23日にSMBC日本シリーズが終わり、福岡ソフトバンクが3年連続の日本一を史上初のポストシーズン10連勝で飾りました。ジャイアンツ-ホークスの日本シリーズで4連勝のスイープ決着となったのは「杉浦忠4連投4連勝」「御堂筋パレード」で知られる南海時代の1959年(昭和34年)以来60年ぶり。2度目のスイープ達成は今年で70回目となった日本シリーズで初の快挙です。一方、ジャイアンツが4連敗で日本シリーズを終えたのは1990年に西武ライオンズに敗れて以来3度目。日本シリーズで2度スイープを喫した唯一の球団だった巨人としてはワースト更新となってしまいました。

先ほどもふれましたが、日本シリーズは今年で70回目。誕生当初4年間は「日本ワールドシリーズ」という名前で行われ、現在の「日本選手権シリーズ」になってからでも66年目なんです。その長い歴史でホークスの日本一が10回目だったというのは何となく意外な感じ。セ・パ分立直後の1950年代前半こそパリーグの王者として君臨していましたが川上哲治さんや別所毅彦さんが主力で戦後最初の黄金期を迎えていた巨人にことごとく敗れ、50年代半ば過ぎには三原マジックや「神様仏様稲尾様」の活躍などで急成長を遂げた西鉄ライオンズにパリーグの覇権を握られ、やっと日本一になったのは第10回大会のこと。対戦した当時の巨人はONがやっと揃うようになり、チームを率いた水原茂監督がこの年限りで退任するということで過渡期だったとも言えます。対して南海は若い力が確実に根付き鶴岡親分こと鶴岡一人監督の考えが浸透してきた頃。何となく今年のホークスとジャイアンツと重なる部分がありそうな気がします。その後に南海ホークスが日本一になったのは1964年の1回だけ。翌年からの巨人V9にぶつかるはチーム自体が弱体化するは…で日本一になかなかなれず、福岡移転から10年を迎えた1999年にやっと日本一になりました。そこから実は8回日本一になったことになるんですね。

パリーグが現在のクライマックスシリーズ制度を始めたのは2004年のこと。それ以降ポストシーズン全勝で日本一というケースはありませんが、ファーストステージ初戦に敗れて以降全勝の準パーフェクトというのも史上初なんです。単純に同一シーズンのポストシーズンで10連勝というのも史上初。福岡ソフトバンクは本気を出せば強いというのがよくわかります。言い方よくないでしょうけど、埼玉西武がリーグ優勝できたのはレギュラーシーズン後半にたまたま福岡ソフトバンクが調子を崩したからなのかなと思ってしまいます。元西武監督の東尾修さんは「厚かましいくらい強い」とホークスの強さを称していますが、これから数年の間もホークスが君臨する時代が続くかもしれません。

では、また次回です。
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以前このコラムでも取り上げた高校野球の球数制限。甲子園大会について1週間で500球を目安にすることを専門家会議が理事会に提案することになるそうです。WBCやU-18ワールドカップのような1試合当たりの球数制限を期待していた人たちには拍子抜けだったかもしれませんが、選手層が薄いチーム対する配慮が必要だからそうしたと考えれば腑に落ちる気がします。

その一方で驚いたのはバットの太さ制限の強化です。来年をめどに現在の基準から5%ほど細くするとか。社会人野球のように金属から木のバットに戻すことは難しいにしても木のバットに近い反発力にするために更に細くしようというわけです。夏の甲子園の後にあったU-18ワールドカップで攻守それぞれで木のバットへの対応ができていないのが露呈してメダル獲得を果たせなかったことや今年の夏の甲子園で打球を顔面に受けて骨折してしまった投手がいたことを問題視したためだといいますが、今年の夏に掛布雅之さんが提言したように無駄な投球数を抑制できるという効果まで考えていたかどうかはわかりません。

また、茨城国体では智辯和歌山の選手全員が最後まで木のバットを使うことにしたそうです。中谷監督は「3年生は卒業して大学に進学したり社会人やプロに進んだりしたら木のバットを使わなければならないから早めに慣れさせたい」という理由で実行させるといいます。プロ入りを意識した選手が個人的に国体で木のバットを使ったケースはあるそうですが、チームぐるみで使うのは珍しいとか。その上、初戦の相手である星稜もこの試合限定ではあるものの木のバットで応戦するといいます。この試みが今後どうかかわってくるか、楽しみにみてみたいです。

では、また次回です。
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第101回全国高校野球は22日に決勝が行われ、大阪・履正社が5-3で石川・星稜を破り初優勝。昨年の大阪桐蔭に続いて大阪勢の連覇で幕を閉じました。履正社は毎試合のように打ちまくり全試合5点以上奪って勝ち上がりました。夏は打力のチームが強いという典型的な展開で令和初の甲子園は終わったような感じです。

