大相撲初場所は把瑠都が優勝し、次の場所はいよいよ綱とりと言うことになりました。しかし、場所終了直後には横綱審議委員会の委員長が「把瑠都が次の場所に優勝したとしても横綱昇進を承認できない場合もある」と異例の声明を出す騒ぎになりました。翌日には「数字ばかりではなく内容も求められるということ」と委員長は声明の内容を釈明しましたが、横綱昇進を目指す力士についてここまで言及されるのは希なこと。その原因の一つが相撲界でも珍しくなくなった観客の「ブーイング」でした。

12日目に把瑠都は新大関の稀勢の里と対戦。立会い一瞬のはたき込みで決着したため館内は騒然。勝った把瑠都に対して「帰れ! 帰れ!」の大合唱にいたってしまいました。把瑠都はこれで優勝にリーチをかけることになりましたが、負けた稀勢の里にとっては優勝のチャンスがほぼ消滅。簡単に勝ち星を積み上げた把瑠都への怒りと、簡単に把瑠都が勝ち星を積み上げたがために日本人力士の優勝掲額復活の可能性を断ち切られてしまった稀勢の里への同情があいまってこんなことになったのだろうと思います。

一瞬のはたき込みで決着がついてしまうような注文相撲というのは決してルール違反ではありません。しかし、ファンは手に汗握る激戦を求めています。カラーテレビがまだ普及していない頃、お互いまわしをつかみながらがっちり組み合い、何分も動き出すタイミングを探りあっているうちに行司が割って入り「水入り」なんてことが少なくなかったようです。千秋楽に全勝の横綱同士の直接対決で優勝が決まるというシチュエーションでも、お互いの死力を尽くした激戦になることが当たり前と言うイメージもあります。

もしかしたら、稀勢の里と把瑠都の相撲でも優勝争いへの生き残りを懸けた一戦に相応しい激戦を期待していたのかもしれません。しかし、一瞬のひらめきだったとしても把瑠都には立ち合いからの注文相撲というの戦略があったかもしれません。大相撲と言うのは力士の戦略とファンの期待とのギャップが出やすい競技ではないでしょうか? 今回の一件でそう思えてきました。

それでは、また次回です。
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