先週に続いて大相撲の話。先月24日に千秋楽を迎えた大相撲初場所で25年ぶりの珍事が起きたんです。幕下で9人による優勝決定戦が行われたというんです。

なぜ起きたかを説明する前に大相撲の本場所での幕下以下の流れをお話しします。幕内と十両は初日から千秋楽までの15日間すべてで1日1番ずつとり8勝以上すれば勝ち越しになります。一方、幕下以下の力士は人数が多いため15日間のうち7日だけ土俵に上がり4勝以上すれば勝ち越しになります。初日と2日目で1番目、3日目と4日目で2番目という風に、十両以上なら1日で消化できる取組を2日かけてでないと消化できないからです。で、最後の7番目の相撲は13日目から千秋楽の3日間にまたがって行われます。優勝が懸かる力士の取組は13日目にまとめて行われるのが基本。原則的に同じ勝ち星の力士同士が毎回対戦するため(スイス式トーナメントと呼ばれるシステムを取り入れている)、6戦全勝の力士が13日目の時点で2人から4人残ります。2人なら直接対決して勝った方の優勝。4人なら直接対決が2つあって勝った者同士が優勝決定戦をやることになります。今場所の場合も6戦全勝が13日目で2人いましたが同部屋だったため本割の直接対決で優勝者を決めることができず、2人が勝ったら改めて優勝決定戦という状況になりました。そしてその2人が13日目に敗れたため、6勝1敗の9人に優勝の可能性が発生したというわけなんです。

さぁ、大人数の優勝決定戦です。普通なら純粋なトーナメントで優勝を決めるところでしょうが、大相撲には特殊なやり方があります。それが巴戦。決勝の段階で3人残し、特定の1人が他の2人を続けて破れば優勝となります。3人に絞るためのトーナメントも普通とは違っていて、不戦勝扱いになるシードの人をなるべく出さないような作りになっています。対戦の組み合わせをできるだけ作りシードは1人という感じ。しかも、夏の甲子園のように1番取り終えるごとに勝者が次の対戦相手を再抽選して決めます。で、最終的に3人にするという流れが大相撲の基本。しかし、今場所は新型コロナウイルスの感染防止の観点から再抽選はせず、1度の抽選で優勝者を決められるようにするため純粋なトーナメントで優勝を決めることになったようです。そうしたら、また奇跡が。優勝したのは十両経験者だった34歳の魁。2回戦からでなく1回戦から4つ勝って優勝したのです。こういう時だからこそのトーナメントで優勝できたのは本当に貴重な経験かもしれません。

7日に開催予定だった第45回日本大相撲トーナメントは新型コロナによる緊急事態宣言が発令された影響か、2011年の35回大会以来となる中止になってしまいましたが、本場所でトーナメントにまつわる奇跡が起きるとは! そんな思いで話してみました。では、また次回です。
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