13日に東京・文京区の講道館で東京五輪の柔道代表最後の1枠を決める試合が行われました。この日に組まれたのはこの試合だけなのに大きな大会のような広告看板や電光掲示板も仕込まれました。無観客で1試合だけなのにここまでやるなんてと思う人もいるかもしれません。ですが、この試合が最激戦で最後の最後まで決められなかった男子66kg級の代表を決める阿部一二三選手と丸山城志郎選手の試合だとすれば、ここまでのことをしても理解できるかもしれません。

もっとすごいと思うのはテレビ東京系列の地上波で75分にわたってこの1試合を中継したということ。まぁ、ボクシングの世界タイトルマッチも1試合のために1時間以上の放送枠を確保しますが、柔道のテレビ中継で1試合だけに75分も割くのは恐らく史上初のこと。阿部選手にしても丸山選手にしても代表になれば金メダル間違いなしという人ですからこれくらいやっても理解できます。試合自体も互いに死力を尽くす激戦になりました。が、指導が飛び交い攻めて得るポイントが互いに入らず、ゴールデンスコア方式と言われる時間無制限の延長に入ってしまい放送時間におさまらなくなってしまいました。ネットでは「試合の敗者はテレ東!」と糾弾されてしまったとか。

こういう時によく言われるのが「NHKみたいにできないの?」。NHKなら地上波でもBSでも編成が許されれば無制限で延長できるし、そうでなくてもサブチャンネルに移して放送を継続できます。民放でも時間延長が難しくてもサブチャンネルに移すことはできるだろうと思うかもしれません。が、民放の場合はスポンサーとの契約などいろいろ制約があって難しいとのこと。TBSの安住紳一郎アナが自身のレギュラー番組「日曜天国」で語ったところだと(記憶の限りですが)、メインチャンネルで放送する番組の画質を落として放送することや試合中継の画質を途中からサブチャンネル用の画質に切り替えることが技術的に難しく、その技術に対応するためにNHKほど人出を割くのも難しいからとのこと。また、スポンサーとの契約で画質を落とすことができない場合もあるらしいです。試合の途中でCMを入れざるを得ないことと同じように民放の宿命と言えるかもしれません。

試合に参加するのは2人きりで居合わせた関係者もごくわずかだったでしょう。雰囲気としては巌流島の決戦というところでしょうか。そういえば、プロレスでは「昭和の巌流島」といわれる戦いがあったそうです。1954年12月22日に行われた力道山と木村政彦のプロレス日本タイトルマッチ。無観客で行われた今回の試合とは対照的に満員の蔵前国技館で行われましたが、10分ほどで力道山が木村をKOしてしまいました。もしも今回の柔道代表決定戦が満員の武道館で行われていたら…。結果が変わるかどうかはわかりませんがただならぬ盛り上がりになったことは間違いないでしょう。

では、また次回です。
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