・・・その女の人・・・"来ない"って言うんですって」
とボソリ。
「?!」俺は太陽に向き直った。来ないって・・・まさか・・・
「そうです・・・月光仮面が・・・来ないって言うんです・・・」 (続く)