さて、東京スポーツといえば何かと尖がった記事が注目されますが、甲子園期間には意外にも正統派の記事が。中でも目を引いたのは9日発行の1面に掲載された星稜・林監督の独占インタビューです。今年春の選抜2回戦で千葉・習志野陣営のサイン盗みを糾弾する騒動を発端にして指導禁止処分を受けた林監督がどんな経験をしてきたのかを語る内容で、マラソン指導者の小出義雄さんが有森裕子さんによく語りかけた「どんなことがあっても『せっかく(だから)』と思え」という言葉が心の糧になったことや批判の手紙を星稜高校に送った後に交流を始めたJALの機長とのエピソードなどが紹介されていました。東スポらしからぬ感動的なエピソードを思わず読み込んでしまいました。でも、その横に「なぜ長野が? 智辯和歌山に合計12万円ハンバーグ」(巨人時代の同僚だった中谷監督を激励するために広島の長野選手が1個1500円の高級ハンバーグを80個も差し入れした、という内容)という見出しが躍っていたのは東スポらしいところでしょうか。

夏の甲子園が終わり、高校野球はもうU-18ワールドカップへ一致団結してなかなか手が届かない世界一を目指します。あの佐々木投手も代表に選ばれています。では、また次回です。
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7月25日に行われた夏の甲子園岩手代表決定戦で、大船渡が163㎞エース佐々木朗希投手の出番が来ないまま敗れたことが大きな話題になりました。そのことだけでも炎上してしまいましたが、国保監督が「佐々木の故障のリスクが特に高くなったので投げさせなかった」と試合後の会見でコメントしたため炎上がしばらく止まらない状況になってしまいました。

翌日付のスポーツ報知のインタビューで横浜高校の渡辺元智総監督が「(本来なら佐々木を投げさせて当然の状況だが)どこか故障していたのではないか」との見解を示していました。渡辺さんの見立てと国保監督のコメントを合わせて考えると私は腑に落ちた感じがします。故障のリスクというのは、もし代表決定戦で投げていたら甲子園の初戦に間に合わなくなる爆弾を佐々木投手が抱えていたということなのかなと。プロ野球の大物OBが「1度負けたら終わりの場所でけがを恐れるなんて…」と采配を批判したのを現役メジャーリーガーやサッカーの日本代表経験者が「けがをしたら身もふたもない」と反論するなど業界内外を巻き込む騒動になってしまいましたが、私は国保監督が腹を括って下した決断を尊重したいです。厳しい言い方をすれば、投打ともに佐々木選手に依存してしまうような層の薄さが花巻東の前では通用しなかったということに過ぎないと考えれば気持ちが収まりませんかね…。

代表決定戦の会場となった盛岡市の岩手県営球場は超満員になったとか。「せっかく遠出してきたのに佐々木が見られないなんて…」と肩を落とした方が多かったかと思いますが、新聞などの報道を見る限り、グラウンドに物を投げつける人や「金返せ」と運営本部やチケット売り場に怒鳴り込む人がいなかったのは何より。高校野球はお金をとって試合を見せるので興行という側面はあります。ただ、プロ野球などと違って興行が第1の存在価値ではないのかなとも思います。もし高校野球の第1の存在価値が興行だというなら、主催者サイドから「佐々木君を出して」と声をかけられ国保監督はそれを断れないという構図ができていたかもしれません。ただ、現実としてそうではない。エースと心中することこそ高校野球における「オールorナッシング」と考える傾向があるかもしれませんが、エースを敢えて出さずに現有戦力で戦うことも「オールorナッシング」だと考えてもいいのではないでしょうか。

では、また次回です
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101回目の夏の甲子園を目指した地方大会で代表が続々と決まっていますが、いよいよ今月終盤に入って関東や関西の激戦区の代表も決まります。そんな中、有力校が地方大会で敗れる波乱がいくつも報じられています。

選抜優勝の愛知・東邦がおよそ50年ぶりになるという早さで敗れてしまったのをはじめ選抜出場校や上位シード校が早い段階で敗れることが例年より多いようで、スポーツ紙には敗退校一覧表が掲載されるありさまです。高校野球はじめ学生スポーツには定期的な代替わりというのが宿命なので有力校といってもこれまでの実力を維持できないことだってあります。1人の指導者が何十年にもわたって指導・強化している学校だって甲子園出場のブランクができることがありますが、実力を維持するための方法、方針がしっかりしたものになると何度も甲子園に出場できるようになるかもしれません。それは指導者が培った方法だけではなく、生徒・選手が代々受け継いでいった観念的なものや指導者と選手の間の信頼関係というのもあるでしょう。観念的なものや信頼関係は私立だけでなく公立の学校にもあるかもしれません。そういう信頼関係や指導方針が問われる競技もあります。それは野球の大会ではなくサッカーの大会です。

高校生年代の最強チームを決める高円宮杯全日本ユース選手権は、元々地方大会を勝ち抜いたJリーグのユースチームや高校のサッカー部が集まって予選リーグと決勝トーナメントを行うものでしたが、現在は高校生年代通年制統一リーグになっています。最高峰にあるのが東日本と西日本のプレミアリーグで、その下に各地区のプリンスリーグ、都府県毎のリーグが続きます。で、日本一になるには東西のプレミアリーグを制したチーム同士の王座決定戦に勝つことが必要になります。「都道府県リーグからこつこつ勝ち上がらないと日本一になる資格が得られないのは意味がない」という人もいますが、その時々だけでなく長く築き上げたものどれだけ強固なものが問われる大会というのも大きな意味があるのではと思っています。100年を超える歴史がある高校野球にもこういうものが問われる全国規模のリーグがあってもいいのではないかと思ってきました。

では、また次回です。
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