95回目の夏の甲子園、群馬の前橋育英が初出場優勝を果たして幕を閉じました。しかし、終盤になって1人のバッターが起こした2つの騒動が、高校野球独特の問題を浮き彫りにしてしまいました。

その1人のバッターとは、すべてのベンチ入り選手の中で最も背が低い選手として注目されていた花巻東(岩手)の千葉選手。打席で見せる粘り強さと盗塁しなくても塁間をスピード落とさずに駆け抜ける俊足ぶりで「小さくてもすごい」とファンを沸かせました。しかし、この人のストロングポイントが災いして、騒動がおきてしまいました。
まずは2塁ベース上での「サイン読み疑惑」。準々決勝の途中、両手を横に振ってみたりジャンプをしてみせたりしている「挙動不審」ぶりがサイン読みと疑われたため、球審から直接注意を受けたのです。相手チーム(鳴門=徳島)がアピールプレーするなり2塁の審判に抗議するなり、何かしらの前触れもないですからびっくりしました。大会本部の担当者は「疑わしい動きをしたから注意した」と説明しましたが、お互い腑に落ちない感じだったようです。一部報道では、この一件の前に「花巻東はサイン読みしているから、サインをイニングによって変えよう」ともう織り込み済みで対策を立てていた学校もあったとか。これ、プロ野球ではスパイ行為なんてことにまで発展することもあります。だから、疑わしいと思われたところで注意を呼びかけるのは間違いではないでしょう。ただ、なぜそうなのか、やる人にも見る人にもわかるように説明するのも大事です。そうでなければ選手たちは萎縮してしまいますよ。
もう一つの騒動は「カット打法疑惑」。一人のピッチャー相手に1打席で13球も投げさせること自体異常なことではありません(「前に飛ばせよ!」といわれ褒められないことも時にあります)が、そのやり方にいちゃもんがついたようです。自分が好む球を待つために意図的にファウルを打つ様な動きがあればバントしたのとみなすという規定に引っかかってしまうというわけです。繰り返されているようだからということか、準々決勝、そう、サイン読み疑惑が浮上した日に追い討ちをかけるように担当者がこれにも言及していたようなんですね。そして迎えた準決勝、自分のスタイルと違うプレーを強いられたら力が出ないと、ファウルを打てずにゲームが終わったとか。

高校野球というのは教育の一環だといわれます。これらの問題がこの考えを揺るがすとは思いませんが、普通と思われるような戦略が組み立てられないと試合の質が落ちてしまわないかなって、何となく思ってしまいます。この規定を文字通り飲み込むようだと、フルスイングかバントしかできない、テレビゲームみたいな野球になってしまうかもしれません。ガチこそ高校野球の伝統芸というべきことでしょうが、戦術、戦略に幅が出来る余地を残せる規定の運営をして欲しいですね。

それでは、また次回です。
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